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親心と歯の健康:守りたい大切なもの

こんにちは。院長の伊藤です。
早いもので、1年の半分が経ちましたね。
この半年間、 多くの方々にご来院いただき、その分たくさんの笑顔に触れることができました。
本当にありがとうございます。

1年の後半も皆さまの歯の健康を守るため、精いっぱい努めてまいります 。

 

さて普段は、患者様の唯一無二のお口の健康を守り抜く、という責任を自負しながら歯科医師としての仕事に全力を注いでいる私。
しかし白衣やスクラブを身につけていないときは、一介の父親でもあります。
物騒なニュース等を耳にするたび、家族のことが心配でたまりません。
こちらは先日、娘が塾へ行くところのワンシーンです。

娘の背中を玄関先まで追いつつ、「行ってらっしゃい」「気をつけてね」「明るい道を通って帰りなさいよ」と、くどくどと声をかける私。
しまいには「そうよ、最近もニュースで……」と妻まで加わる有り様。
娘はたまらず「もう!そんなの両側から立体音響で聴いてるみたいで、うれしくないワ」と、言いながら外へ出てきました。

まあ親心だと思ってください。親の心配は尽きません。
「ただいまー」と普段どおり元気に帰ってくるとやはりホッとします。
何かあれば少しでも事前に対策をしておかなければと、普段から警視庁のスマホアプリ「デジポリス」で情報収集しています。
特に、女性の皆様! 怖い思いをしたら迷わず110番ですよ!

 

ちなみに5月下旬から6月の上旬まで、春の運動会シーズンでしたね。
お子さん・お孫さんの学校へ、応援に行かれた方も多いのではないでしょうか。

娘は毎年「ダンスが凄くうまく踊れたよ!」「今年は◯位だった、悔しい!」などと感想を聞かせてくれます。
しかし私としては、怪我に注意をしながら自分のベストを尽くしてくれれば結果に関係なく、それで良いと思っています。
これも親心。

 

当院にも子育て中の方や、お孫さんのお話を楽しそうに話してくださる患者様が多くご来院されます。
皆様がお話してくださるお子さん・お孫さんの一人ひとりの健やかな成長を、歯科医師としても一人の父親としても心から願っています。

【医院からのお知らせ】
2025年7月は暦通りの診療です。

 

 

 

いとう歯科医院
〒167-0054
東京都杉並区松庵3-6-3
TEL:03-3333-5389
URL:https://ireba-ito.com/
Googleマップ:https://maps.app.goo.gl/9jrBJZuNm3gP5v3C7


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・20万円のシリコン入れ歯がたった3年で「修理できません」と言われた話

「修理できません」
「たった3年で壊れたのも仕方ありません」
「作り直すしかないので料金は再び20万円(税別)になります」

歯が2本分の小さなシリコン入れ歯にヒビが入ったので、施術した某大学病院を再び訪問した、60代女性のUさんが担当の歯医者から言われた内容です。

「患者自身で接着剤で着けるぅ~?
…論外ですよ」

担当医はまるで憐れむかのような口調だったそう。

じゃあ一体どうしたらいいの?

シリコン入れ歯とは文字通り入れ歯の赤い部分をプラスチックではなくシリコンで作る入れ歯です。

・金属バネが要らない!
・材料が柔らかいから歯グキとよく合う!
・プラスチックより薄く作れる!

そう喧伝されるシリコン入れ歯ですが上記の宣伝文句は全てデメリットになります。

・金属バネじゃないから、入れ歯がユルいとか逆にキツい時に調整が一切できない。
・柔らかいから噛むとたわんでしまい、実際にはよく噛めない。
・薄く作るから壊れる。とくに痛みが出たときに薄すぎて削ることもできない。
・壊れて修理しようにも、プラスチックとシリコンはくっつかないので修理もできない。

結果、冒頭のようなトラブルにつながります。

また私が自費治療をやらない理由は
「10年後の未来など誰も予測できないから」です。

普通に保険治療で総額1万円以内で作れる入れ歯に自費治療として20万円以上もかける。

「それならば最低10年はトラブルなく使えてあたりまえと思っていました」

とUさんは言います。
私も同感です。

それが自費治療に対する一般的な感覚だと思います。

しかし10年後の口の中がどうなるか、誰も予測など不可能です。

ちなみにやむを得ない事情で入れ歯を作り直すのは、保険治療ならば半年経てば可能になります。

つまりこれは言葉を変えると、半年先のことも予測できないような入れ歯、口の中が世の中に多いということです。

口の中に限らず10年後の未来など誰も予測できません。

例を挙げるならウクライナとロシアが2022年から戦争を始めることを2012年に予測できた人は多分いません。

いつか戦争になるだろう、くらいは私でも予測していましたが遠い未来のことと考えていました。

日本も隣りの某大国と戦争を始める日は来るのでしょうが、それは私が死んだ後、50年以上は先の話と勝手に思っています。いや、そう思いたい。

…自分は政治評論家になる資格はなさそうです。

それはさておきUさんの口の中も

・残っている歯にセラミック製かぶせものが多い
・体も小柄で口と歯の大きさが小さい
・顎関節症の症状や歯を削った後に決まって起こる原因不明のめまい、手の痺れ、頭痛の不定愁訴で長期間の通院歴があるなど

難しい要素が満載です。

「Uさんの口の10年後を予測せよ」
そんな問題が出題されたとしたら私は空欄で提出します。

・残っている歯が抜けるかもしれない
・下手に削ると顎関節症や不定愁訴が再発かもしれない
・違和感すごくてムリ、といった訴えで、そもそも入れ歯を入れておけないかもしれない

何が起こるかわからない、そんな予測不可能な口の中と対峙するのに役立つのが保険治療です。

・プラスチックと金属バネでできた保険治療の入れ歯なら調整も修理も自由自在。
・残っている歯を削るのも最小限にできる。
・理不尽でない価格でできる。

もっとも歯1~2本分の小さい入れ歯は、それなりの難しさがあります。

簡単ではない、使えない可能性もあることを、よくよく説明してから作製しました。

結局はすぐに馴染んで何事もなく使えるようになりました。

今回行なったUさんの部分入れ歯を作る治療は、保険治療3割負担で総額約1万2千円でした(症状によって費用は変わります)。

シリコン義歯の長所と欠点

シリコン入れ歯にはいくつかの長所と欠点があります。以下にそれぞれを詳述します。

長所

快適さ:
シリコンは柔軟性があり口の中でのフィット感が良いとされています。

そのため硬いプラスチック製の入れ歯と比べて、違和感や痛みを感じにくいという論調をよく見ます。

全く咬み合わせのない前歯とかならそうかもしれません。

しかしそれは、噛むなどの力が加わると軟らかいため入れ歯そのものが動いてしまうということです。

入れ歯というものは総入れ歯、部分入れ歯を含めて様々な材料や設計がありますが、それらの設計思想はただ一つです。

それは
いかに「動かない」入れ歯にするか。

カチカチ噛んでも、ギリギリ歯ぎしりしても、食事しても、

「動かない」ことを目指して研究されてきました。

入れ歯がフラフラ動かないから快適に噛める、食べられる、使える、わけです。

それを入れ歯自体が柔らかければ当然動いてしまいます。
それ自体おかしなことと思います。

そのようなことからシリコン入れ歯とは何のための入れ歯なのか、私には理解できません。

噛む力の全くかからない歯並び、たとえば上の前歯が極端に出っ張っていて下の歯と全く噛み合わないところに入れるとか、かなり限局した使い方になると思います。

ただそのような難しい歯並びの症例は入れ歯を入れるのも長く使うのも難しいものです。

シリコン入れ歯は自費治療で数十万円とかします。

それならば10年は使えないと患者さんだって納得しないでしょう。

10年使えて当たり前。

金額からすると当然そうなることは歯医者の立場でもわかります。

しかし難しい条件の難しい設計の入れ歯が10年使える根拠など存在しないと考えた方が自然と、個人的には感じます。

入れ歯修理の費用は保険治療3割負担の方で総額約3,000~5,000円

味覚の影響が少ない:
シリコンは味を吸収しにくいため、食べ物の味をより自然に感じることができます…という話も見かけるものです。

これは
「シリコン入れ歯なら食べ物を保険治療の入れ歯よりも自然に感じることができる」
根拠、研究、論文があるなら読みたいです。

自分が「シリコン義歯 味覚」で公的機関限定で検索した範囲では見つけることができませんでした。

シリコン入れ歯と味覚に関しては、憶測や感想、宣伝で言っているだけと個人的には思いました。

耐久性:
高品質のシリコンは耐久性があり、適切にメンテナンスすれば長持ちします。

これもよく見かける論調です。

しかしそもそも軟らかいため変形してしまい、残っている歯との適合が全くないユルユルのシリコン入れ歯によく遭遇します。

それで全然噛めないし使えないと。

そうなったシリコン入れ歯は調整が一切できません。

シリコンの材料の物理的性質だけを見れば良い材料なのでしょうが、入れ歯として使うとなると全く別問題が生じます。

アレルギーのリスクが低い:
金属やアクリルに比べてアレルギー反応を起こしにくいです。

それはそうですが、アレルギーが起こりにくいというのは使われる頻度が極端に少ないから、というのもあります。

チタンもアレルギーを起こさないと持て囃された時代がありましたが2006年ころからチタンアレルギーの症例を見かけるようになったという論文がありました。

参考文献:チタンアレルギーの疫学的検討
Tokushima University Institutional Repository
https://repo.lib.tokushima-u.ac.jp

ですからいずれシリコンでもアレルギーが出てくる可能性はあります。

歯茎への圧力が軽減:
柔軟性があるため、歯茎に対する圧力が少なく、歯茎の健康にも良いです。

これも軟らかいから良いという論調ですが軟らかい故の欠点は、これまで書いてきたとおりです。

シリコン入れ歯の欠点

コストが高い:
一般的に、シリコン入れ歯はアクリルや金属製のものに比べて製造コストが高いです。

とはいえ製造コストは数が増えれば下がってきます。

製造コストが高いのは単に数が少ないから、ということもありえます。

数が少ないのはなぜか?

保険治療ではないからです。

ではなぜ、保険治療にならないのか?

色々な欠点があるから

と考えるのが自然と個人的には思います。

形状保持が難しい:
長期間使用すると、シリコンは徐々に変形することがあり、定期的なメンテナンスや調整が必要になります。

これは軟らかい故の欠点です。

「定期的なメンテナンスや調整が必要」とありますが、そのメンテナンスや調整が一切できないことがシリコン入れ歯の最大の欠点です。

だから当院ではシリコン入れ歯は作りません。

汚れが付きやすい:
シリコンは表面が滑らかでないため、汚れや細菌が付着しやすいです。適切な清掃が求められます。

その欠点はプラスチック製の入れ歯でも同じです。

シリコンもプラスチックも顕微鏡レベルで見れば穴だらけです。

その穴に汚れや細菌とその代謝物の固まり、プラークなどが入り込みます。

これはもう歯ブラシや入れ歯洗浄剤でも落ちません。

とはいえプラスチックならば削って新鮮な面を出した上で研磨すればまたキレイになります。

また目に余る汚れになってしまっても保険治療の範囲ならば作製してから半年以上経てばまた新しく作れる「半年ルール」がありますし低コストです。

いっぽうシリコン入れ歯は新しく作ろうとすると再び数十万円とかかかります。

半年ごとに数十万円使える大富豪でしたら、当院ではない歯医者にてご自由にどうぞ、としか私には言えません。

もっとも入れ歯の汚れだけを理由に入れ歯を新しく作ることはお勧めしません。

耐久性の限界:
非常に硬い食べ物や過度の力が加わると、シリコンが破損する可能性があります。

保険適用外の場合が多い:
日本では、シリコン入れ歯が保険適用外であることが多く、自己負担が増える場合があります。

シリコン入れ歯を選択する際には、自分の口腔環境や生活スタイル、経済的な面も考慮する必要があります。

歯医者と相談して、最適な選択をすることが重要です。

【関連記事】→保険?自費?入れ歯にかかるお金について「Q.保険の入れ歯か、自費の入れ歯を作るのが良いか悩んでいます。種類は選択できますか?」


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・部分入れ歯の金属バネ(クラスプ)が折れたので、歯科医師が新しく作製した症例、オルタナティブブログ

杉並区、西荻窪で、保険の入れ歯治療を数多く手がける歯医者、いとう歯科医院の伊藤高史です。

オルタナティブブログに記事を載せました。
部分入れ歯の金属バネ(クラスプ)が折れたので、歯科医師が新しく作製した症例↓

https://blogs.itmedia.co.jp/ito_takafumi/2025/06/content_8.html

ホームページ掲載 すみ


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・グラグラ揺れている歯を抜いて入れ歯にプラスチック製人工歯を継ぎ足す増歯と、残っている歯に歯医者が新たに金属バネ(クラスプ)を作る修理を行なった症例

杉並区西荻窪で入れ歯治療を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。

「歯がグラグラで入れ歯がつかえなくなったんです」

3年ぶりに来院されたのは60代女性のGさん。

みぎ上の前から3番目の歯が抜けそうなくらい大きく揺れています。

いっそのこと自然に抜けてくれたら患者さんも歯医者もラクです。

麻酔の注射をしなくて済みますから。

しかしそう簡単には自然に歯が抜けることはありません。

そこで今回は、みぎ上3番を歯を抜くことにしました。

Gさんは部分入れ歯を使っています。

これまでずっと、グラグラしている歯を抜いたら、その抜いた部分はプラスチック製人工歯を部分入れ歯に継ぎ足す増歯修理を繰り返してきました。

最後に治療してから3年間ずっと調子よく使っていたそうです。

今回も修理の内容としては同じです。

みぎ上3番を抜歯していた部分はプラスチック製人工歯を部分入れ歯に継ぎ足す増歯修理。

これまでずっと、みぎ上3番の歯に金属バネ(クラスプ)を引っかけて入れ歯を口の中に維持してきました。

今回抜歯するとクラスプが効かなくなってしまいます。

他に1つクラスプが奥にあります。

しかしクラスプが2→1つになると入れ歯は簡単に外れてしまって使えなくなります。

そこで手前のみぎ上2番は健全な歯でしたので、そこに新たにクラスプを作る修理を行なうことにしました。

口の中の型をとって石こう模型を作ります。

模型に入れ歯を合わせておいて模型上で歯医者が自分でワイヤーを屈曲してクラスプを作る。

歯科用プラスチックでクラスプを入れ歯に埋め込んで出来上がり。

見出し1壊れた入れ歯も保険治療で修理できます

工程としては単純なものの、ひとつ問題がありました。

それは入れ歯の適合が悪いこと。

口の中でもあまり合っていなかったとはいえ模型と入れ歯も合いません。

やはり3年間ずっと調子よかったとはいえ放置していたのでアゴの形が変わってしまっています。

そのようなことで定期的に歯医者に通うことの重要性はご説明させていただきました。

それはともかく、そんな中でも修理は必要です。

なんとか模型と入れ歯が合う場所を見つけました。

また前から2番目の歯は一般的に細長いです。

だから型に石こうを注いで模型を作る時もひと工夫が必要です。

それは細い金属線を埋めこむこと。

こうすることで折れにくくなります。

しかし努力の甲斐なく石こう模型はボッキリ折れてしまいました。

とはいえ石こう模型が折れてから実は金属線が威力を発揮します。

石こうだけだと砕けてしまったら元のように再現できなくなってしまいます。

それが金属線のおかげで折れ口がピッタリと合うのです。

ピッタリと合わせておいて歯科技工用の瞬間接着剤を流して模型の修理は完了。

さっそく修理し始めます。

模型上でクラスプを屈曲して合わせます。

このように合っているか分からない入れ歯を修理する際は、クラスプはピッタリ合わせすぎずルーズに合わせます。

歯とクラスプにスキマが見えるくらいです。

なぜなら入れ歯が口の中で合わない、模型と口の中とで誤差が生じる可能性があるからです。

模型上でピッタリすぎると、模型と口の中とで誤差があった場合には、口の中で合わない、装着できなくなります。

しかしルーズにしておけばスキマはあるものの入れ歯が口の中に収まります。

歯とクラスプのスキマはワイヤーを少しずつ屈曲して合わせることが可能です。

このような修理はワイヤー屈曲だからこそできる芸当です。

近ごろは歯科技工士でさえもこのワイヤー屈曲ができなくなっています。

昔は入れ歯を作る技工士ならば誰でも当たり前のように屈曲できました。

私もある勤務先の大きな歯医者で院内に技工所を備えていました。
そこの技工士さんからクラスプの屈曲を習いました。

別に卓越した技術の持ち主だったわけではなく保険治療の技工物を作製する並の腕前の技工士さんです。

しかし最近ある大学病院の歯科技工所はもうワイヤー屈曲できる技工士がいないという話を聞いたことがあります。

それではどうやってクラスプを作るか?

見出し2保険治療で入れ歯の修理

模型上でワックスでクラスプの形を作ります。

それを耐熱性の石こう、埋没材に埋めて熱を加えます。

そうするとワックスが溶けて空洞ができます。

その空洞に熱して溶かした金属を流しこむ「鋳造(ちゅうぞう)」という方法でクラスプを作ります。

鋳造クラスプは強度があって歯に引っかかる力が強い。

だから入れ歯を口の中に維持できます。

ただ欠点もあります。

維持力が強すぎて逆に歯を抜く力がかかってしまうことです。

後は入れ歯を着脱する際にクラスプに力が加わります。

そのせいでワイヤーと比べるとしなやかさ、柔軟性(展延性)に劣る鋳造クラスプは金属疲労を起こして、ある日突然ボッキリ折れます。

また今回のような、そもそも適合が不確実な症例では絶対に合わせることはできません。

後は工程が多いです。
・石こう模型を作る
・ワックスで形を作る
・埋没材に埋めて硬化するのを待つ
・熱してワックスが溶けるのを待つ
・金属を溶かして流しこむ
・金属が固まるのを待つ
・埋没材を壊してクラスプを掘り出す
・研磨する
・完成したクラスプを入れ歯に埋めこむ修理をする

とてもじゃありませんが鋳造クラスプを作っていたら1時間で入れ歯修理するのは不可能です。

その点、ワイヤークラスプならば
・石こう模型を作る
・ワイヤーを10分くらいで屈曲
・完成したクラスプを入れ歯に埋めこむ

これで出来上がり。

クラスプを曲げる技術さえあれば、入れ歯修理はもう鋳造クラスプでは勝負にならないと思います。

修理した入れ歯は意外にも口の中にピッタリと合いました。

入れ歯と模型は、合わないなりに合わせる方法はあります。

入れ歯を上アゴの口蓋部分にピッタリと合わせて修理しました。

口蓋部分は年月が経っても比較的変形が少ないといわれています。

今回はそのような知識が功を奏しました。

「あっ、これなら外れないですねー」
Gさんは笑顔で答えてくださいました。

見出し3保険治療で入れ歯の調整

もちろん長年診ていなくて入れ歯は不適合が大きいし歯、歯グキの状態も悪いです。

とはいえ使える入れ歯さえあれば後はゆっくり治療を行なって改善していきます。

・他にグラグラしている歯があるので、そんな歯を抜く。
・クラスプが引っかかっている歯はムシ歯があるので治療する。
・歯グキの状態が悪く歯と歯グキの境目の深さが5ミリ程度もあるので歯石除去やブラッシング指導を通じて改善していく。

もし入れ歯修理ができなかったら、どのような治療方針になりますでしょうか?

おそらく新しく入れ歯を作るしかないでしょう。

しかしその治療方針では上手くいかない可能性が大きいです。

だから入れ歯を修理しました。

なぜなら入れ歯を新しく作るには、他の歯、歯グキの状況が悪いからです。

そちらの治療から始めていたら、それだけで1か月はかかります。

それから入れ歯を作り始めるわけですが、やはりプラス1か月かかります。

2か月以上も入れ歯を使えないので歯がないまま過ごしていただかなければならないことになります。

治療に進展がないまま2か月も過ごす。

私が患者の立場だったとしても、そんな根気は保てません。

もう歯がないままでいいや…
ことになります。

そしてますます入れ歯が入らなくなってしまう。

そんな不幸な患者さんを増やしてしまいます。

それに引き換え完璧とは言い難いものの、とにかく入れ歯修理さえできれば、初回でもう入れ歯があって歯並びを回復できています。

後のことは患者さんは、ゆっくり構えていれば大丈夫。

患者さんも歯医者も落ち着いて治療していきましょう。

Gさんは仕事をしている方です。
入れ歯修理さえできれば時間の融通が効きます。

仕事の都合に応じて週1回~2週に1回くらいのゆったりペースで通っていただいて順調に経過しています。

【関連記事】→歯を抜くことについて「Q.歯が何本か抜けていますが、今のところそのまま放置してあります。前歯ではないので見た目は気になりません。食事も普通にできます。それでも抜けた部分をかぶせる、入れ歯を入れるなど治したほうがいいでしょうか?」


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・柿本人麻呂から学ぶ歯科治療の真実とは?

杉並区、西荻窪で入れ歯修理を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。

「あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む」

万葉集に数多くの詩を残し百人一首にも載っている柿本人麻呂。

持統天皇などと交流があり下級役人として旅し石見にて病で亡くなった。

この定説を舌鋒鋭く批判し真実を追究する「水底の歌」梅原猛著、新潮文庫。

一般書でありながら学会論文をひもとくみたいな論の積み重ねに、私は引き込まれるように読み進めていました。

・定説が出来上がった過程には真偽と関係なく研究者の思い込みが入っている。
・その思い込みを論破されないように「この歌は後世の作り話」など苦しい言い訳をする。
・反対意見は権威で潰すなど。

どこの世界でもありがちなウラの姿もよくわかります。

ふと思い浮かんだのは、自分の歯科治療です。

思い込みで突っ走っていないか。
思い通りにいかない時に苦しい言い訳をしていないか。
患者さんの話を権威で潰していないか。

歯科治療とは常に客観的な検証が必要です。

柿本人麻呂の人生がどのようなものだったか。
研究者や時代によって「定説」とされるものが何回も変わってきました。

有名な百人一首の歌も、実は柿本人麻呂の作ではないと今回調べて初めて知りました。

それと同様に歯科治療の「定説」たとえば歯磨きのやり方や咬み合わせの理論、いわゆる顎関節症の扱い、抗菌薬など数十年の間にガラリと変わったものがあります。

とくに歯が一本もない患者さんの下アゴの位置を決める基準として「中心位」という言葉があります。

私たちが学生のころの中心位の定義とは

下顎最後退位(下顎頭が下顎窩内において最後退位にある状態)と習いました。

下アゴを後方にさげるためのセントリックなんとかというチリトリみたいな器具で患者さんの下アゴをグイグイと押し込んだものです。
しかしそれを指標としてかぶせものを作ると、顎の関節に症状を起こすことが明らかになりました。

そこで現在は

「下顎頭が関節円盤を介して、関節腔の前上方に位置している状態」

と定義が変わりました。
正直なところ、分かったような分からないような定義です。

とはいうものの何かの基準は必要です。

結局は大ざっぱに
「中心位とは、健康な顎関節における最も安定している位置」

というところに落ち着いているようです。

参考文献:Search Labs | AI による概要

定義はともかく、患者さんの安定して噛めるアゴの位置を決めるためのノウハウはあります。

自分もこれからも勉強し続けて変化に柔軟に対応していくつもりです。

ゆるい入れ歯には保険治療で歯科専用の入れ歯安定剤ティッシュコンディショナーを貼ると安定します

もっとも歴史の世界にある真実は一つだけです。

だから今は多くの意見があっても、研究が進むにつれて結論は段々と一つに集約されていくことでしょう。

それに比べて医療の世界の真実は一つではありません。

同じ患者さんを治療するのも、私が行うのと他の歯科医師が行うのとでは結果が変わってきます。

別に保険治療と自費治療のどちらが良いとか悪いとかいう話ではありません。

また同じ患者さんを私が治療するにしても、今すぐ治療するのと1年後に治療するのとでは結果が変わってきます。

一つの真実などというものはなく限りなく拡散する世界。

その中で入れ歯で治す、インプラントで治す、歯周病治療が得意など、自分なりの方向性を決めて進むことが求められます。

とはいえ歯科医師の目指す真実はただ一つ「患者さんのために」です。

保険治療で入れ歯のゆるさを解決できます

歴史研究と歯科治療。

違う世界ですが、一つの真実を求めるために数多くの書物を研究し論を導く。

パソコンなどで調べると、この梅原説にも不審な点があると指摘されています。

とはいえその探究心には大いに触発されました。

ちなみに平安時代に編纂された古今和歌集において柿本人麻呂は「歌聖」と呼ばれました。

これは単純に「柿本人麻呂すご~い」というだけの話ではありません。

他に「聖」とされた歴史上の人物として挙げられるのは聖徳太子、菅原道真、千利休など。

いずれも政治的に恵まれず追放や孤独、非業の最期を遂げています。

だからこそ「聖人」として祭られる。

著者の梅原氏も、この辺りの事情から柿本人麻呂の人生について定説をくつがえし大胆な提起をしています。

実は持統天皇など最高権力に近いところにいながら、時の実力者だった藤原不比等と何らかの対立があり…

これ以上の内容については書を読むことをお勧めします。

読みながら「ボクも入れ歯治療の聖人なんて呼ばれたいな~」とボケーッと考えはしました。

しかし歴史上の偉人、聖人などには全く及ばない上に、普通に家族と幸せに暮らしたい小人です。

そんな自分には「入れ歯治療がんばってます」くらいの称号で十分であります。

歯科医師が勧める歯磨きの方法

まず歯ブラシは柔らかいもの~普通のもの、を選びます。

少なくとも3か月ごとに新しいものに交換することが重要です。

あまり長い期間、同じ歯ブラシを使用すると磨く効率が下がる可能性があります。

歯磨き粉はフッ素入りのものを使用すると、虫歯予防に効果的です。

参考文献:Search Labs | AI による概要

歯磨き粉のフッ素濃度は、国が定めた公的な基準で1,500ppm(ピーピーエムエフ)までです。

一般的には1,450ppmまでに抑えられています。

フッ素濃度は、年齢やむし歯のリスクによって異なります。

歯が生えてから2歳:1,000ppm(米粒程度)
3~5歳:1,000ppm(グリーンピース程度)
6歳以上:1,450~1,500ppm(歯ブラシ全体程度)
う蝕のリスクのある16歳以上:5,000ppm(1日2~3回)

フッ素濃度が高い歯磨き粉は6歳未満の子供には使用を控える必要があります。

年齢に応じた物を使ってください。

また誤飲を防ぐために子どもの手が届かない場所に保管します。

歯磨き粉のフッ素濃度はパッケージの表面や裏面に「〇〇〇ppmF」や「〇〇〇ppm」という表記があります。

昔は高濃度フッ素という発想がありませんでした。

上記の歯磨き粉のフッ素濃度の推奨基準は2023年1月に変更されたものです。

かなり最近です。

この変更は、日本小児歯科学会、日本口腔衛生学会、日本歯科保存学会、日本老年歯科医学会の4学会合同の提言によるものです。

フッ素濃度の推奨基準が変更された理由としては、次のようなことが挙げられます。

・国際歯科連盟(FDI)や世界保健機構(WHO)など国際的な機関では年齢にかかわらずフッ素濃度1,000ppm以上の歯磨き剤が推奨されていること。

・フッ化物応用の研究が進んだことで、より精度の高い基準を設けることが可能になったこと。

フッ素濃度は「ppm」という単位で表され、1ppmは100万分の1%を意味します。

部分入れ歯を作る費用は保険治療3割負担の方で総額約1~2万円

歯磨きは朝と夜の2回、1回あたり2分間以上、行なうのが理想的です。

ブラッシングの順序:
歯の外側から始め、次に内側、最後にかみ合わせの面を磨きます。

とくに歯の裏側や歯と歯の間はプラークが溜まりやすいので丁寧にブラッシングしましょう。

ブラッシング方法:
バス法:
歯と歯茎の境目を45度の角度でブラシを当て、細かく振動させる方法です。これにより、歯と歯茎の間の汚れをよく落とすことができます。

私が歯科学生の頃は歯磨き法といえばこのバス法一辺倒でした。

ただ歯ブラシの毛先が動かないように小さく動かすとか難しいテクニックが必要で、全部の歯を磨くのに30分とか必要になるので大変かと個人的には思います。

とはいえ歯科医院で歯科衛生士からおそわるのは、ほとんどバス法です。

科学的根拠はある方法なので指導されたらやってみてください。

ローリング法:
歯の表面にブラシを垂直に当て、歯の先端から根元に向かってブラシを転がすように動かします。

これは特に歯茎マッサージにも効果的です。

ブラッシングの動き:
小刻みに動かすのがポイントで、大きな動きで磨くと歯茎を傷つける可能性があります。

とはいえバス法よりは大ざっぱに動かして大丈夫なので小児の歯磨き法で用いられます。

力を入れすぎず軽いタッチで円を描くように磨きましょう。

【関連記事】→診療理念「・・患者さんの不安や悩みを解決せず自分勝手な提案はしない」