杉並区西荻窪で入れ歯治療を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。
「家族を守る」
そんな言葉を耳にします。
とくに震災や凶悪事件などの後に耳にする機会が増えるように感じます。
もっとも戦争しているような国なら現実味がありますが、日本は治安が良く技術が発達し食べ物など余っているくらいです。
それなのに震災や事件に関係ないみんなも必死に働いて家族を守らなければならないのは何故なのでしょうか。
20代の時に都心のオフィスビル内で勤務医をしました。
そこは同じ場所で開業したかった別の歯科医から、手続きの不備を告発されて長年争っていました。
結局は管轄省庁の指導が入り撤退することになりました。
そのオフィスビルも周りじゅうに歯科医院があって良い立地とは私は思えなかったのですが熾烈な生存競争が繰り広げられています。
その当時の院長も別に拡大経営の野心があるわけじゃなく家族を守れればいいだけなのに、このように互いに競争し疲れ果て攻撃的になっていました。
どうしてそんなに苦しむ必要があるのか。
なぜ疲れ果てるほど競争し必死に家族を守らなければならないのか。
それなりに厳しい状況の歯科の世界に身を置いて自分なりに導きだした答えは
「なぜなら日本はちっとも平和じゃないから」
というものでした。
保険治療で、痛い入れ歯も調整できます
インターネットで「西荻窪 スレ」と検索すると街BBSというものが出てきます。
西荻窪について語ろうというページです。
西荻窪に限らず他の街BBSでも同じ話題を目にします。
それは「歯医者多すぎ」というもの。
他に多すぎる職業はコンビニなどたくさんあります。
逆に稀少価値な職業など駅前にはないかも知れません。
こんなに沢山あってどうするの?
そう言いたくなるほど様々な職業で同業者どうしが隣り合わせ、向かい合わせに林立して戦っています。
「イヤ俺は隣近所と仲良くやってるよ」
と言うあまのじゃくな歯科医もいるかも知れませんが、それは建前です。
本音では隣の歯科医院など目ざわりに決まっています。
インターネットのヤフーで検索すると私が開業している西荻窪駅前には50軒以上の歯科医院があります。
休日は快速電車が通過するほどのマイナーな駅前で50軒がしのぎを削っている。
同様にヤフー検索すると吉祥寺では100軒、銀座では250軒と出ます。
わずか半径1キロ圏内で250もの国が争っている…
調べてみると西暦250年ごろの三国志時代、戦乱の時代といわれた中国でさえ、いくらなんでもそこまでの群雄割拠ではありませんでした。
今の日本は三国志の英雄、曹操もビックリの戦国時代と言えます。
本物の血が流れないだけで「平和な内戦状態」なのです。
痛い入れ歯の調整の費用は保険治療3割負担の方で約1,000円~2,000円
同じように考えているのは私だけではありません。
「キングダムで学ぶ乱世のリーダーシップ」(長尾一洋著、集英社)
で著者は述べています。
「今現在の日本や世界はどうか。乱世です。」
「ほとんどの業界で国内マーケットが縮小し始め、業界内での過当競争、合従連衡が起こっています」
まさにその通り。
そんな歯科業界を平和に治めることなど中国を統一した秦の始皇帝でも不可能でしょう。
近所や自分の知人、勤務医時代の歯科医院も閉院した話をチラホラ聞きます。
決して珍しい話ではありません。
家族を守らないとあっという間につぶされる過酷な状況は、歯科だけでなく他の業種でも似たようなもの、あるいはもっと厳しいものです。
日本は企業数が多すぎるという具体的な数値があります。
世界最大の株式市場ニューヨーク證券
取引所の時価総額は20兆ドル、東京證券取引所は5兆ドル、4分の1の規模です。
それなのにその中に上場している企業の数はアメリカは2300社で日本は3700社。
上場しているほどの大きな会社ですら日本では激しい競争にさらされています。
医療も飲食も流通も服飾も学習塾も美容院も自動車も不動産も、多くの業種が泥沼の内戦状態にあります。
歯科医師が過剰なのはデータからも明らかです。
「昭和 40 年代から 50 年代にかけて歯科医師不足が叫ばれ、田中内閣の1県 1 医大構想とも相俟って一気に歯学部・歯科大学は4倍近くも新設されることとなった。
人口10万人に対して歯科医師数をおよそ50名にというのが新設の根拠となったのだが、50名を超えるのに10年を要することもなく結果的には過剰な新設計画となった。
昭和62年に当時の文部省が閣議決定を受けて削減計画を策定したが、その効果は少なく歯科医師数は増え続け今では人口10万対80名を超える状況となっている。」
(参考文献:歯科医師需給問題の経緯と今後への見解 平成 26 年 10 月
公益社団法人 日本歯科医師会https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000071236.pdf)
そして戦争はもっとも国の発展を妨げるものです。
三国志についてインターネットのウィキペディアで調べたところ、後漢末の桓帝の永寿3年(157年)には人口5648万でした。
それが100年ほど後の三国時代には818万人の半ば。
およそ7分の1になるまでの減少であるとありました。
日本も平和な内戦が各地で繰り広げられている間は人口減少が続くのかも知れません。
保険治療で入れ歯のヒビを修理
それではそんな生き馬の目を抜くような群雄割拠の中で生き残るには、どうすればいいのでしょうか。
私は身につけた技術で生き抜くつもりです。
20代の勤務医時代に、自分の方向性に悩んで歯科医をやめようと本気で考えた時期がありました。
そんな悩みを当時の院長先生に吐露したところ信じられないことを言われます。
それは…
「ふうん、そうなんだ。で、キミはいったい何ができるの?」。
やめようと考えている人間に○○ができる! と胸を張って言えることなどありません。
院長なりに元気づけてくれようとしていたらしいのですが、沈黙している私のあまりのマイナスぶりに
「何もできないんじゃなあ…」
とため息をついて院長先生も黙ってしまいました。
そもそも「キミは何ができるの?」などと面と向かって聞くこと自体、かなり失礼な話です。
ただ私のような目に合うことはあります。
それから1年後くらいのことです。
別の先生からまた同じ質問をされました。
当時の勤め先の先輩が、あまりに悩んで前へ進めないでいる私を見かねて先輩の師匠格の先生に会わせてくださったときのことです。
とにかくできないなりに何か身につけようと歯科の本を読んでいた時期でした。
とはいえインプラントとか外科手術とかは本だけで身につけることはできません。
だから患者さんへの歯みがき指導の本をたくさん読み、日々の診療でも歯みがき指導を熱心に行なっていました。
何も言えずうつむいていた時代からは一歩だけ進歩したつもりです。
しかし師匠先生はそっぽを向いたまま答えました。
「ふーん…」
そして続けます。
「それなら歯科衛生士に頼んだほうがいいよなあ」
*長文になってしまったので次に続きます。
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