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・歴史漫画キングダムの戦術包雷のように短期決戦型で挑む「超攻撃的な」入れ歯修理とは

杉並区、西荻窪で入れ歯修理を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。

時は紀元前の中国、国が分裂し群雄割拠していました。

その国の一つ秦では秦国内を二分する内乱が繰り広げられます。

圧倒的多数の反乱軍。

攻められる王軍はしかし反乱軍大将、戎てき公(じゅうてきこう)の軍勢を分離させ、崖に追い込むことに成功していました。

王軍の軍師「河了貂(かりょうてん)」は戎てき公を討ち取るために、崖と三方の軍勢で壁を作り敵軍を囲い込む戦術「包雷」を決めます。

本来は広い場所で圧倒的多数で敵を囲む包雷ですが、数で劣る王軍の軍勢は壁を一列に作るのが精一杯。

「とにかく壁を破られないように持ちこたえて」

と兵を鼓舞する河了貂。

薄皮一枚のような壁を崩そうと数で押し込む敵勢を前に、包雷を維持できる時間はわずか。

チャンスは一回のみの超短期決戦を挑みます。

そんな包雷の中を、王軍手練れの将が突撃、一撃必殺で戎てき公の首を獲る。

…秦の始皇帝を描いた漫画「キングダム」を読んで頭の芯が痺れるのを感じました。

私も診療で河了貂のような状況に置かれることがあるのを思い出したからです。

総入れ歯を作る費用は保険治療3割負担の方で総額約2万円

保険治療が中心の当院は、基本的には亀のようにじっくりと時間をかけて丁寧に取り組むのを旨としていますが、時にはこの河了貂の作った包雷のような策を挑むことがあります。

たとえばグラグラ揺れている歯が一本あります。

他に歯はなく、口を閉じてもらうとグラグラの一本だけに頼って咬み合わせの位置を保っている症例。

まさに河了貂が作った包雷のように薄皮一枚で保っている咬み合わせです。

明日には歯が抜けてしまうかも知れない。

するとどこで咬めばいいのか患者さん自身も分からない咬合崩壊を引き起こします。

治療が格段に難しくなるのです。

そんなときに超短期決戦を仕掛けます。
迷ってはいけない。

歯が抜けないように、硬化しても柔らかさが残るアルヂックスという今ではあまり使われない旧式の型採りの材料を用いて、口の型を採り模型を作ります。

一般的には専門の歯科技工所に発注して数回かけて入れ歯を作るところを私が自分で作製。

すると次回には入れ歯が口の中に入ります。

薄皮一枚のところで咬み合わせを保っているグラグラの歯に歯科医師作製の入れ歯を入れて、入れ歯で咬み合わせを作ります。

ここまで態勢を整えれば、グラグラの歯はいつ抜けても咬み合わせは無事に保たれます。

圧倒的不利な状況を、自作の入れ歯を武器に短期決戦、一撃必殺で逆転勝利へ導く。

患者さんが笑顔で帰られるのを確認してから一人で拳を振り上げ

「ヨッシャー!」

見事勝利した河了貂たちのように勝ち鬨(かちどき)を挙げます。

これだから歯科医師は楽しい。
心からそう思える瞬間なのです。

参考文献:キングダム40巻 原泰久著 集英社

歯がない人の入れ歯の咬み合わせをどうやって決めるのか?

入れ歯でカチッと噛んだ時の位置、咬み合わせを決めるプロセスは、歯医者の専門知識と患者さんの口腔環境を考えて行ないます。

残っている歯、生えている歯が今回の症例のように一本でもあれば

「はい、カチッと噛んでください」
と歯科医師が言って患者さんが上下の歯でカチッと噛めばそれだけで多くの場合、解決します。

いつも快適に安定して噛める場所が1箇所に定まれば良いわけです。

しかし歯が一本もなく入れ歯もなかったら、どうでしょう?

噛む場所が分かりません。

すると入れ歯の咬み合わせを決めることが格段に難しくなります。

そこで咬み合わせを決める様々な方法があります。

とはいえ、その前に患者さんの口の中やや顎の形を知ることが必要です。

歯がある場合には赤い色のついた薄い紙、咬合紙を噛んでもらうことで咬み合わせを把握できます。

しかし歯がない場合は当院では主に二つの方法で咬み合わせを決定します。

1.患者さんが現在使っている入れ歯を直接使う

石こう模型に入れ歯を直接合わせて咬み合わせとなる対合する模型と組み合わせて、咬合器という機械に取り付けます。

患者さんの普段使っている入れ歯を用いるので信用できます。

ただ模型と入れ歯がピッタリと合う時ばかりではないので後から修正が必要になることもあります。

2.仮のワックス床を使う

たとえば
「歯がない、入れ歯もない」
という方は、どうすれば良いでしょうか?

ワックスでできた仮の入れ歯を模型に合わせて作ります。

そのワックス床を口の中に入れて噛んでもらって咬み合わせを記録します。

ワックスを熱で柔らかくして口を閉じてもらうやり方です。

熱し方や口を正しい位置に誘導するやり方など様々なメソッドがあり、私もいくつか知識にあって役立てています。

とはいえ中々難しいのが現状です。

その他のやり方として、ゴシックアーチという器具を使う方法もあります。

保険治療でも、入れ歯はここまで治る

2. 咬み合わせの計画

咬合平面(こうごうへいめん)の決定について:

咬合平面とは、前歯から奥歯までの切端と先端どうしを結ぶとできる平面のことです。

患者さんの咬み合わせの高さや水平的な位置を考慮して、理想的な咬合平面を設定します。

これは美観だけでなく、機能面でも重要です。

もっとも上アゴの咬合平面は、ある程度の指標が使えます。

だから上の入れ歯の咬合平面が全然合わず使えない入れ歯になってしまうことは自分は少ないです。

しかし極端にアゴが小さいとか歯の大きさ、高さが小さいせいで咬み合わせが極端に低いとか、上の入れ歯で極端に難しい症例もあります。

咬合力のバランス:
前歯と奥歯のバランスを考えてカチカチと垂直に噛んだ時に均等に力がかかるように設計します。

また前後左右にアゴを動かして歯ぎしりの運動をした時に変な引っかかりがあって入れ歯が外れないように歯並びを作ることが必要です。

これにより、よく噛めるようになり顎関節への負担を軽減します。

入れ歯で噛めることによって食生活も向上し誤嚥性肺炎の予防にもなります。

3. 試作用入れ歯(ワックスアップ)

ワックスアップ:
最初の試作用の入れ歯はワックスで作製されます。

歯グキに当たるピンク色の部分(床)をワックスで作って、そこにプラスチック製人工歯を並べます。

この仮のワックス床を患者さんが実際に装着して咬み合わせやフィット感、発音、見た目の確認が行われます。

とくにその中でも上の入れ歯において、顔の正中と前歯の正中を合わせることは大切です。

模型でもある程度は
「ここが正中かな」
という指標はあります。

しかし実際の顔面とズレていることも多いです。

だからワックス床に仮の歯並びを作って患者さんの口の中に装着して確認する工程が必須です。

たとえば下の歯並びと合わせて顔に合わせたら、顔が曲がって見えるようになってしまった。

そんなことが起こります。
必ず患者さんの顔を見て、多くの場合に修正をします。

ワックス床の調整:
患者さんの口の中にワックス床を合わせて、咬み合わせの高さや幅、歯の配置などを調整します。

模型では良さそうだったけど口に合わせたら咬み合わせが高すぎて口を閉じられなかったとか、よくあります。

このような誤差は入れ歯が完成してから修正することは難しいです。

ワックス床のうちに修正しておきます。

またこの時点で難しいということは入れ歯が完成してからも難しいことが多いですので患者さんにも説明して心構えをしておいてもらいます。

意外とそのような配慮が大切だったりします。

このプロセスを一回だけでなく何度か繰り返すこともあります。

こうしてワックス床で大丈夫と確認したら歯科技工所に発注して入れ歯を完成させてもらいます。

多くの壊れた入れ歯は保険治療で1時間で修理できます

4. 最終的な入れ歯の製作

素材を選択する:
患者さんのライフスタイルや予算に応じて、樹脂製、金属製、またはセラミック製などの素材が選ばれます。

保険治療だとプラスチック製の床、金属バネ(クラスプ)です。

近年はマグネット義歯も保険治療に収載されました。

しかしマグネット義歯は後からトラブルが多く当院では扱いません。

マグネット義歯は見るなり治療をお断りすることもありますのでご了承ください。

プラスチック製の床だと強度に不安をお持ちの方もいると思います。

保険治療でも中に補強の金属線や補強床を埋め込むことができます。
だから強度も十分保てます。

咬み合わせの最終調整:
完成した入れ歯を患者に装着し、再度咬み合わせと床の適合を確認します。

5. 使用後のフォローアップ

定期チェック:
入れ歯の使用開始後も、定期的なチェックが必要です。
咬み合わせの安定性や入れ歯のフィット感を確認して必要に応じて再調整を行います。

とくに食事すると痛い、というのは入れ歯の床の直径数ミリほどの出っ張りが歯グキを傷つけて潰瘍を作っていることが原因です。

その数ミリを削合することで治ります。

ガマンし過ぎず歯科医師に相談することをお勧めします。


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・グラグラ揺れている歯を抜いて入れ歯にプラスチック製人工歯を継ぎ足す増歯と、残っている歯に歯医者が新たに金属バネ(クラスプ)を作る修理を行なった症例、オルタナティブブログ

杉並区、西荻窪で、保険の入れ歯治療を数多く手がける歯医者、いとう歯科医院の伊藤高史です。

オルタナティブブログに記事を載せました。
グラグラ揺れている歯を抜いて入れ歯にプラスチック製人工歯を継ぎ足す増歯と、残っている歯に歯医者が新たに金属バネ(クラスプ)を作る修理を行なった症例↓

https://blogs.itmedia.co.jp/ito_takafumi/2025/05/post_195.html

ホームページ掲載 すみ


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・歯科治療で大事な、患者さんとの価値観のすり合わせ

杉並区西荻窪で入れ歯治療を数多く手がける歯医者
いとう歯科医院の伊藤高史です。

「金属のかぶせものは一切やらないって言われまして」
「来週いきなりインプラントを埋め込む予約を入れられました」
「歯の根の治療を30万円でやったんですけど歯が揺れているから、追加で何十万円かで歯グキの手術が必要らしいんです」

思わず身震いしてしまう言葉が患者さんの口から次々と出てきます。
都心の歯医者は強烈ですね。

・デメリットも多く危なっかしいセラミックよりも、保険治療の金属のかぶせものが功を奏する場面はいくらでもあります。
・来週いきなり緊急でインプラントが必要…そんな症例など存在しません。
・歯の根の治療をしても止められなかった歯の揺れを歯グキの手術で止めるなど、のるかそるかのギャンブルです。

そもそも歯の根の治療も歯周治療も、お金をかければ歯の揺れを止められる理屈が自分には理解できません。

保険治療で入れ歯の調整

今回の患者さんは、高すぎる咬み合わせを削って1週間様子を見たら揺れが治まりました。

これらの施術に決定的に欠けているものがあります。

それは「患者さんとの対話」です。

「こっちの話を全然聞いてくれない」

そのような患者さんの話をうかがうことがよくあります。

対話、会話、コミュニケーション無しの人間関係など有り得ないことは誰でもご存知でしょう。

しかしそういったものが一切ない殺伐とした人間関係の中で人の身体に手を加えてしまうとは、考えるだけでおそろしいです。

そんな話を患者さんからお聞きする時にいつも自分の頭に浮かぶのは
「インフォームド・コンセント」
です。

インフォームド・コンセント(informed consent)とは、医師や看護師から十分な説明を受けたうえで患者が医療行為に同意することです。

患者が病気や容態、検査や治療の内容、処方される薬などについて理解し納得した上で同意して治療を受けることを意味します。

インフォームド・コンセントは患者の
「知る権利」
「自己決定権」
を保障する考え方で
「十分な説明に基づく同意」
「説明と同意」
などの訳があてられます。

医療者側からの十分な説明に基づく患者側の理解・納得・同意・選択であり、あくまで患者側が主体です。

医療職も患者や家族の意向や様々な状況や説明内容をどのように受け止めたか、どのような医療を選択するかなどを考慮し、関係者と互いに情報共有して合意するプロセスでもあります。

インフォームド・コンセントは、検査・処置・手術などの侵襲的な行為や重い副作用の可能性がある注射・処方・与薬など、身体に大きな影響を与える医療行為については特に重要です。

また人生の最終段階における医療・ケアの決定や入院中の診療・リハビリ計画や退院にむけた指導など、患者や家族の参加が重要な事項に関しても重視されます。

参考文献:「インフォームド・コンセントとは」
Search Labs | AI による概要

入れ歯修理の費用は保険治療3割負担の方で総額約3,000~5,000円



「インフォームド・コンセントについて述べよ」

との設問が私が大学受験生だった時代からありました。

30年以上経った今でも医学部、歯学部受験問題で出題されます。

しかし理解、納得、同意、選択を一切無視した、歯医者の自分でさえ身震いしてしまう言葉を患者さんに平気で投げかける歯医者がいます。

そんな歯医者にインフォームド・コンセントについてどう考えるのか、今さらながら聞いてみたいものです。

「理解し、納得し、同意し、選択する」
この大切さは医療だけに限りません。

人間関係すべてに必要。
夫婦だって同じです。

夫婦でも最初から何もかも考え方ややりたい事が同じわけではありません。
むしろ他人ですから違う方が当たり前です。

私は30代のころに、いわゆる婚活をしました。

その際に結婚相談所の先生から
「交際を通じて、お相手の方と意見のすり合わせをしてください」
と言われました。

実は自分はそれで初めて
「意見のすり合わせ」
の言葉を知りました。

話し合って譲るところは譲る、受け入れてほしいところは相手のプライドをへし折ったりしないように気をつけながら落としどころを探る。

インフォームド・コンセントは患者さんと医師との関係に限定された言葉なので一般的には「意見のすり合わせ」と私は解釈しています。

もちろん一般的な仕事をする時にもそのような事が大事なのは、社会で普通に生きている人なら誰でも心得ていることです。
別に私の大発見した特殊な理論などではありません。

でも歯医者の中には自分のやりたい事だけを押し付けて患者さんとの「意見のすり合わせ」が一切できない人がいるわけです。

月並みではありますが
「治療の際にはインフォームド・コンセントを通して患者さんと意見のすり合わせをしていくこと」
をこれからも当院は大切にしていこうと再確認した次第です。

セラミック治療のトラブル

ムシ歯を削ってセラミックのかぶせものを着ける治療はその美観と耐久性に優れているとされます。

とくに高額な自費の歯科治療でよく行なわれる選択肢となっていますが、トラブルも存在します。

以下にその主なトラブルとその原因、対処法について説明します。

1. セラミッククラウンやベニアの破損

原因:
過度な噛み合わせ力や事故、またはセラミック自体の製造上の欠陥で起こります。

とくに金属をかぶせて表面の見える部分をセラミックで覆う陶材焼付鋳造冠などはよくセラミックが欠けて金属が剥き出しになります。

対処法:
破損部分を修復するか、新しいセラミックを作成する必要があります。

軽度の破片であれば接着剤で補修可能な場合もありますが、やはり頼りないものです。

繰り返し壊れるので数か月おきに修理している症例もあります。

困ったものです。

新しいセラミック冠を作製するなど、もっと大変です。

そもそも問題があるから壊れたわけですから新しく作っても同じ結果が待っています。

セラミック冠は金属と違って冠に厚みが必要です。

ですから歯が長いとか口自体が大きいとか余裕が必要です。

欧米人みたいな口の中ならそんなセラミック冠もできるものの、日本人はそもそも体も口も歯も低く小さいことが多いです。

欧米の流行をそのまま持ってきたところで上手くいきません。

2. 色調の不一致

原因:
デザインや製造段階での色合わせのミス、長期間の使用による色素沈着。

とくに日本人の歯は赤みが強いといわれています。

アメリカで活躍した元大リーガーみたいな真っ白しろな歯は、ちょっと違和感あります。

対処法:
色調が不満であれば、再度色合わせを行い、新しいセラミックを作る必要があります。

色素沈着に対しては定期的なクリーニングや歯科専用の切削器具での研磨が有効です。

3. フィットの問題

原因:
印象採取やセラミックの製作過程での精度不足。

対処法:
フィットが悪いと歯茎の炎症や痛みを引き起こす可能性があるため、再製作が必要となります。

もっとも高額な自費治療で精度の悪い物を作るならば罪作りなので、そんな歯医者は勉強しなおした方がいいです。

私が勤務していた都心の歯医者でも忙しかったからか、歯型をとると箱の中に入れて、昼休みや夕方にまとめて石こうを注いでいました。

型をとって置いておくと経時劣化します。

だから作製物が全く合わず入れ歯もかぶせものも、患者さんに装着する前に内面をガリガリ削るところから始めていました。

名医を気取っていたものの実態はそんなものです。

4. 歯肉炎や歯周病

原因:
セラミックと歯の間の隙間からのプラーク蓄積。

対処法:
正確なフィットと良好なオーラルケアが求められます。

歯医者による定期的なチェックとクリーニングが重要です。

5. セラミックの脱離

原因:
接着剤の問題、セラミックのフィット不良、または過度の力による脱落。

対処法:
再接着が可能ですが、原因によってはセラミック自体の再製作が必要です。

数年しか経っていないのに再作製で15万円請求された、というトラブルが散見されます。

10年使えるかどうかは様々な要因が関わるので、私にはそんな未来のことはわかりません。

だから高額な自費治療は行ないません。

6. 知覚過敏

原因:
セラミックと歯の間のエナメル質の薄さや、治療過程での歯質の損傷。

対処法:
確かに歯の神経を取り除く歯内療法をせず歯の神経を生かしたままセラミック冠をかぶせたほうが歯が長持ちします。

しかしセラミック冠をかぶせるには金属と比べて歯を大きく削ります。

セラミックは厚さが必要だからです。

歯の神経の近くまで歯を大きく削ることになります。

そうすると知覚過敏が起こります。

知覚過敏用の歯磨き粉や特殊な接着剤の使用、または歯の表面に保護コーティングを施すことが考えられます。

ですが結局はしみる痛みに耐えきれずセラミック冠に穴を開けて歯の神経を取り除く治療を行なうことは起こりがちです。

やはりトラブルの元となります。

つくづく高額な自費治療はやめた方が良いと思います。

7. 長期的な耐久性

原因:
経年劣化や材料の品質。

対処法:
セラミックの寿命は通常10年以上ですが状態によっては交換が必要となります。

定期的なメンテナンスが長持ちさせる鍵です。

これらのトラブルは、適切な診断と治療計画、そして術後のケアによって多くは防げるか、軽減できます。

セラミック治療を検討する際には、信頼できる歯医者を選び、治療のリスクやメンテナンスについて十分な説明を受けることが重要です。

適切な診断が必要とはいえ
「こんな患者さんに高額な自費治療をやっちゃうんだ」
という無謀の施術をよく目にします。

私も勤務医時代に経験していますが金銭的なノルマが厳しくて、もう見さかいなく高額な自費治療をやりたがるようになるものです。

せめて初めての歯医者を受診する際は保険治療で様子を見ることをおすすめします。

また日常のオーラルケアを怠らず定期検診を受けることでトラブルを最小限に抑えられます。

【関連記事】→診療理念「・治療のメリット、デメリットを包み隠さない」


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・人のために入れ歯治療を一生懸命すれば、最後に神さまが助けてくれる話

杉並区西荻窪で入れ歯治療を数多く手がける歯医者
いとう歯科医院の伊藤高史です。

「もう、こうなったら神さまに頼るしかない」

小説を読んで、あのころの気持ちを久しぶりに思い出しました。
その小説とは「護持院原の敵討」
(ごじいんがはらのかたきうち、森鴎外著、新潮文庫)。

私にとっては非常に難解で、 インターネットで解説や書評を調べながら行きつ戻りつ読み進めて、やっとのことで多少の理解を得ることができました。

江戸時代の話です。

強盗に斬られた金庫番の男性が亡くなりました。
犯人は江戸から逃げたらしい。

金庫番の息子の宇平(うへい)と弟の九郎右衛門(宇平から見ると叔父くろうえもん)、従者の3人が敵討ちの許可を得て敵を捜し歩きます。
江戸を出て四国九州まで巡る旅は病苦や資金難で過酷です。

読みながらこの旅路に強く共感していました。

なぜなら自分も人を捜し歩く同じような経験をしたからです。

ただし捜したのは敵ではなく結婚相手です。

結婚する前に私は結婚相談所に登録して見合いを重ねていました。
面倒見の良い相談所で、今っぽい清潔感ある服装のチョイス、オシャレで気分のあがるレストラン、楽しい雰囲気になる会話についてなど、よく教えてくれました。

30才すぎて女性とまともに付き合ったことがなかったので、自分でもデート向けのレストランの本やモテるための会話法の本などを読みあさりました。

しかし…
結果が出ない。

・2か月も会い続けたのに険悪な雰囲気になり断念せざるを得なかった。
・なぜか2回目のデートにつながらないことが続いた。
・宗教の勧誘をされたなど。

11人の方と見合いしてデートはそれなりに楽しかったもののご縁がなく、2年ほど経ってあきらめムードになってきました。

そんなある日に見合いとは別のきっかけで知り合ったB子さんから
「伊藤さん、だれかいい人を紹介してよ」
と相談されました。

私じゃダメというのが引っかかりましたが自分は見合いでこれからも女性と会う機会はいくらでもあります。

ここはB子さんのために動こう。
そう割りきって考えて、互いに人を連れてくることで後日に2対2で会うことになりました。

自分は別にその出会いに何も期待していません。
B子さんに良い出会いを提供できて、自分はその場を楽しく過ごせればいいかと。

そこへB子さんが連れてきたのが、後に妻となる女性でした。

見合いで万策尽き果てたと思っていた私は、女性たちに見合いしている話をして
「もう、こうなったら神さまに頼るしかないと考えている」
と打ち明けました。

すると二人は口をそろえて言います。

「それなら、いい手相占いの先生いるよ!」

わらをもすがる思いで教えてもらい、さっそく予約を取りました。
テレビ出演のご経験もある著名な先生です。

先生は私の手を見るなり言うのです。

「あなたはもうすぐ結婚しますよ」

手相にそのような印が出ていたそうです。
その予言どおり1年後に私たちは結婚しました。

今でも私が妻に頭があがらないのは、このできごと以来

「もしかしてこの人って神さま?」

という思いがあるからです。

小説で、旅の苦しさから宇平は言います。

「おじさん、あなたはいつ敵に会えると思っていますか?」

これは成功するかどうかに対する疑問です。

こんなことをしても、どうしようもない。
会えるかもわからないのに捜してもしようがない。

これは婚活も同じです。
努力が必ずしも成功につながらない。

結婚相談所のホームページを見ると千人以上の女性が載っています。

そこから一人の結婚相手を見つける。
広大な砂浜で一粒の砂を探すに等しい。
もしかしたらその千人の誰とも赤い糸などつながっていないのかも知れません。
それは日本全国から敵討ちの一人を捜すのと同じです。

部分入れ歯を作る費用は保険治療3割負担の方で総額約1~2万円

「あなたはいつ結婚相手に会えると思っていますか?」
私は見合いしていた2年間ずっとそんな重い疑問が頭から離れませんでした。

「おじさん、あなたは神や仏が助けてくれるものだと思っていますか?」
これは神仏の加護に対する疑問です。

私は信仰の薄いタチで神仏の加護など縁がないと思っていたのですが、結婚できたのは占いの人智を越えた力が後押ししてくれたからと考えるようになりました。

それからは妻の勧めで一緒にお墓参りに毎月行っています。
実際にはお墓参りの後に行くファミレスを子どもが楽しみにしているからなのですが、信心もまずは形から入ることにしました。

さらに宇平は続けます。
「敵はにくい奴ですから、もういちど会ったらひどい目に合わせてやります。だが捜すのも待つのも無駄ですから、出会うまではあいつのことなんか考えずにいます。私は晴れがましい敵討ちをしようとは思いませんから、助太刀もいりません」

これは敵討ち制度そのものに疑問を投げかけて強がっているところです。
宇平が言うように敵討ちとは成功の見込みに乏しい反面、己の全存在を賭けて行なわなければならない。
果たしてそんなことに値するものなのか、人は何を支えにしてこの過酷な試練に耐えねばならぬのか。

結婚も同じです。

未婚率も上昇していて世間体も今はさほど気にしなくて大丈夫になっています。
ですから結婚とは必ず成し遂げなくてはならないもの、というわけではありません。

ずっと昔の話、私たちの親くらいの時代には、人の紹介で顔合わせして2回目に会うのはもう結婚式場。
そんな見合い結婚がありました。
今となっては、それはもう特殊なものでしょう。

私のように学生時代にも職場にもご縁がなく結婚しようとしたら、婚活とは成功の見込みに乏しい反面、いいかげんな人間と結婚したい女性などいないでしょうから、やはり己の全存在を賭けて行なわなければならないものでした。

小説には宇平のそんな弱気になり離脱しそうな雰囲気を察知した九郎右衛門の言葉が書かれます。

「…武運が拙くて、神にも仏にも見放されたら、お前の言うとおりだろう。
しかし人間はそうしたものではない。腰がたてば歩いて捜す。病気になれば寝ていて待つ。神仏の加護があれば敵にはいつか会える」

そう言ってあちらこちらを捜索しては九郎右衛門はその土地の神社へ参詣してきました。

そんな中で耐えきれなくなった宇平はもうやめると宣言し、いなくなってしまいました。

しかしその直後に九郎右衛門は霊験あらたかだと評判される玉造豊空稲荷の話を聞きます。
次の日に神主を通して神さまにお伺いをたてたのです。そのご託宣は…

「尋ね人は春頃から東国の繁華な土地にいる」

とすれば犯人は江戸に舞い戻ったことになります。
にわかには信じられなかったものの本当に江戸にいることがわかり急転直下、敵討ちに成功しました。

森鴎外がこの小説を書いた時代は、敵討ちを扱った忠臣蔵がもてはやされて美徳とされていました。
いっぽうでこの小説にはこの敵討ちについて賛美することはまったく書いていません。

むしろそんな空しい目的に黙々と向かっていく苦難に満ちた毎日を淡々と描いています。

鴎外が書いたのは敵討ち自体ではなく、それに関わる人びとのひたむきな生き方から浮かび上がる献身の美でした。

敵討ちをする人びとの内面に立ち入ることで、つらいことに立ち向かい、それを乗りこえようとする、その心理を追います。

そしてそこに人間として時代を越えた変わらない感情を描きました。

その変わらない感情とは、人間は忠義とか愛国とかいった外面的な動機ではなく

「人間としてこうありたい」

という内面からあふれでる強い想いにもとづいて行動する。

そのような思いを込めて鴎外はこの小説を書いたのだろうとインターネットでわかりやすく書評されていました。

「結婚とは果たしてそんなことに値するものなのか、人は何を支えにしてこの過酷な試練に耐えねばならぬのか」

もし見合いをしている最中の私がそう聞かれたとしたら、このように答えたでしょう。

「それは結婚したいと内面からあふれでる強い想いがあるから」と。

私が行なっている歯科においても
「お金持ちになりたいから」
「人よりエラくなりたいから」

など外面的な動機で歯医者が治療しているとしたら、患者さんに迷惑をかけるだけです。

敵討ちを果たした九郎右衛門のように、あるいは妻と初めて出逢って即座に行動に移したあの時の自分のように

「歯医者としてこうありたい」

という内面からあふれでる強い想いにもとづいて治療をするから…人も神仏も味方となって治療を成功に導いてくれるのでしょう。

もっとも広大な砂浜で一粒の砂を探すに等しい、そんな正解のわからない症例に対して
「もう、こうなったら神さまに頼るしかない」
ではさすがに困ります。

難しい治療にこそ立ち向かい乗りこえようとする、ひたむきな献身を忘れない。
そのためにこれからも自らの内面を見つめながら勉強し、患者さんと家族を大切にしていきます。

参考文献:
「護持院原の敵討:鴎外、忠君愛国思想を斬る」https://japanese.hix05.com/Literature/Ogai/ogai05.gojiinhara.html
「詩ごとのbrog」https://ameblo.jp/buk105/entry-12342102331.html

【関連記事】→診療理念「・いとう歯科にご縁がなくても健康と幸せを願う」


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・入れ歯の歯が大きすぎるので、形を削って修正して良い歯並びを作る治療を行ないました

杉並区、西荻窪で、保険の入れ歯治療を数多く手がける歯医者、いとう歯科医院の伊藤高史です。

オルタナティブブログに記事を載せました。
入れ歯の歯が大きすぎるので、形を削って修正して良い歯並びを作る治療を行ないました↓

https://blogs.itmedia.co.jp/ito_takafumi/2025/04/post_194.html

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