杉並区西荻窪で入れ歯治療を数多く手がける歯医者
いとう歯科医院の伊藤高史です。
歯医者も時代の飢餓感に感応するセンスが必要となりました。
「『言われてみてはじめてわかりました』とか、『わたしも実はそうだったのよ』という、死角に入っていた心のうめき、寒さ、これがつまり時代の飢餓感です。(中略)
この見えない飢餓にボールをぶっつけて、ああ、それそれといわせるのが歌なんですよ」
「津軽海峡冬景色」(石川さゆり)
「勝手にしやがれ」(沢田研二)
「気まぐれヴィーナス」(桜田淳子)
「ペッパー警部」「渚のシンドバッド」(ピンク・レディー)
「宇宙戦艦ヤマト」(ささきいさお)
など数々の大ヒット曲の作詞を手がけた阿久悠氏の言葉です。
(参考文献:「作詞家入門」阿久悠、岩波現代文庫)
この言葉に、「夫のトリセツ」「妻のトリセツ」など数々のベストセラーを持つ作家、黒川伊保子氏は
「洗濯物をたたみながら観ていたテレビ番組で出会って、胸を打たれ、しばし手を止めて、ぼうっとしてしまった」
とありました。
そしてこのことは映画、アート、著作、そして製品開発など、すべての表現に言えるのではないか。
と述べています。
(参考文献:「不機嫌のトリセツ」黒川伊保子著、河出新書)
読んでいて私もしばし本を読む手が止まってしまいました。
なぜならば
人々がまだ気づいていない
「時代の飢餓感」
に気づくこと。
そしてそんな時代の飢餓感にボールを当てて
「ああ、それそれ」
と言わせること。
これは歯科治療を行なう原点でもあることに自分も気がついたからです。
私は都心のデンタルクリニックに数軒ほど勤めていた時代に
「なんか子どもの頃のお医者さんのイメージと違うなあ」
と思ったものです。
保険治療でも、入れ歯はここまで治る
小学生の時によく中耳炎になっていました。
いつものかかりつけの耳鼻科に行くと
「おお、ターちゃん(私の愛称)また来たんだね」
と先生が簡単なあいさつをして診察。
薬を手渡されて母親が会計。
小銭をチャラチャラと先生に手渡します。
おまけで甘い味がするトローチをいただいて
「せんせい、さよなーら」
と手を振っておしまい。
母を見ても医療費とか気にした様子などなかったですし、ゼロがいくつあるのかわからない自費治療の見積書を耳鼻科医から手渡されたことなどありません。
都心の歯科医院においては百万円の治療を売りこむことが歯医者の主な仕事でした。
なんか歯医者だけ他のお医者さまとやってることが違うんじゃないの?
歯医者に必要なものとは、多少の手先の器用さ、ある程度の勉強ができることは当然です。
しかしそれらより大事なのは「時代の飢餓感」に感応するセンスなのだと阿久悠氏、黒川伊保子氏から教えられました。
脳は経験のない感覚は見えませんし聞くことができません。
脳が「時代の飢餓感」を感知するには「心のうめき、寒さ」を経験し知っていなければならない。
・お金持ちの名家に生まれました
・たっぷりと教育費をかけられた秀才として学生時代を過ごしました
・すこぶる健康で病気知らずでした
・何をやってもうまくいって大人になりました
・挫折? なあにそれ?
そんな育ち方をしたら、時代の飢餓感に感応できないことは明らかです。
残念なことに私を含め歯医者は上記のような恵まれた環境でぬくぬく育つ者がほとんどです。
おかげさまで親には感謝していますが。
とはいえ大学卒業して歯医者になったばかりのころは同じ歯医者である父親のやり方に疑問を感じていました。
・昔ながらのステンレス冠によるかぶせもの
・昔ながらのレントゲンなしの診療
・昔ながらの金属ワイヤーを曲げて作る部分入れ歯の金属バネ(クラスプ)。
大学で習った最新とされる治療と全く違うことをやっていたからです。
それで父に背を向けて、最新とされる歯科治療を修めようと都心のデンタルクリニックに勤めました。
ところが私はそこで初めて患者さんの「心のうめき、寒さ」を目の当たりにすることとなります。
私が感じとった患者さんの心のうめき、寒さとは
「歯医者だって内科とか病院とかと同じ医療なのだから、とにかく保険で治してほしい」
という、しごくもっともな事でした。
都心のデンタルクリニックで勤めるうちに私の心の中に、大金が必要な上に効果に疑問符がつく自費治療への不信感が芽ばえます。
つまり自分も患者さんと同じ心のうめき、寒さを持っていた。
だから感応できた。
そこで
「歯医者も内科や病院などと同じ医療だから、お金の心配なんかしなくて大丈夫ですから」
と言って保険治療を行うことで得られた反応が
「初めて歯医者でそんなことを言われました」
「言われてはじめてわかりました」
「わたしも実はそうだったのよ」
だったわけです。
それが原点となって当院は保険治療で入れ歯修理を特技としました。
保険治療で入れ歯と口の機能検査できます。隠れた不調がわかります
もちろん、これと真逆の考えで高額な自費治療を選ぶ患者さんもいると思います。
「保険治療だと3分治療の流れ作業でやられる。おかしくない?」
「ゴールドやセラミックのほうが良い気がするのに保険治療ではできないの?」
「金ならいくらでも出すからワタシを特別扱いしてほしい」
これはこれで時代の飢餓感ではあります。
だから一人ひとりにたっぷり時間をかけて高額な自費治療を行なう歯医者のもとに通う。
そのことを否定はしません。
どちらが正しいかではなく患者さんがどちらを選ぶかというだけのことです。
とはいえ数軒のデンタルクリニックに勤務したり歯医者のホームページなどを見たりしてわかったのは、多くの歯医者が高額な自費治療をやりたがっていることです。
スマホで検索すると自費治療自費治療自費治療の情報の山に埋もれて、保険治療に関する情報は一般の人からは見えない死角となってしまっています。
「初めて歯医者でそんなことを言われました」
「言われてはじめてわかりました」
「わたしも実はそうだったのよ」
という、まさに死角に入ってしまっている患者さんの心のうめき、寒さ。
そのようなものを拾い上げる視野の広さ、確実に見つける眼力。
時代の飢餓感を患者さんと共に感じて一緒に乗り越えていく姿勢。
もちろん阿久悠氏のように作る曲、投げるボールがみんな、どストライクの大ヒット。
そんな境地に自分が達するのはいつの日になることやら。
黒川伊保子氏が書いているみたいに、ぼうっとタメ息をつきながら見上げるしかないのが現状です。
だからこそ、せめて当院に来てくださる患者さんには、保険治療で入れ歯修理というボールを的確に当てていく努力をこれからも続けていこうと思います。
歯科の自費治療が高額な理由
歯科の自費治療が高額になるのは理由があります。
まず高度な材料と技術とされます。
自費治療では保険診療のように使用できる材料に制限がありません。
より高品質で審美性や機能性に優れた材料や最新の技術が用いられることが多いです。
これらの材料費や設備投資、そして高度な技術を持つ歯医者の専門知識や熟練した技術料が価格に反映されます。
とはいえ制限がないことが必ずしも良いことではありません。
治療方法が保険治療に収載されるには大規模で正確な研究、論文が求められます。
保険治療ならばそのような裏づけがあるわけです。
しかし自費治療に関しては、そのような研究論文は不要です。
だから科学的根拠がないのにテレビやメディアで持ち上げられて有名になったもののトラブルを起こして問題になるケースが後を絶たないです。
そのような問題ある自費治療は学会などで公式に注意を呼びかけていたりします。
一例
「ドックベストセメントについての見解」(日本歯科保存学会)
https://www.hozon.or.jp/file/news/250319.pdf
これからも情報収集して患者さんにとって最善の選択をしていきます。