上下巻の大作ですがとても読みやすく話に引きこまれていきました。
切れ者の長男「道隆」、策士の次男「道兼」、兄たちの陰に隠れて周囲から平凡と思われていた「道長」はその平凡が故の平衡感覚で政治をコントロールしていく。政敵ながら身内とどこまで戦うか、はたして自分の決定が良かったのかと、ことあるごとに悩む道長に共感しました。
「この世をば 我が世とぞ思ふ望月の 欠けたることのなしと思へば」
そんな権力の絶頂の句を詠んだ道長に対して、剛腕、欲の固まりというイメージを持っていましたが人間味あるエピソードの数々に、親近感すら感じるようになりました。
歴史上の人物でも、私と同じように悩んだり調子に乗りすぎたりすることがあって、その末に選んだ行動が歴史を動かす。あの苦手な家系図は、人物の細かいエピソードや丁寧に描写した人格など、歴史の血や肉を取り除いて残った「骨」みたいな物だったのですね。
小説を読んで以来、家系図という骨格の上にその時代を生き抜いた人たちの熱い想いや息遣いが見える気がしてきました。歴史って面白い。そう思いなおしているところです。
いとう歯科医院の伊藤高史です。2018.09その3
いれば 保険適用 でも大丈夫