住宅金融支援機構は、新型ウィルスCOVID-19の影響で「住宅ローン破綻」が急増していると報じています。
ところが不動産の情報誌によると、新型ウィルス影響下でも新築分譲マンションの購入者は減っていません。
なぜこの時期にマンションを買う人が激増しているのでしょうか。
リモートで仕事をする人が増え、小さなお子さんがいる人は別の部屋が必要になったなど様々な理由があがっていますが、いろいろ調べてみると購入にはふたつの大きな魅力があることがわかりました。
ひとつは超低金利の住宅ローンが利用できること。
もうひとつは超大型の住宅ローン減税です。
新型ウィルスCOVID-19終息後の増税リスクはだれもが予測しているように給付金や補償金が多く出されたため、今後の増税は避けられそうもありません。
そうなったときは賃貸暮らしでは得られない住宅ローンの減税はとてもありがたい。
そこで賃貸からマンション購入へ切り替える人が増えているそうです。
歯科医師と同じく不動産業に従事する人たちも常に最新情報にアンテナを張っておく必要がありそうですね。
不動産の情報誌を見ていたら「レジリエンス住宅」という言葉が目にとまりました。
「レジリエンス」とは英語で「復元力、回復力」という意味です。
近年の日本は地震、台風、ゲリラ豪雨が多く、被害の規模も大きくなり、2018年は大規模自然災害が多発しています。
7月3日から8日にかけて台風7号の接近が梅雨前線の停滞と重なり、西日本や東海地方の非常に広範囲で長時間の記録的な大雨で河川の氾濫や浸水害、土砂災害が多発し、死者数が 200人を超える平成最悪の豪雨災害となりました。
6月18日の大阪府北部地震では、大阪府内で死者6名、2府5県で負傷者 462名、住家の全壊 21棟、半壊 483棟、一部破損 61,266棟の被害が出ています。大阪府内の約17万250戸が停電。
9月6日の北海道胆振東部地震では、強い揺れによって厚真町を中心に広い範囲で土砂崩れが発生して家屋の下敷きになるなどの被害が出ました。
いずれの災害でも電気やガスや水道などライフラインの寸断に直面しています。
そうした命に関わる状況からいち早く生活を復元できるように工夫を凝らし、災害対応力を強化したのがレジリエンス住宅です。
・防災備品倉庫
・停電時でも共同使用できる非常用電源
・太陽光発電での蓄電システム
・非常時にも情報提供できるテレビの設置
など、ひと工夫した付加価値のある賃貸住宅の提案が相次いでいます。
最初にレジリエンスという言葉と出会ったのは育児の本です。
逆境にあったり失敗したりしてもまた前を向いて歩き出すことのできる「レジリエンスのある子どもに育てるための教育」について書かれていました。
このレジリエンスという考え方は入れ歯の修理にも当てはまります。
保険治療のプラスチックの入れ歯は「レジリエンス」のある入れ歯だと言えます。
真っ二つに割れても、部分入れ歯を歯に引っかけるバネが折れても、残っている歯が抜けてしまったとしても、半日で修理して歯並びを回復、復元することができます。
ところが自費治療のインプラントやセラミックのかぶせものや金属床の入れ歯となるとそうはいきません。
たとえばインプラント周囲炎に罹患してインプラントがグラグラ揺れ始めるという症状ですが、インプラントの実に半分近くに起こるとのデータもあるのに、その揺れを止める方法はありません。
これはマンションを建てたら地盤がゆるい上に基礎工事に不備があって、マンションごと傾いてしまったようなものです。
また自費治療でよく使われているセラミックのかぶせものは歯との接着力が弱く、脱離したら再接着が難しい材料です。
材質が硬すぎるため咬み合わせの調整が困難で、歯に不自然な力が加わり土台の歯の根が折れる元凶となります。
根が折れた歯は抜くしかありません。
当院でもセラミックの歯をやむなく抜歯して入れ歯にした症例が数多くあります。
自費治療の入れ歯でも、保険治療の入れ歯でも、いずれも長年使っているとアゴと合わなくなり、ゆるくなってきます。
そのため食べ物のカスが入れ歯に入り込んでしまったり、口を開けると入れ歯が外れやすくなったり、噛むと痛くなるなどの症状が出てきます。
そうなったときに保険治療のプラスチックの入れ歯なら、ティッシュコンディショナーやリベース材など歯科専門の入れ歯安定剤で簡単に調整することができます。
ところが自費治療の金属床入れ歯だと安定剤が接着してくれないので満足のいく結果が得られません。
保険の入れ歯なら安定剤を貼って1日で治療が終わるのに、自費治療の入れ歯だと何回も通って結局イチから作りなおすことになってしまいます。
あまり想像できないかも知れませんが、口の中とは地震大国日本も真っ青の過酷な世界です。
唾液の海に深く沈んでいます。
咬む力は毎日震度7の地震が起きているようなもの。
虫歯や歯周病の原因菌による攻撃も忘れてはいけません。
口の中は毎日が津波、地震、戦争の世界です。
そこで求められるのが「レジリエンス」のある入れ歯です。
当院でインプラントなど自費の施術をしないのは、このような非常事態に対してのレジリエンスが全くないからです。
先ほどの例に挙げたような傾いたマンションを真っ直ぐに戻して地盤を強化する方法など存在しません。
建てた会社は、そんなこと考えてもいなかったでしょう。
マンションを建てかえとなると大変でしょうが、口の中もインプラントの除去となると大変な手術になります。
しかも除去後はアゴの骨が薄くなってしまうので、インプラントどころか入れ歯を入れることすら難しくなることがあります。
タワーマンションの最上階からシャンパングラスを片手に下界を見下ろす生活も悪くはないのでしょうが、災害時に水や洗面、電気やエレベーターが使えなくなった話が報道されたことで、そのレジリエンスのなさが露見しました。
インプラントなど自費の施術とは、そんな見栄えは立派なもののレジリエンスの全くないタワマンのようなものです。
自然災害が年々大きくなる中でレジリエンスをテーマにした住宅は今後も進化するだろうと書かれていました。
当院の治療はインプラントやタワマンのような派手さはありませんが、価格が適正で非常時に強いレジリエンスある保険の入れ歯治療をこれからも進化させていきます。
参考文献
・家主と地主2020年8月号/株式会社全国賃貸住宅新聞社
・「マンション格差」榊淳司著/講談社現代新書
・野村総合研究所/News Release/2015年6月22日
・住宅金融支援機構/プレスリリース/2020年12月
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