カテゴリー

・入れ歯が原因!? 60代女性を悩ませた「治らない口角の腫れ」の意外な正体

杉並区西荻窪で入れ歯治療を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。

「これー、いつまでも治らないんですよねー」

伏し目がちにおっしゃるのは60代女性のJさん。
治らないのは口の両端の赤い腫れ。

口の片側だけの口角の腫れと両側の口角の腫れとでは、歯医者が思い浮かぶ病名が違います。
片側だけだと口唇ヘルペスや帯状疱疹の可能性。
ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルスが皮膚や粘膜に感染して引き起こされる病気です。

直接の接触だけでなく、ウイルスがついたタオルやグラスの共有などの家族間での間接接触でも感染します。
大人だけでなく、赤ちゃんや子供でも感染します。
残念ながら薬で完治することが出来ないため、この病気の知識を深めて再発の予防していくことが大切です。

原因

ヘルペスウイルスが唇や唇の周りの皮膚に接触して、粘膜に感染することによって起こります。
直接肌が触れること以外にも、ウイルスがついた食器やタオルを共有することで感染します。
そのため、家族間での感染が多い病気です。
ヘルペスは一度症状が治まっても、ストレスや疲れなどで免疫力が下がったときに、再発を繰り返すのが特徴です。

症状

口唇や口唇の周りがむずむずする、ピリピリ、チクチクと痛みを伴う赤みが出る、水ぶくれなどの症状があります。
唇の周り以外にも、口の中(口内、口腔、舌など)、鼻の下・耳・指・首などの体の一部分にできることもあります。

診断

問診、視診、触診にて診断します。
口唇ヘルペスと同じように、水ぶくれや水泡ができる口唇炎、口角炎、細菌性の口内炎などの病気と間違われることもあります。

帯状疱疹とは異なり、ヘルペスは単純ヘルペスウイルスが原因で、何度も再発し繰り返すことがありますが、帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルスが原因で、一生に一度のことがほとんどです。

治療法

通常は、抗ウイルス薬の飲み薬(アシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビルなど)を5日間使用します。
この薬はヘルペスの症状が出たら、できるだけ早い段階で飲み始めるのが望ましいとされています。
抗ウイルス薬はウイルスの増殖を抑える効果があるため、発症から時間が経ってかさぶたになってしまった段階ではあまり効果が期待できません。

再発の際には薬の効果を高めるために、炎症が出る前でも、ムズムズ、ヒリヒリするなどの前兆を感じた場合、すぐに医療機関にかかるようにしてください。早い段階で抗ウイルス薬を飲むことで、ウイルスの増殖が抑えて炎症を広げずに済ませることができます。
なお、保険診療の関係により、抗ウイルス薬の塗り薬(ビタラビンなど)は、抗ウイルス薬の飲み薬と一緒には処方することはできません。

注意点

ウイルスは、完治後も体に残ります。睡眠不足やストレスなどで免疫力が下がると再発しやすいので、生活に注意が必要です。

参考文献:https://www.shinjyuku-ekimae-clinic.info/

保険治療で入れ歯のヒビを修理

いっぽう帯状疱疹とは子供の頃に罹患した水痘(すいとう)、すなわち水疱瘡(みずぼうそう)のウイルス(VZV=varicella-zoster-virus)が再活性化することで発症する病気です。

VZVは水痘が治癒した後、皮膚にのびてきている知覚神経を伝って、背骨に付随している神経根(脊髄後根神経節)にたどり着き、潜伏します。
水痘にかかったことがある人は全員、その状態になっていると考えられます。

水痘に対する免疫が完成すると二度と同じ病気を発症することはありませんが、先に挙げた要因などによって一部の免疫(メモリーT細胞という水痘を記憶しているリンパ球)が低下すると、それまで眠っていたVZVが目覚め、神経を壊しながら増殖していくのです。

症状の現れ方には次のような特徴があります。
体や顔の左右どちらかに、ピリピリ、チクチク、ズキズキといった神経痛が生じる(痛みの感じ方は個人差が大きい)。
数日後、痛みのある部位に赤い発疹が出てくる。

初期段階では「虫刺され」「小さなおでき」「かぶれ」のように思われることが多い。
進行すると発疹が小豆大くらいの水ぶくれになり、体や顔の片側に、帯状になって広がる。
水ぶくれはやがて破れてただれ、かさぶたになる。

帯状疱疹の発症率は50代から高くなり、年代が上がるにつれて増加する傾向にあります。

参考文献:サワイ健康推進課https://kenko.sawai.co.jp/theme/202104.html?utm_source=google&utm_medium=cpc&utm_campaign=suishinka&utm_content=2210-3

口角に症状を起こす病気の代表例ですが今回は両側の口角の腫れですので却下。

両側の口角に腫れを起こす病気の代表例としてはカンジダ症があります。

口の中には常在菌といって誰にも必ず多くの菌がいます。
その中で、良く知られているのは、虫歯の原因菌と歯周病の菌です。

その他、カンジダ菌というカビの一種がいます。
この菌は普段は特に悪さをすることもなく静かにしているのですが、口の中の環境の悪化に加え、全身の状態の変化で症状が現れることがあります。

たとえば、入れ歯を長期に使っている方、入れ歯や口の手入れが不十分の方、唾液の分泌が低下した方、高齢者、また、ビタミン欠乏症、免疫抑制剤や、抗菌薬の治療を受けている方も注意が必要です。

症状としては、口角がただれたり、舌に白い苔のようなものができたり、上あごの入れ歯のあたっている粘膜が赤くなったり、ぶつぶつが出たりします。

口の中にとどまらず、放置したり悪化したりすると肺炎の原因になったりします。確認の方法は、歯科医師が視
診できますし、簡単な検査もできます。

検査方法は、唾液を採取し、特殊な容器に入れて短期間培養します。
予防の方法は、口や義歯を清潔にすること、義歯は洗浄剤につけること、舌磨きをすること、古い義歯であれば作り変えること、などがあります。
義歯の洗浄剤は、カンジダ菌に効果が期待できると書いてあるかどうか確認して購入してください。

また、義歯の清掃の際は、硬いブラシを使用せず、義歯の表面を傷つけないよう
心掛けてください。
傷がありますと、そこから菌が義歯の中に入りやすくなります。

治療の方法は、抗真菌薬でうがいしたり、お口に塗ったり、内服したりします。
自分で鏡を見て口を覗くことは難しいので、歯医者にチェックしてもらうことが大切です。
この抗真菌薬は服用が難しく副作用や他の薬と飲み合わせに注意が必要だったりします。

参考文献:広報つちうら お知らせ版 2013.6.18
https://www.city.tsuchiura.lg.jp/data/doc/1371531973_doc_147_9.pdf

保険治療で入れ歯の調整

……ここまで書いておいて難なのですが今回のJさんはカンジダ症でもありませんでした。

なぜなら皮膚科で検査を受けていてカンジダ症ではないと、すでに診断が出ているからです。

それでは口の両端のしつこい腫れ。

原因は何か?

ズバリ「入れ歯」です。

上は総入れ歯を使っているJさん。
当院で作ったのではないのですが入れ歯の調子自体は良好です。

痛くもないし食事も普通にできるし。
なかなか入れ歯を新しく作るタイミングがないままでした。

しかし何年にも渡って使っていたもののここ1年で壊れて2回修理したのをキッカケに新しく作ることに。

模型を作ってふと気づいたことがありました。
それは上の前歯が極端に前に出っ張っていることです。

一般的に入れ歯で前歯の歯並びを作るときには上下の歯が1ミリ程度重なりギリギリ接するように並べるのがオーソドックスです。

しかしJさんの入れ歯は上の前歯が下の前歯より5ミリ~1センチほども前方に出っ張っています。
そのせいで上の口唇が前方に引っ張られて口角を物理的に刺激していた可能性が高い。

あなたにもやっていただきたいのですが、上のクチビルを指でつまんで前に引っ張ってもらうと口角も引っ張られるのが分かると思います。
この刺激が24時間加わっていたら口角も腫れるでしょう。

そこで上の前歯の並べ方を工夫しました。
とはいえこれが実は難事業。

保険治療でも、入れ歯はここまで治る

なぜならJさんは上アゴ自体が前に出っ張っている骨格だったからです。

確かに上アゴの形に素直に従って入れ歯を作ったら下の歯よりも1センチ前方に出た今回のような歯並びになるのは分かります。
そこで上の前歯を下の前歯と接するように無理やり引っ込めた歯並びにしました。

どうしても上アゴの骨がジャマをするので入れ歯用のプラスチック製人工歯を3分の2ほどの長さになるまでガンガン削る必要がありました。
こんな歯の並べ方は外注の歯科技工所ではやってくれません。

「そんなのやった経験がない」
「そんなの教科書に載ってない」
と言われるのがオチです。

とはいえこのような難しい入れ歯を扱うのは当院では日常茶飯事。
だから当院では歯医者が自分で患者さんの入れ歯の歯を並べます。

もちろん難しくない入れ歯が大半です。
そんな症例なら外注、丸投げしてもいいのですが、普段から手を動かしていないと今回のような難しい症例に対しても結局は手が動かなくなってしまう。

このことこそ私は恐れているのです。

そのような理由で歯グキにめり込んだような前歯の歯並びになりました。

しかしJさんは笑っても上の前歯があまり見えない口の形なので実は影響ありません。

完成した入れ歯を入れて2週間後に来院したJさん。
両側の口角の腫れはすっかり引いていました。
身内の方にもすぐに変化がわかって、みんなで喜んだと笑顔で報告してくださいました。

このような治療は、まさに歯医者にしかできないことです。

しかも入れ歯の歯を歯医者が自分で並べるからこそ治療できました。

これからも技術を磨いて患者さんに貢献いたします。

【関連記事】→入れ歯の違和感「Q.違和感のない入れ歯がほしい。そんな希望は叶いますか?」