杉並区西荻窪で入れ歯治療を数多く手がける歯医者
いとう歯科医院の伊藤高史です。
紀元前200年の中国の話です。
それまで500年も続いた戦乱を制し中国を統一した秦の始皇帝。
その治世は長続きせず再び戦乱の世になります。
群雄割拠の中から出てきたのが武勇を誇る項羽(こうう)でした。
逆らう者はみな殺し、降伏した者も生き埋めにしてみな殺し。
そんな恐怖政治を敷く項羽に対して、仁徳で人々に臨み死傷者を最小限にして人民を味方につけて勢力を拡大した劉邦(りゅうほう)。
やがて項羽と劉邦は戦うようになります。
劉邦は山賊のお頭から身を興し漢の国を作ります。
40万の兵を持つようになり、今はさらに56万まで兵が膨れ上がりました。
「大王、戦というものは国の運命をかけまする。軽々しく戦うものではありません」
そんな大元帥である韓信(かんしん)のいさめる言葉も聞かず、ケタはずれな力を得てすっかり舞い上がってしまった劉邦は項羽の本拠地の彭城(ほうじょう)を攻め落とします。
しかし大軍を束ねる韓信を連れてこなかったためまったく統率がとれません。
兵たちは略奪はする、警備もせず連日酒盛りして夜は眠りこける。漢軍はすっかり堕落してしまいました。
いっぽう落城の報告を受け、すぐに戻った項羽は油断していた漢の兵や将軍を倒し、わずか半日で彭城を取り返しました。
一般的に項羽と劉邦の話では最後に勝った劉邦がいい役で項羽が悪役のイメージがありますが、この時ばかりは私は猛将項羽に喝采を送っていました。
とはいえその後に劉邦は反省し挽回します。
百万の兵を率いた韓信の活躍で劉邦は項羽を倒しました。
保険治療で入れ歯のゆるさを解決
項羽と劉邦を読んであることに気がつき、私は背筋が寒くなるのを感じました。
気がついたのは歯科の自費治療の値段についてです。
中国の歴史小説にはよくこのような40万、56万、百万という兵の数が出てきます。
いっぽう40万、56万、百万というお金の話が自費治療においてよく出てきます。
・金属床の入れ歯40万円
・セラミックの連結したかぶせもの56万円
・インプラント治療で百万円
しかしまだ未熟で統率力のなかった劉邦は56万人の兵を制御できず城を失いました。
よく自費治療をやったのにうまくいかなかった話を聞きます。
それは統率力のない歯医者が56万の兵ならぬ56万のお金を率いて舞い上がった結果です。
項羽と劉邦ではその末路をわかりやすく漫画で描いてくれています。
ましてや百万円の治療をするなら、鬼神のような技術を身につけて、あらゆるリスクを見通しあらゆる解決法を把握。兵站(補給)ももちろん万全、飢えの心配など一切なし。
百万の兵を手足のごとく使いこなし400年も続いた漢王朝設立の立役者、韓信と同等の能力が必要です。
ですからもしあなたが百万円の自費治療を勧められたら、その歯医者に聞いてみることです。
「あなたはあの韓信をもしのぐ大先生なのですか」。
「いいえ、私はそんな大先生ではありません」
そう、まっとうな回答をする歯医者でしたら保険治療にしておくのが無難です。
麻雀の役満「国士無双」の語源となった韓信をしのぐ国士無双な歯医者など、残念ながら私は出会ったことがありません。
もちろん百万人イコール百万円ではありませんが「百万」という数字の持つ重さ、背負うもの、統率の大変さはよくよく認識すべきです。
「治療というものは患者さんの運命をかけまする。軽々しく自費治療などするものではありません」
韓信の言葉を借りて私が言いたいことです。
部分入れ歯の金属バネが折れても保険治療で修理できます
ちなみに私は大学を卒業してから自衛隊の歯科医官だった時期があります。
福岡久留米の幹部候補生学校の初期訓練で、号令をかけて隊を行進させる練習をしました。
同期生15人の隊に
「前へーすすめ!」
「右向けーみぎ!」
「左向けーひだり!」
と声をかけていきます。
ところが途中で隊が右へ行っているのか左へ行っているのかわからなくなってパニックしてしまい、伊藤隊長が率いる隊は道の側溝に落っこちてしまいました。
「コラー伊藤候補生、なにやっとるかー!」
あとで教官からコッテリしぼられました。
15人を率いるのでもこんな体たらくですから百万人を率いる大変さは想像を絶するものがあります。
「3万の兵で彭城を取り返しにいく」
戦いの準備をする項羽に対して部下は、56万の大軍と戦うにはいくらなんでも少なすぎると思いまするが…と問います。しかし
「ふん、劉邦など戦のやり方も知らぬ田舎者じゃ、それで充分じゃ」
と言って出陣。
家族が彭城にいる項羽の兵士たちは自分の家族を助けようと全身に闘志をみなぎらせ3万の軍勢は火のような勢いで昼夜をわかたず進撃します。
こうして城外の守備として置かれた9つの陣を叩き彭城から出てきた4つの陣を破り、漢軍の大将たちを項羽自ら次々と討ち取りました。
15人の兵ですら使えない私には3万の兵で56万の軍勢に突撃をかける項羽のような勇気も統率力もありません。
しかし百万円の自費治療がうまくいっていないのを保険治療数千円で調整して平定した経験なら何回もあります。
歯科治療も戦国時代の戦も、大切なのは40万とか56万とか百万とかいう数字ではありません。
あのとき項羽に従った兵たちのような迫力で、患者さんを助けようと全身に闘志をみなぎらせ火のような勢いで昼夜をわかたず入れ歯を修理する。
大切なのはそんな確かな技術と熱い気持ちで治療に臨むことなのです。
参考文献:「項羽と劉邦」横山光輝著、潮漫画文庫
歯科の自費治療の価格はなぜケタ外れに高いのか?
自費治療の価格が高いのはいくつかの理由が考えられます。
まず技術と研究開発費が大きな要因というのがよくある論調です。
自費治療は最新の医療技術や薬剤を用いることが多く、これらの開発には莫大な費用がかかるとされます。
新しい医療技術や薬の開発には長期間の研究と試験が必要で、そのコストが最終的に治療費に反映されています。
また特許を持つ製薬会社や医療機器メーカーはその開発費を回収するために高価格で提供することが一般的です。
しかし金属床入れ歯などは50年以上前の祖父の時代から存在します。
もうとっくに減価償却できているはずですが金属床入れ歯の価格はあまり変わりません。
何故そうなのかは、よく分からないです。
次に専門性と人件費が価格に影響を与えるとあります。
自費治療を行なう医師やスタッフは通常は高度な専門知識と経験を持っており、それに見合った報酬が必要です。
たとえば美容整形や先端治療の分野では特別な訓練を受けた医師が必要で、その人件費は高くなりがちです。
ただ、医療の世界でも経験の乏しい者が美容整形に携わる「直美」が問題になっています。
「医師の倫理観が問われる中、美容外科医がクローズアップされ「直美」が問題視された。直美とは、医学部卒業後、2年の臨床研修を終えてすぐに自由診療である美容医療の道に進む医師で、「直接美容医療」の略だ。厚労省の統計によると20~30代の美容外科の医療施設で働く医師が659人(2022年)で10年前の4倍になっている。
同業者からも批判が出ている。美容外科「高須クリニック」名古屋院院長の高須幹弥氏も25日までに更新した自身のYouTubeチャンネルを更新し、「なぜ美容外科医はろくでもない人間が多いのか解説します。」と題した動画を配信している。」
参考文献:https://news.yahoo.co.jp/articles/416712f8928c541323c0fc8f62b29dbd80300b5f
歯科の世界でも
「歯科インプラント トラブル急増の理由」と題してNHKが取り上げています。
参考文献:https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3143/
ですから
「高度な専門知識と経験」
「特別な訓練を受けた医師」
が本当かどうかはよくわからないのが実情です。
入れ歯と口の機能の検査は保険治療3割負担の方で約2,000円
さらには施設運営費も無視できません。
先端医療機器や高級な設備、清潔で安全な環境を維持するために多額の投資が必要です。
これらの施設コストは、とくに都市部では土地や建物の賃料が高いことからも治療費に上乗せされます。
これについてはその通りではあります。
もっとも20代の当時に勤めていた都心の歯科クリニックでは立派なオペ室なんかありましたが、ちっとも使わなかったので雑巾など掃除道具置き場となっていました。
そんな掃除道具置き場が治療費に上乗せされているとしたら、ちょっと切ないですね。
また保険適用外との点は大きな理由です。
公的医療保険が適用されない自費治療は、患者が全額を負担することになります。
保険が適用される治療では、保険会社が一部を負担するため、患者の負担が軽減されますが、自費治療ではその恩恵を受けられません。
これもその通りではあります。ただし
「治療に対して公的にお金を出しませんよ」
とはどういう意味か考えることは重要です。
公的に認められない欠点があるから自費治療にしている。
そんな事情もあるわけです。
市場競争の少なさも価格を高く保つ要因です。
特定の治療法や技術が一部の医療機関しか提供しない場合は選択肢が限られて価格設定に競争が働きにくくなります。
これにより価格が高くなる傾向があります。
昔にホワイトクラスプといって、歯に引っかけて入れ歯を口の中に維持するのを通常の金属バネではなく歯の色の白い樹脂の材料で作るものがありました。
「面白そう、自分で作ろう」と思ってホワイトクラスプを作製する会社に問い合せたところ、とっくに製造中止になっていました。
一部の医療機関しか提供しない治療法とは、そんなものです。
いつ消えてなくなるかわかりません。
最後に、需要と供給のバランスも関わってきます。
需要が高いけれど供給が限定的な治療は必然的に価格が高くなります。
たとえば美容目的の治療や、最新の再生医療などはこの傾向が強いです。
以上のような理由から自費治療の価格は高く設定されることが多いとありました。
ただし、具体的な価格は地域、治療内容、提供する医療機関によって大きく異なるため一概に言えない部分もあります。
インプラントや流行りのマウスピース矯正などはダンピングして安価を売りにするところも出てきているようです。
安かろう悪かろうはもちろんですが高くても悪くてトラブルもありますので気をつけていただきたく思います。
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