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・プロ(歯医者)が言う「大丈夫ですよ」は大丈夫か?

杉並区、西荻窪で、入れ歯治療を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。

「お金をかけてインプラントを入れれば大丈夫ですよ」
「お金をかけてチタン金属床の入れ歯にすれば大丈夫ですよ」
「お金をかけてセラミックで被せれば大丈夫ですよ」

歯医者は笑顔で言うけど目は笑ってない。
なんだか胡散臭い響きがするなあ。

本当に大丈夫? 
トラブルが起こるんじゃない? 
10年後どうなるんだろう? 

口の中のプロが言うんだから大丈夫なんだろうけど…

頭の片隅に小さな疑問が浮かんだ経験はありませんか。
でも面と向かっては聞きにくい。

「本当に大丈夫ですか?」
実際に聞いたら歯医者にキレられた。
そんな話も耳にします。

お金をかけた治療を受けて大丈夫ですか?

私が聞かれたとしたら
「ちっとも大丈夫じゃありませんよ」
即答します。

仮にインプラント、チタン金属床、セラミックをやっても「大丈夫」な口の状態なら保険治療で何をやっても上手くいきます。

大丈夫じゃない歯なのに高額な自費治療を受けてしまってヒドい目にあった。
そういう話はよくあります。

定期的な入れ歯調整メンテナンス。費用は保険治療3割負担の方で総額約2,000~3,000円

先日別の業界のことで、それと似た話を読みました。

不動産の雑誌に載せられていた「業者は”プロ”か?」という記事です。

・投資用シェアハウスを買って大損した。
・業者のすすめで物件を買ったが借金を返せなくなった。
・言われるがままにハンコを捺したら知らぬ間に不正な融資を引いていた。

セールストークに小さな疑問を抱くことはありました。

しかし業者に聞いたら「大丈夫ですよ」と返答されて「業者イコール不動産のプロが言うんだから大丈夫だ」と納得してしまう。

記事を書いた著者はそうなって騙されてしまう人のことが理解できなかった…そんな記事です。

不動産の本を書くくらいの著者ならば不動産業者のウラ側を熟知しています。騙されることはないのでしょう。

しかし一般人は違います。
近ごろ私も父からの相続で必要になって不動産のことを勉強し始めました。不動産に関しては素人です。

パリッとしたスーツの爽やかな兄さんから立派な名刺を渡されて「大丈夫ですよ」と囁かれたら、かぼちゃの馬車にホイホイ乗ってしまいそうです。

そんな被害にあった話をたくさん聞いてきた著者に、いったいプロとは何だろうという疑問が浮かびます。

広辞苑で調べると「【プロフェッショナル】専門的。職業的」とあります。

ただそれだけではお金をもらっている、もらってないだけの違いでしかない。

ではなぜかぼちゃの馬車みたいな詐欺的な物件を売りつける「プロ」が出てきてしまうのか。

さらに調べて納得したのがインターネット、ウィキペディアの説明でした。

「専門的な仕事に従事し、その能力が高く、その仕事の技術に優れ、確かな仕事をする人。主たる収入を得るために、特定の分野に従事している人」

客の不利益になることを行なう業者はお金をもらっている点においては広辞苑で言うところのプロではありますが、ウィキペディアで説明されているようなプロではないという結論に達しました。

部分入れ歯の金属バネが折れても保険治療で修理できます

歯医者の世界でウィキペディアで説明されているようなプロを見分ける方法はあるのでしょうか。

歯医者でない内科や外科など医科においては、たとえばガンの治療の統計をとって病院ごとの成功率や5年生存率などを国や厚生省で詳しく調べています。
治療成績は年が新しくなるにつれて長足の進歩を遂げています。

とはいえ身内がガンの治療を受けてわかったのですが、これだけ医療が進歩しているにもかかわらず、医師ですら想定していなかった数々のアクシデント、思ってもいなかった出来事があって医療の難しさを目の当たりにしました。

それに引きかえ歯医者の自費治療は国や厚生省の正確な統計などありません。

保険治療では所轄の厚生局がレセプトから様々なデータを割り出してカルテ請求の細かいルールを作って管理しています。

保険治療イコール良い治療というわけではありませんが、そもそも自費治療に関しては厚生省で決められたルールもなく国の管理もありません。

もちろん高い成功率で真面目に自費治療を行なっている先生もいらっしゃるとは思います。

しかし「じゃあ、どの先生が?」と聞かれるとまったく分かりません。
ホームページや、名医を紹介する本など見てもムダです。

なぜなら、私の読解力不足かもしれませんが歯医者の自分が見てさえ、どの先生もみんな同じ内容に見えてしまうからです。

歯医者の本当の実力を見分ける方法を実は一つだけ知っています。

それは…

その歯科医院に雇われて毎日勤務すること。
半年ほどでオモテもウラも全部分かります。

もっとも私もさほど多くの歯科医院に勤めたわけでもなく、ウィキペディアでいうところの自費治療のプロフェッショナルを知らないのは残念です。

不動産の本の著者は記事で「仕事をするのであれば、プロとやった方がいいに決まっている。その不動産のプロを見抜くためにも、家主のサポートになるように今後も出版を通じて頑張っていきたい」と述べています。

私もブログやホームページを通じて、あなたに歯や入れ歯、歯科医療のことを知ってもらえるように努めますし、ウィキペディアで言われるような「プロ」であるようにこれからも修行を積んでいきます。

「家主と地主」2020年8月号、株式会社全国賃貸住宅新聞社

歯科インプラント トラブルについて

歯科インプラントは、失った歯の機能を回復するために顎の骨にチタンやジルコニアなどでできた人工の歯根を埋め込む治療法ですがトラブルが発生することがあります。
以下によくあるトラブルと原因、その対策について説明します。

トラブルの主な例と原因

インプラントの脱落:

原因:
よくある勘違いでインプラントはネジのようにらせんに切った溝と骨が物理的な嵌合力で埋まっているというものです。

そうではなくインプラントのチタンが骨と化学的に結合して維持するとされます。
これをオッセオインテグレーションといいます。
しかしこの骨結合が不十分だったり歯周病などにより骨が吸収されたりすると、インプラントが固定されなくなることがあります。

また、咬む力が強すぎる、またはインプラント自体が適切に配置されていない場合も脱落の原因となります。

対策:
定期的なメンテナンスや口腔衛生の管理、適切な咬合調整が重要です。
とはいえインプラントで「適切な」咬合を与えるのは大変難しいです。

私も施術はしませんが他院で入れられたインプラントのメンテナンスをすることはあります。

なるべく触らない、しか対処法はないのが実情です。

感染症・炎症:

原因:
インプラント周囲炎(ペリインプラント炎)は、インプラントの周囲にプラークや細菌の蓄積することによって引き起こされます。

手術後に清掃が不十分といった不適切なケアや、既存の歯周病が再発することがあります。

対策:
術後の口腔ケアの徹底と、定期的な歯科検診が必須です。
とくに患者さんの全身状態(糖尿病など)にも注意が必要です。
近ごろは骨粗しょう症の薬BP製剤などを用いている方のアゴ骨が腐ったようになってくる腐骨がインプラント周囲に生じる薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)が新たにクローズアップされつつあります。

神経損傷:

原因:
インプラントの埋入位置が誤っているとアゴ骨内部の神経を傷つける可能性があります。
これは特に下顎の場合に問題となります。

対策:
事前のCTスキャンによる精密な計画とサージガイドを使用した手術が推奨されます。

インプラントのトラブル、審美的な問題:

原因:
前歯のインプラントでは、色や形が自然に見えないことがあります。
これはインプラントの位置や上部構造のデザインに起因します。

対策:
治療計画段階から審美性を考慮し、適切な材質選びとプロセラミックなどの高品質な材料を使用することです。
とはいえ元々はアゴ骨が歯を支えられないほどの状態だったから歯が抜けたりしたわけです。

そこに新たに金属の棒くいを埋め込んで長持ちさせるのは、さぞかし大変なことと思います。

骨の問題(骨造成の必要性):

原因:
骨量が不足している場合はインプラントを固定するのに十分な支持が得られないため骨造成が必要になります。

対策:
骨造成の手術を併用することで、インプラントの成功率を高めます。
術前の詳細な診査が必要です。

しかしインプラントを入れようとして手術に取り掛かったら骨の量が足りなかった。
だから骨造成手術を追加で行なって、その金額を上乗せして患者さんに請求したら「そんな話は聞いてない」というトラブルになった話はよく耳にします。

トラブル防止のためのポイント

歯医者の選択:
インプラントを数多く手がける経験豊富な歯医者を選ぶことが重要です。
インプラント治療は高度な技術が求められるため専門的な知識と実績を持つ医師を選びましょう。

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