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ローマの神殿、過去への敬意と入れ歯修理について

杉並区西荻窪で入れ歯治療を数多く手がける歯医者
いとう歯科医院の伊藤高史です。

紀元100年ころにヨーロッパ全土を支配していた古代ローマ帝国。
その皇帝ハドリアヌスに仕えていた温泉技師のルシウスは時々タイムスリップし現在の日本の温泉にやってくる。

映画にもなった大ヒット漫画「テルマエ・ロマエ」(ヤマザキマリ著、エンターブレイン)のあらすじです。
舞台はさびれた観光ホテルです。

古い温泉宿や施設を取り壊して巨大な観光リゾートにしようという企みを聞いたルシウスは

「歴史や伝統は、金銭で購えるような薄っぺらい物ではないのだぞっ!」
と怒る。

元の古代ローマでも荘厳な建築物を壊して新しくする動きが盛んになっていて、風紀の乱れを嘆いていたからです。

新しくした結果、風紀が乱れているのは歯科業界も同じです。

「新しく入れ歯を作られたのに上手くいかない」

そんな話をよく聞きます。

そんな時に私は
「作られる前の古い入れ歯を持ってきてください」
と言います。

当院は入れ歯修理を得意としています。
新しい合わない入れ歯よりも、これまで長年使ってきた古い入れ歯を調整修理した方が上手く使えることも多いです。

これまで長年使ってきた入れ歯とは、何年という歴史や伝統が積み重なっています。

何度も修理調整、歯グキの粘膜と接する面に歯科専用の安定材を貼りつけてあるなど、他院でも丁寧に扱われた入れ歯を見ると
「おおっ、美しい入れ歯だ」
とつい見入っていまうことがあります。

見た目はツギハギだらけで茶渋みたいなものがこびり付いていても美しいんです。

逆に使えない最新のピカピカした金属床、不気味な艶のシリコン入れ歯などを見るとその「醜悪さ」に目を背けてしまうことがあります。

あんな素晴らしい物を捨てて、合うかどうかもわからない新しいものを作るなんて私にはできません。

その気持ちは、ローマに例えると歴史的建造物のコロッセオを壊してショッピングモールを建てるようなものです。

ローマをグーグルで検索したところ、さすがに〇オン、ジャ〇コ、西〇、ア〇レ、〇K(伏字になってませんが…)などはありませんでした。
おみやげも買えるし便利と思いますけどね。

定期的な入れ歯調整メンテナンス。費用は保険治療3割負担の方で総額約2,000~3,000円

温泉技師ルシウスはタイムスリップした日本の温泉からアイデアを得て、老朽化しさびれた温泉を立て直していきます。

建て直しではなく「立て直し」です。

*「立て直す」と「建て直す」の違いについて
新聞界はほぼすべての社が「建て直す」は建築物について言う、として、そのほかの場合は「立て直す」を使うことに決めています。

幼少の頃ルシウスは祖父から
「素晴らしい建造物とは何か?」
について教わります。

「素晴らしい建造物とは人間が一所懸命造った立派な建物だと思います。」
ルシウスが答えると祖父は、それは違うぞと言い

「素晴らしい建造物とは人間の力だけでなく『時間』が仕上げてくれた建造物のことだ」
と教え

「人間と時間の創造物である先祖からの建造物を大切に受け継いでいく…補修や保護も建築家にとっては大切な役割なのだルシウスよ…」
と諭し

「これは代々、建築業に携わってきたモデストゥス家の考え方だ、ルシウスよ」と結ぶ。

これはまったく歯科医師の施す治療も同じです。

「素晴らしい入れ歯とは、どんなものだと思うかね?」

素晴らしい入れ歯とは歯医者が一所懸命造った立派な入れ歯だと思います。

「それは違うぞ」

「素晴らしい入れ歯とは歯科医師の力だけでなく『時間』が仕上げてくれた入れ歯のことだ」

これは当院の祖父、父、私と代々、入れ歯治療に携わってきた、いとう歯科医院の考え方です。

調整や修理をして入れ歯を補修、保護することも歯科医師の役目です。

ゆるい入れ歯には保険治療で歯科専用の入れ歯安定剤を貼る治療ができます

古くて不便になった部分も修理調整で「立て直す」ことが可能です。

コロッセオなど壊してしまったらその2000年の積み重ねは、お金を出しても購えるものではありません。

さすがに入れ歯は2000年使える必要はありませんが10年使い続けた入れ歯を作りかえるのは相当な勇気が必要と思ってください。

漫画の中の文章で作者は述べています。

「過去への敬意というのは、人の気持ちを謙虚にさせると同時に生産的な気分にもさせてくれるものです」

入れ歯治療もそのような歴史への敬意が必要です。

そしてそれを修理調整する治療とは、噛む力を復活させて人間を活かす生産的なものと信じています。

さらに作者が私たちに勧めるのが
「古代の偉業に触れること」。

それによって新たなルネッサンスが生まれるかも知れません、と結びます。

ルネッサンスとは「再生」「復活」などを意味するフランス語で一義的には古典古代(ギリシア、ローマ)の文化を復興しようとする14~16世紀ころの文化運動です。

当院で目指す治療とは入れ歯の「再生」「復活」。

入れ歯修理とは、まさに入れ歯のルネッサンスなのです。

ルネサンス時代を代表する芸術家にミケランジェロ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエロなどがいます。

私は結婚してすぐに新婚旅行でイタリアへ行きました。
その芸術の数々に圧倒されたのを今でも鮮明に覚えています。

当院も古代ローマの偉業とルネッサンスの天才たちにあやかって、入れ歯治療で至高の御業を身につけたいものです。

金属床入れ歯の長所と欠点

金属床入れ歯は、標準的な保険治療で用いられるレジン(プラスチック)床入れ歯に比べて多くの利点を持つ一方で欠点もあります。
以下にその長所と欠点を書いていきます。

長所:

耐久性と強度:
金属はレジンに比べて非常に強く、耐久性があります。
そのため入れ歯が壊れるリスクが減少し長期間にわたって使用可能です。

…という論調は一般的で多くの歯科医院のホームページなどで見かけるものです。

しかし保険治療のプラスチック製入れ歯でも金属の補強線や金属床みたいな補強床を埋め込むことができます。
だからケタ違いな金額などかけなくても強度に優れた入れ歯を作ることが可能です。

薄さと軽さ:
金属床はレジン床よりも薄く作ることができるので口腔内での違和感が少なく快適性が向上します。
また軽量で装着感が自然です。

これはそうかもしれませんが入れ歯とは年月が経つとアゴの粘膜と誤差が出てきます。
アゴの粘膜は生きている体なので当然そうなる、という程度の常識的な話をしているに過ぎません。

その新たな状況にあわせるために入れ歯と歯グキの接する面(床)にティッシュコンディショナーやリベース材などの裏打ち、入れ歯安定材みたいなものを貼るのは、よく行なう治療です。

そうすると厚さはプラスチック製入れ歯と変わらなくなります。
ですから薄いのは最初のうちだけです。

熱伝導性:
金属は熱を伝えやすい性質があり、食べ物の温度を感じやすくなります。
これにより、食事の味わいが増すことが期待できます。

衛生面:
金属はレジンに比べて汚れが付きにくく、細菌やカビの繁殖を抑制します。
清掃も容易で、口腔内の衛生環境を保つことができます。

これまたよく見かける論調です。

金属部分だけならそうかも知れません。
しかし金属床も半分くらいは赤いプラスチックでできています。
ですから汚れは付きます。

見た目:
一部の金属床義歯では、見える部分にレジンやセラミックを組み合わせることで、自然な見た目を保つことができます。

たとえばセラミックの歯を使うことで汚れは付きにくいし変色もしにくいので、キレイなことだけは確かです。
でもセラミックの人工歯ならではの欠点がたくさんあります。

金属床入れ歯の欠点

費用:
金属床義歯は製造に高度な技術を必要とし、材料も高価であるため、レジン床義歯よりもコストが高くなります。

このような論調はよく見かけるます。
とはいえ金属床入れ歯が高価な理由はひとえに「保険外」だから、というだけです。

保険治療とは論文や治療指針となるガイドラインをもとにルールが決められます。
なぜその治療に対して国が7割とか給付してくれるのか「理由、根拠」があるわけです。

逆に保険治療に入らないということは同じように「理由、根拠」があるわけです。

その理由、根拠をここで書き連ねるのは難しいです。
私も全てを把握して理解しているわけではありませんから。

ただ何もかもが素晴らしくて欠点などない治療法ならば当然、保険治療になるはずです。

「何か理由があるから、こうなっている」

このような考え方は医療のみならず社会生活全般で必要な考え方と私は思っています。

調整の難しさ:
金属床入れ歯は一度作製すると、形状の変更や調整が難しい場合があります。
これはとくに患者さんの口腔環境が変化した場合に問題となります。

多くの歯科医院のホームページなどで、このような欠点は割とあっさりと書かれています。

しかしこのことこそ金属床入れ歯を当院が作らない最大の理由です。

当院での入れ歯治療の症例を紹介する記事でよく、金属床入れ歯が合わないので新しく保険治療のプラスチック製入れ歯を作った話を載せています。

参考にしていただければ幸いです。

アレルギーのリスク:
一部の人々は金属(特にニッケルやクロムなど)にアレルギー反応を起こすことがあります。
ですから特定の金属を使用できない場合があります。

これはありますがレアケースです。

金属の見た目:
金属部分が目立つ、とくに笑った時や話す時に見た目の問題となることがあります。
ただし上にも書いたように、見える部分を工夫することでこの問題を軽減できることもあります。

これは、そのような症例に出合ったことは私はありません。
金属床入れ歯をたくさん扱う歯科医師なら心当たりあるでしょうし解決策もあると思います。

音:
金属床入れ歯は食事や話す際に小さな音を立てることがあり、とくに静かな環境では気になる人もいます。

これもレアケースです。
これらの長所と欠点を考慮すると、金属床入れ歯はとくに耐久性や快適さを重視する患者さんにとって有利な選択肢となり得ます。

しかし費用や調整の難しさ、個々の健康状態(アレルギーなど)も重要な選択の要素となります。

そもそもという話になりますが高額な自費治療を行なうには、あらゆる事柄において「余裕」が必要です。

お金の余裕はもちろんのこと、アゴ、歯の大きさの余裕。
丁寧に治療を行なえば、それなりに回数もかかるので時間の余裕も必要です。
新しい義歯に適応するには年齢的な余裕、精神的な余裕も大事な要素です。

最終的な決定は、歯科医師とよく相談して行なうのが最善です。

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