治療前
治療後
ご相談内容 | 「前歯の被せ物がグラグラと揺れていて、食事ができない」とご相談いただきました。 |
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カウンセリング・診断結果 | 拝見したところ、上左右の前歯4本(中切歯/1番、側切歯/2番)は欠損しており、両隣りの歯を利用して橋渡しのように歯を補う「ブリッジ」で治療していました。 ブリッジは、残っている右上の歯2本(犬歯/3番、第1小臼歯/4番)と左上の歯3本(犬歯、第1小臼歯、第2小臼歯/5番)で支えており、右上から左上までの9本分の歯をつなげた作りですが、左上の犬歯以外の土台の歯がすべて折れているため、グラグラと揺れてしっかり噛むことができない状態でした。 残っている歯が少ないため、ブリッジによる再治療は残念ながら難しく、歯を補うためには入れ歯の作製が必要です。 一般的にはブリッジを外してから型取りを行い入れ歯を作製しますが、その場合、入れ歯が完成するまでの1ヶ月間は歯が9本ないままの状態が続いてしまいます。 90代という患者さんのご年齢を考えると、歯のない期間をできるだけ抑えて治療する必要があると診断しました。 |
行ったご提案・治療内容 | 歯を補うために、ブリッジを外すと同時にあらかじめ作製した入れ歯を装着する保険治療「即時義歯」を提案しました。この方法であれば、ブリッジを外したその日のうちに歯並びを回復できます。 装着していたブリッジは以前から頻繁に外れており、4年以上にわたり接着し直したり噛み合わせを調整したりしていたため、いつか使えなくなる可能性があること、その際は入れ歯を作る必要があることをあらかじめお伝えしていたので、抵抗なく治療に同意いただくことができました。 また患者さんはご高齢であることから、抜歯など外科処置の際にかかる身体的負担を軽減するため、今回は折れた歯はあえて抜かずに残しています。 まず歯型を取り歯の模型を作り、模型上でブリッジ部分の歯を削ってから歯科用の材料「ワックス」で入れ歯の歯並びを再現したあと、その模型をもとに歯科技工所で仮の入れ歯を作製しました。 本来は仮の入れ歯を実際に試着したうえで問題がないことを確認しますが、今回はまだブリッジが装着されている状態のため、代わりに仮の入れ歯を模型に装着し、歯並びの微調整を行ってから、最終的な入れ歯を作製しています。 その後、ブリッジを外して残っている歯の根が入れ歯とぶつからないよう少し削ってから、完成した入れ歯を装着し、治療を終了しました。 |
治療回数の目安 | 入れ歯作製と装着 4回 |
治療費総額の目安 | 保険治療2割負担で約6,000円 |
術後の経過・現在のご様子 | 入れ歯を装着した部位の痛みや違和感はなく、噛み合わせも問題ありません。 患者さんには「こんなすぐに歯ができるとは思わなかった。早く治せてうれしい」と大変ご満足いただきました。付き添いで来られたご家族様にもお喜びいただいています。 現在は、定期的にご通院いただき経過を観察しています。 |
この治療のリスクについて | ・着脱式のため、食後の清掃が必要です ・最初のうちは異物感があり、慣れるまで時間がかかる場合があります ・慣れるまでは、入れ歯の裏側の粘膜に傷ができる場合があります |
クリニックより | 即時義歯は、特に歯と歯を橋渡ししてつなげるブリッジがグラグラと揺れる際に用います。ブリッジを外してから入れ歯を作り始めると1ヶ月近く歯がない状態が続きますが、即時義歯を作製しておけばブリッジを外すと同時に入れ歯を装着できるため、その日のうちに歯並びの回復が可能です。 一方で、お口の中で入れ歯の歯並びを確認することができずに作製するため、うまく馴染まない歯並びになることがあります。模型上ではまっすぐに並んでいても、お口に入れると顔の真ん中とズレていたり、歯並びが斜めになったりする可能性があります。修理を行って歯並びを変更することは可能ですが、あまりにも歯並びが不揃いであれば、約半年かけて入れ歯を調整し、歯並びを整えたあとに入れ歯を改めて作ると正確できれいな仕上がりになります。 |