西荻窪、入れ歯専門のいとう歯科医院、伊藤高史です。
オルタナティブブログに記事を載せました。
85年の実績とともに受け継がれてきた義歯修理の技術↓
https://blogs.itmedia.co.jp/ito_takafumi/2022/02/85.html
ホームページ掲載すみ
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西荻窪、入れ歯専門のいとう歯科医院、伊藤高史です。
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「私、中村哲先生みたいな医師になりたいんです」と瞳を輝かせていた ↓
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西荻窪、入れ歯専門のいとう歯科医院、伊藤高史です。
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あなたにとって最適な歯科医の選び方↓
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「いとう君、レーザーお願いね」
歯科大学を卒業して1年目の私が、毎日午後3時に指導医から声をかけられる仕事。
それは入院している患者さんの顔にレーザーを当てる治療でした。
歯科医師になったばかりのころ、国営の病院に勤務していました。
その中で3か月間、歯科ではなく医科の麻酔科で研修を受けたことがあります。
ガンや脳腫瘍など外科手術の全身麻酔を指導医の監督の元で行いました。
器具の準備やアシスト、点滴や採血、肺に酸素や麻酔薬を送る管を口から入れる気管内送管も教わりました。
手術中に必要な薬を血管から注入したり血圧や血中の酸素濃度を5分ごとに記録したりする患者管理は麻酔科の役目。
安全で正確なオペのために一瞬たりとも気を抜くことはできません。
多くのオペに立ち会い、医師として人の体を管理する大変さや尊さを学びました。
とても貴重な体験でした。
麻酔科にはもうひとつ重要な役割があります。
痛みの治療です。
たとえば頭や首の痛みに対して、首の神経に麻酔の注射をする星状神経節ブロック治療は麻酔科の分野です。
そして星状神経節ブロックと併用して、顔の神経にソフトレーザーをピンポイントで照射する治療も麻酔科が担当します。
1か所に3分間のレーザー照射をしたら1分間機械を休ませます。
この処置を10か所ほど行います。
単純な作業ですがひとりの患者さんに40分ほどかかります。
はじめは指導医と一緒だったレーザー治療ですが、いつの間にかひとりで病室に行くようになっていました。
もしかしたら、私など全身麻酔の足手まといになるだけなので、レーザーなら重大な危険もないからできるだろうという配慮(厄介ばらい)だったのかも知れません。
今となっては確かめようもありませんし、歯科大学を卒業したばかりの未熟者に仕事を与えてくださるだけでもありがたいことでした。
レーザーを当てる40分間は患者さんにつきっきりです。
何日か治療を続けていくうちに70代女性のUさんと仲良くなり、いろいろと雑談を交わすようになりました。
教員をしていた話や、離婚を経験したり、親の介護に忙殺されたり、子育てで苦労した話を聞いていると時間の経つのが早かった。
年末、いつものように病室に入ると部屋の真ん中に大きなみかん箱が置いてありました。
Uさんは私の顔を見るとニッコリ笑って「先生にあげるよ」と、みかんを一箱プレゼントしてくれたのです。
治療を終えて、両手で抱えて持ち帰って麻酔科のみんなで分けました。
「いとう君はすごいね」
面倒見がよくていつも的確に指導してくださる指導員のM先生は箱からみかんを取り出すと、私をほめてくれた。
尊敬しているM先生に突然ほめられて戸惑いを隠せなかった。
いったい何をほめてくれたんだろう。麻酔の腕でないことだけは確かです。
実は、M先生はレーザー治療の時に患者さんと話すことがないからと、レーザーの機械を休ませる1分間のたびに病室の外へ出ていたそうです。
毎日40分も話すなどM先生は想像もつかなかったとのことでした。
「君は臨床に向いてるよ」
臨床とは直接、患者さんと対面して診察や治療を行うことです。
あの日のM先生の言葉を今でもハッキリ覚えています。
大学を卒業したばかりの新米の歯科医師には自信はなかった。
現場に出ると教科書と臨床はまったく違います。
思ったようには手が動かないこともありました。
自分では気がつかないミスを指摘され、そのたびに「なぜこんなことで怒られるんだろう」と何もできずに打ちひしがれる日々を過ごしていました。
私は医者に向いていないかもしれない。
そんな状況の中で言われたM先生の「君や臨床に向いているよ」の言葉は心が折れそうだった自分にとって大きな支えになっていました。
あれから20年以上の月日が経ちました。
M先生の言葉どおり、歯科医師として患者さんと顔を合わせる臨床の日々はとても楽しく幸せです。
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→担当医について
3歳のパスカル・ミュサールはエルメスの工場が遊び場所でした。
エルメスは品質管理が厳しく、ほんの少しの傷があっても商品にはなりません。
また傷もないのに別の理由で長いこと眠ったままの物もあります。
馬具、ベルト、スカーフ生地の端切れ、ボタン、ピン、ガラス……。
在庫の山を前にしたパスカルの胸は踊った。
「私にはあれが本当の宝箱だと思えたの」
「どれを見ても処分するのがつらいほど美しい」
「なんとか工夫して、もう一度命あるものにできないかしら」
そんな志を胸に働きはじめたパスカルはエルメスの工房で気がつきました。
「素敵なものを輝かせたい」
ロベール大伯父さまが作ってくださったペンダントみたいに……。
パスカルはエルメス一族の一員として生まれました。
当時3歳だった彼女は、その後エルメスで独創的な試みを成功させます。
その原点は、彼女が10歳の時に大伯父の4代目社長ロベールが作ってくれたペンダントです。
ロベールは幼いパスカルを川原へ遊びに連れて行き
「パスカル、好きな石を選んでごらん」
川原で拾ってきた石を工房に持ち帰って丁寧に磨きあげ、自身がデザインした止め金具を飾りつけて美しいペンダントに仕上げました。
生まれ変わったペンダントの美しさに心を奪われているパスカルに
「どんな素材にも価値がある。それを選んで輝かせる気があればね」
とロベールはやさしく語りかけました。
パスカルは21歳でエルメスに入社。
50歳になったパスカル・ミュサールは、10歳のころからずっと心にしまっていた「素敵なものを輝かせたい」という夢を実現するために心の扉を開けるときがきました。
エルメスの棚にだれにも知られず眠っているきれいな宝物を、元の形を忘れるほど工夫して人々を魅了する品々に姿を変える決断をくだし、ジュエリーデザイナーと協力して100個もの試作品を創りました。
そしてティーカップの破片に柄をつけた小物入れや、ハイセンスなポンチョ、ピアス、ブローチなど独創的な商品をエルメス執行役員会議でプレゼンテーションをして見事に商品化しています。
これらのコレクションをなんと呼んだらいいのか。
パスカルは、エルメス自体を大文字の「H」としたら、これらは小さなh(アッシュ)という意味で「petit h(プティアッシュ)」と名づけることにしました。
プティアッシュは2010年11月にパリのフォーブル店で初めて販売を行い、大好評を博しました。
そこに流れている思想は大伯父ロベールがパスカルに教えた「この世に価値のない素材はない」です。
それを読んで、ふとページをめくる手が止まり、頭の中にすーっと次の言葉が浮かんできました。
「この世に価値のない入れ歯はない」
患者さんの歯ぐきがやせてきて合わなくなった入れ歯でも、たとえ壊れてしまった入れ歯であったとしても歯科医の技術でよみがえらせることができる。
川原の石のようなそのままでは宝物にならなかったものに新しい視点で職人の技術を加え、あらたな価値を生み出すエルメスのプティアッシュのように。
それはまさに当院の入れ歯修理に対する姿勢そのものです。
・真っ二つに割れた入れ歯に補強の金属線を入れて修理する。
・歯が抜けた部分にプラスチックの人工歯を入れ歯に継ぎ足して増歯修理する。
・部分入れ歯を支える金属のバネが折れても型を採ってバネだけを新しく修理する。
・合わない入れ歯でも歯科専用の安定材ティッシュコンディショナーを貼って安定させる。
たしかに使えない入れ歯を捨ててしまうのは簡単でしょう。
しかしそのままでは使い物にならない入れ歯を、歯科医師の技術を加えて使える入れ歯に生まれ変わらせる。
こうすることで新しく入れ歯を作るよりも低リスク、低コスト、短時間で口の機能を回復できます。
エルメスの社長ロベールは私に大切なことを教えてくれました。
「どんな素材にも価値がある。それを選んで輝かせる気があればね」
この言葉をそのまま歯科医師の私に置き換えてみると
「どんな入れ歯にも価値がある。それを選んで輝かせる気があればね」に相当します。
使い捨てなどムダの多い現代に、素材を最後まで大事に使いきって輝かせる。
私が小さい頃は概念すらなかった、SDGs(エスディージーズ/持続可能な社会)の実現という、地球の将来を見据えた新しい未来へのアプローチにも見事に合致しています。
フランス革命や2度の世界大戦、不況の嵐を乗り超えて今でも新しい発想で物を作り出すエルメス。
エルメスは創業180年を超える老舗にも関わらず、まだまだ勉強と進化をやめるつもりはなさそうです。
エルメスと同じように「なんとか工夫して、もう一度この入れ歯を命あるものに輝かせることができないか」
「すべての人に健康と福祉を、あらゆる年齢の人の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」
いとう歯科医院は入れ歯を見て、まずはそう考えます。
数あるSDGsの項目の中でもとくに医療と関係が深いこの部分の実現のため。
エルメスのプティアッシュを見習って、保険治療の入れ歯修理の勉強と進化を続けていくつもりです。
参考文献:
「エルメスの道」竹宮惠子著、中央公論新社
【関連記事】→「保険治療についての取り組み」