杉並区、西荻窪で、保険の入れ歯治療を数多く手がける、いとう歯科医院の伊藤高史です。
オルタナティブブログに記事を載せました。
「推しの子」ユーチューバーMEMちょから学んだ、入れ歯修理のプロの仕事↓
https://blogs.itmedia.co.jp/ito_takafumi/2025/02/mem.html
ホームページ掲載 すみ
杉並区、西荻窪で、保険の入れ歯治療を数多く手がける、いとう歯科医院の伊藤高史です。
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杉並区西荻窪で、入れ歯修理を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。
私たちは平和な内戦の中で、どう生き残ればいいか その2の1
https://ireba-ito.com/2025/01/29/ito-208/
の続きです。
確かに今から思い起こすと師匠先生のおっしゃる通りでした。
勉強して経験を積んだ歯科衛生士のほうが余程うまいに決まっています。
私のその「できると思っていたこと」とは歯科医師としては、まったく取るに足らないことだったのです。
乱世の歯科業界を生き抜くには全く不十分でした。
とはいえその後にご縁があって、次に勤務した大手の歯科医院で毎日診療後に3時間の技工作業をして入れ歯修理の技術を身に付けました。
その歯科医院ではみんなが技工をするわけではなく、みんなが定時で帰るのを横目に私だけが技工室にこもっていました。
なぜ私だけが技工を教わることが出来たのかはわかりません。
「キミはいったい何ができるの?」
今そう聞かれたら
「ワイヤークラスプ両翼鉤を屈曲できます」
「どんなに壊れた入れ歯でも一時間で修理できます」
と瞬時に言い返せます。
入れ歯を歯に引っかけるバネ(クラスプ)を作る技術のことです。
「修理するには入れ歯を一週間預からないとできない」
「この入れ歯を再び使えるようにすることはできない」
「大金をかけた自費治療の他に治す手段はない」
そんな非情な宣告を歯科医からされた入れ歯を、この修理の技術でいくつも復活させてきました。
このように乗り越えるきっかけを作ってくださった理事長先生、師匠先生には感謝しなければならないのかも知れません。
「感謝しています」と言い切れないあたりに自分の心の未熟さを感じます。だって人間だもの。

それからさらに20年の時が経って当院での話です。
ある患者さんが企業検診で、たまたま私が昔に勤めていた都心のデンタルクリニックを受診したと言います。
その患者さんは私が修理した入れ歯を使っていました。
企業検診で治療の不備を見つけたらそのデンタルクリニックで再治療します。
「○○院長から言われたんだけどさあ」
患者さんは昔なつかしい院長先生の名を挙げて言います。
「これだけのことができるなら、かかりつけの先生にお任せしたほうがいいってさ」
院長先生は、まさか入れ歯修理したのが私だとは思わなかったようですが、まったく入れ歯に手をつけていませんでした。
なんだか20年ごしにリベンジを果たした気分です。
「どんなに壊れた入れ歯でも一時間で修理できます」
ようやく
・人から必要とされる
・人を助けることができる
・人に大切にしてもらえる
そんな技術を身につけることができたと確信する出来事でした。
人がマネできない唯一無二の技術があって生き残っている会社は例を挙げ始めたら枚挙にいとまがありません。
アメリカのGoogle、Apple、Microsoft、Facebook、Amazonなど世界的な企業は他の企業がマネできない技術の積み重ねです。
自分が学生の時代にはパソコンがまだほとんど存在しませんでした。
自分の学生時代には想像もできなかった、未来を見せてくれる技術には「えっ、マジですか?」と言うしかありません。
そしてそんな「えっ、マジですか?」の技術が世界を、歴史を変えていく。
ちなみに子育てとは
「えっ、マヂですか!」
の連続とわかりました。
強調するためにあえてチに点々にしています。
私の子どもは一輪車が得意です。
後ろに漕ぐ、その場でバランスを取るアイドリング、ペダルでなくタイヤを足で操って進むタイヤ漕ぎなど多彩なテクニックを誇ります。
手すりにつかまって座ることさえできない私には「えっ、マヂですか!」という技術の持ち主です。
乗り回していると見物の人だかりができるのも納得です。
またトランプのマジックが得意です。
ランダムなカードを私が1枚引いて適当に山の中に戻す。
子どもが何やら呪文を唱えてトランプの山を広げると何故か私の選んだカードだけが裏返っている。
まるでテレビのマジシャンのような手つきには「えっ、マヂですか!」と驚くしかありません。
他には子ども向けの教育雑誌にイラストやネタを投稿するのが好きです。
「えっ、マヂですか!」
という内容が採用されたりします。
今の世の中は何がウケるか分かりません。
全国誌に子どもの名が載るというのは親も誇らしいものです。

「ママの○○! ○○○! ○○○○!」
ここに書けないような言葉でケンカすることがあります。
そんなしょうもない理由で「えっ、マヂですか!」と驚くこともありますが少なくとも私の小学生時代よりずっとたくましく見えます。
親バカですが自分の子に、戦国時代でも生き残れる萌芽のようなものを感じました。
群雄割拠の世の中で物を言うのは、三国志の天才軍師、諸葛孔明のような知力や裸一貫から皇帝に上りつめた劉備のような人徳も大事ですが結局は「武力」です。
実際に古今東西の歴史を見ても最終的には武力で決着をつけています。
「キミは何ができるの?」
そんな失礼かつ的確な攻撃に対して瞬時に一刀両断する技術は闘う力になります。
西荻窪駅前50軒の中に埋もれずに輝くことができます。
物やお金は失ってしまいますが身につけた技術は失われない。
この「身につけた技術は失われない」という言葉には原典があります。
それは私が20年以上習っている太極拳の総本山、台湾の師範がおっしゃっていた言葉です。
「武器ヲ持ッテモ飛行機デハ取リ上ゲラレテシマウケド、身ニツケタ技術ヲ取リ上ゲルコトハデキナイカラ、ミンナタクサン練習シテクダサーイ」
カタコトの日本語を懸命に使って話される師の言葉は今でも自分の支えとなっています。
歯科医師という肩書きがあればみんな分かってくれる、それはもはや幻想です。
昭和の時代までは歯科医院の看板さえ出せば患者さんがたくさん来てくれました。
しかし今どきは看板だけ出しても西荻窪駅前50軒の山に埋もれてしまうだけです。
実は「自分は歯科医師です」と自己紹介で名乗るのに少し恥ずかしさを感じます。
「もしかして偏差値30未満?」
「コンビニより多くて大変ね」
「医療界の負け組乙」
とかネガティブに思われているように感じるからです。
今どき歯科医師を名乗ったくらいでは誰も尊敬してくれないことくらい私にもわかります。
近年は歯科医師に限らず
「えっ、マヂですか!」
のハードルがどんどん上がっています。
ずっと昔はサラリーマン=エリートでした。
大学生=末は博士か大臣かと言われていました。
今は誰もただのサラリーマン、大学生に「えっ、マヂですか!」とは言いません。
業種を問わずそんな時に物を言うのが
「えっ、マヂですか!」
の技術です。
私の子どものように自分も小さな事から始めました。
「えっ、マヂですか!」と言われるような骨太なプラスアルファの技術を身につけて世界へ堂々と討って出れば日本の未来はまだまだ明るい。
もっとも勉強、努力をやめてしまったら、せっかくの技術も「ふ~ん」と軽く流されてしまうでしょう。
「えっ、マヂですか!」と言ってもらえるような入れ歯修理の技術をこれからも磨いていきます。
【関連記事】→いとう歯科医院の歴史
西荻窪、保険の入れ歯治療を数多く手がける、いとう歯科医院、伊藤高史です。
オルタナティブブログに記事を載せました。
入れ歯の咬み合わせを修理して、咬み切れるようにする治療を行ないました↓
https://blogs.itmedia.co.jp/ito_takafumi/2025/01/post_189.html
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杉並区西荻窪で入れ歯治療を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。
「家族を守る」
そんな言葉を耳にします。
とくに震災や凶悪事件などの後に耳にする機会が増えるように感じます。
もっとも戦争しているような国なら現実味がありますが、日本は治安が良く技術が発達し食べ物など余っているくらいです。
それなのに震災や事件に関係ないみんなも必死に働いて家族を守らなければならないのは何故なのでしょうか。
20代の時に都心のオフィスビル内で勤務医をしました。
そこは同じ場所で開業したかった別の歯科医から、手続きの不備を告発されて長年争っていました。
結局は管轄省庁の指導が入り撤退することになりました。
そのオフィスビルも周りじゅうに歯科医院があって良い立地とは私は思えなかったのですが熾烈な生存競争が繰り広げられています。
その当時の院長も別に拡大経営の野心があるわけじゃなく家族を守れればいいだけなのに、このように互いに競争し疲れ果て攻撃的になっていました。
どうしてそんなに苦しむ必要があるのか。
なぜ疲れ果てるほど競争し必死に家族を守らなければならないのか。
それなりに厳しい状況の歯科の世界に身を置いて自分なりに導きだした答えは
「なぜなら日本はちっとも平和じゃないから」
というものでした。

インターネットで「西荻窪 スレ」と検索すると街BBSというものが出てきます。
西荻窪について語ろうというページです。
西荻窪に限らず他の街BBSでも同じ話題を目にします。
それは「歯医者多すぎ」というもの。
他に多すぎる職業はコンビニなどたくさんあります。
逆に稀少価値な職業など駅前にはないかも知れません。
こんなに沢山あってどうするの?
そう言いたくなるほど様々な職業で同業者どうしが隣り合わせ、向かい合わせに林立して戦っています。
「イヤ俺は隣近所と仲良くやってるよ」
と言うあまのじゃくな歯科医もいるかも知れませんが、それは建前です。
本音では隣の歯科医院など目ざわりに決まっています。
インターネットのヤフーで検索すると私が開業している西荻窪駅前には50軒以上の歯科医院があります。
休日は快速電車が通過するほどのマイナーな駅前で50軒がしのぎを削っている。
同様にヤフー検索すると吉祥寺では100軒、銀座では250軒と出ます。
わずか半径1キロ圏内で250もの国が争っている…
調べてみると西暦250年ごろの三国志時代、戦乱の時代といわれた中国でさえ、いくらなんでもそこまでの群雄割拠ではありませんでした。
今の日本は三国志の英雄、曹操もビックリの戦国時代と言えます。
本物の血が流れないだけで「平和な内戦状態」なのです。

同じように考えているのは私だけではありません。
「キングダムで学ぶ乱世のリーダーシップ」(長尾一洋著、集英社)
で著者は述べています。
「今現在の日本や世界はどうか。乱世です。」
「ほとんどの業界で国内マーケットが縮小し始め、業界内での過当競争、合従連衡が起こっています」
まさにその通り。
そんな歯科業界を平和に治めることなど中国を統一した秦の始皇帝でも不可能でしょう。
近所や自分の知人、勤務医時代の歯科医院も閉院した話をチラホラ聞きます。
決して珍しい話ではありません。
家族を守らないとあっという間につぶされる過酷な状況は、歯科だけでなく他の業種でも似たようなもの、あるいはもっと厳しいものです。
日本は企業数が多すぎるという具体的な数値があります。
世界最大の株式市場ニューヨーク證券
取引所の時価総額は20兆ドル、東京證券取引所は5兆ドル、4分の1の規模です。
それなのにその中に上場している企業の数はアメリカは2300社で日本は3700社。
上場しているほどの大きな会社ですら日本では激しい競争にさらされています。
医療も飲食も流通も服飾も学習塾も美容院も自動車も不動産も、多くの業種が泥沼の内戦状態にあります。
歯科医師が過剰なのはデータからも明らかです。
「昭和 40 年代から 50 年代にかけて歯科医師不足が叫ばれ、田中内閣の1県 1 医大構想とも相俟って一気に歯学部・歯科大学は4倍近くも新設されることとなった。
人口10万人に対して歯科医師数をおよそ50名にというのが新設の根拠となったのだが、50名を超えるのに10年を要することもなく結果的には過剰な新設計画となった。
昭和62年に当時の文部省が閣議決定を受けて削減計画を策定したが、その効果は少なく歯科医師数は増え続け今では人口10万対80名を超える状況となっている。」
(参考文献:歯科医師需給問題の経緯と今後への見解 平成 26 年 10 月
公益社団法人 日本歯科医師会https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000071236.pdf)
そして戦争はもっとも国の発展を妨げるものです。
三国志についてインターネットのウィキペディアで調べたところ、後漢末の桓帝の永寿3年(157年)には人口5648万でした。
それが100年ほど後の三国時代には818万人の半ば。
およそ7分の1になるまでの減少であるとありました。
日本も平和な内戦が各地で繰り広げられている間は人口減少が続くのかも知れません。

それではそんな生き馬の目を抜くような群雄割拠の中で生き残るには、どうすればいいのでしょうか。
私は身につけた技術で生き抜くつもりです。
20代の勤務医時代に、自分の方向性に悩んで歯科医をやめようと本気で考えた時期がありました。
そんな悩みを当時の院長先生に吐露したところ信じられないことを言われます。
それは…
「ふうん、そうなんだ。で、キミはいったい何ができるの?」。
やめようと考えている人間に○○ができる! と胸を張って言えることなどありません。
院長なりに元気づけてくれようとしていたらしいのですが、沈黙している私のあまりのマイナスぶりに
「何もできないんじゃなあ…」
とため息をついて院長先生も黙ってしまいました。
そもそも「キミは何ができるの?」などと面と向かって聞くこと自体、かなり失礼な話です。
ただ私のような目に合うことはあります。
それから1年後くらいのことです。
別の先生からまた同じ質問をされました。
当時の勤め先の先輩が、あまりに悩んで前へ進めないでいる私を見かねて先輩の師匠格の先生に会わせてくださったときのことです。
とにかくできないなりに何か身につけようと歯科の本を読んでいた時期でした。
とはいえインプラントとか外科手術とかは本だけで身につけることはできません。
だから患者さんへの歯みがき指導の本をたくさん読み、日々の診療でも歯みがき指導を熱心に行なっていました。
何も言えずうつむいていた時代からは一歩だけ進歩したつもりです。
しかし師匠先生はそっぽを向いたまま答えました。
「ふーん…」
そして続けます。
「それなら歯科衛生士に頼んだほうがいいよなあ」
*長文になってしまったので次に続きます。
【関連記事】→いとう歯科医院の歴史
杉並区西荻窪で、入れ歯治療を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。
「痛くて噛めないのよ」
そうおっしゃるのは80代女性のRさん。
上アゴは歯が一本もない総入れ歯、下アゴは歯が2本残して後は入れ歯です。
歯が折れたり抜けたりしては入れ歯にプラスチックの人工歯を継ぎ足す増歯修理を何十年にも渡って繰り返してきました。
歯周治療などで歯を保てないことに対する批判等はあるのでしょうが、そのようなやむを得ない状況の患者さんはいます。
今回はその最後の2本が揺れていて口を閉じるだけで痛みを訴えていました。
そこでまた抜歯して増歯修理をすることに。
もう慣れっこのRさんは
「あ、いつものね~」
と治療方針の説明も簡単ですし患者さんの受け入れもスムーズです。
もっとも歯が一本でも「ある」のと一本も「ない」のとでは入れ歯の使い勝手に天と地の差があります。
それまでは何事もなかった方が急に入れ歯のあちこちが痛くなることも。
増歯修理してからが本当の勝負です。
とはいえRさんは幸運なことに総入れ歯になっても特別に大変なことにはなりませんでした。
「かえってよく噛めるような気がするわ」
とのRさんの感想。
良い感想をくださるのは私たち歯科医師もうれしいですし励みになります。
従来は
「あ、良かったですね」
で終わりだったのが今は違います。
具体的にどれほど噛めるようになったかを治療前と後で、数値で比較できるようになっているのです。

このようなことができるようになったのはここ5年ほどの話です。
「歯医者も削る、詰める、入れ歯ばっかりじゃダメですよ。
検査して口の機能を数値化してください。
その数値を元に科学的根拠に基づいた口の機能のリハビリテーションやトレーニングをして口の健康に寄与しましょう」
大ざっぱに言うと、そのような理由から「口腔機能検査」で割り出した数値を元に「口腔機能管理」を行なう治療が保険で導入されました。
当院でも積極的に行なっています。
Rさんも歯がある時代に検査をしていました。
特殊な検査用のグミキャンディを噛み砕くことで、入れ歯でどのくらい噛めるのかを数値で表す「咀嚼能力検査」です。
数値が高いほど咀嚼する力が強くて100未満だと口の機能が不十分な「口腔機能低下症」と診断されます。
歯がある時代に行なった検査ではグミキャンディを噛むのも辛そうで明らかに揺れている歯を避けて噛んでいました。
算出された数値も30台。
明らかに口の機能が低下している数値です。
口の機能が低下すると十分に食事できず身体が弱る原因となります。
しかし残っている歯が0の総入れ歯になってからの検査では
「これはよく噛み砕けるわ」
と言う余裕もあるくらいバリバリと咀嚼されて、算出された数値も100を超えていました。
今回行なったRさんの入れ歯修理して口腔機能管理を行なう治療は、保険治療1割負担で総額約2,000円でした(症状によって金額は異なります)。
「保険治療で入れ歯と口の機能検査できます。隠れた不調がわかります」
増歯修理を繰り返した入れ歯は壊れやすかったり不安定だったりするので、慎重に調整したり新しく作ることも考慮します。
とはいえスムーズに総入れ歯に移行できたRさんならば今後の治療もさほど苦労することはないでしょう。
定期的な検査と調整、入れ歯をより良く使うための口と舌の機能を保つリハビリテーションをご案内して、今回は治療終了となりました。
「口腔機能低下症、明日の臨床から取り組むためのヒント」
高齢社会といわれるように日本は社会の高齢化が進んでいます。
食事も会話も支障なくでき健康で長生きするために口腔機能の維持・向上の重要性は年々高まっています。
医科との連携を図ることを歯科保険治療においても求められるようになりました。
その口腔機能の維持・向上、医科との連携のカギを握るのが口腔機能検査、検査に基づく病名としての口腔機能低下症、検査、病態に対する解決策、治療として口腔機能管理です。
しかしこの口腔機能低下症に取り組んでいる歯科医院の数はまだまだ多くなく、導入に難しさを感じている先生が多いようです。

口腔機能低下症の検査と管理が保険収載されて数年が経過しましたが、十分に浸透してきたかというと、まだまだと言わざるを得ない状況ではないでしょうか。
ハードルが高く思えて取り組めてはおらず、きっかけをつかめない歯科医師は多いようです。
口腔機能低下症についてどのように捉え、臨床に取り入れていけばいいのでしようか。
「口腔機能低下症の概要について」
従来の歯科における口腔機能については「健康な状態」と「障害のある状態」の二極化した捉え方しかありませんでした。
たとえば
唾液の分泌が悪い→口腔乾燥、
発音に問題がある→発音障害や構音障害、
食べられない→咀嚼障害
といったように口腔機能を構成するものをひとつずつ別々に診断していました。
それぞれについて治療をしていたわけです。
しかしそれぞれの事は独立して別個に病気を引き起こしているわけではありません。
また今のところガマンすれば何とかなる、みたいなことでも何もせず時間が経過すると病気につながる。
そんなことも起こります。
そこで、話す、食べるといった患者さんの口腔機能を総合的に評価し、健康と障害の中間的なところに位置するものとして、口腔機能低下症という概念が誕生しました。
2016年に日本老年歯科医学会がその定義と診断基準を作成し、2018年4月に口腔機能低下症の検査と管理が保険収載されました。
7項目の検査を行い、そのうち3つ以上が基準を下回ると、口腔機能が低下しているとみなし、口腔機能低下症と診断します。

口腔機能低下症は、高齢者を中心に見られる口腔内の機能が低下する状態です。
とくに嚥下(飲み込み)や咀嚼(かみ砕くこと)の能力が落ちることで生活の質(QOL)や健康に大きな影響を及ぼします。
その中でも舌圧検査は口腔機能の評価において重要な役割を果たします。
舌圧検査とは何か?
舌圧検査は、舌の筋力や運動機能を評価するために行なわれます。
具体的には、舌が上顎や口蓋に押しつける力(舌圧)を測定します。
通常、舌圧は舌圧計という専用の機器を使って測定されます。
この装置は、舌を上アゴに押し付けて舌圧計の小さな風船を押すことによって圧力を感知し、その数値を表示するものです。
日本では舌圧の基準値として、成人男性では約30kPa(キロパスカル)、成人女性では約25kPaが一般的とされています。
なぜ舌圧検査が重要なのか?
嚥下障害の予防と評価:
舌圧が低下すると、食物をうまく嚥下できず、誤嚥(食べ物や唾液が気管に入ること)や肺炎のリスクが高まります。
早期に舌圧の低下を検知することで、適切なリハビリテーションや食事指導を行うことが可能になります。
栄養状態の改善:
適切な舌圧は、食事を楽しむだけでなく、十分な栄養を摂取するために不可欠です。
舌圧が低下すると、食事が苦痛になり、結果として栄養不良に陥りやすくなります。
生活の質(QOL)の向上:
口腔機能の低下は、話す、味わう、笑うといった日常生活の基本的な行動に影響を与えます。
舌圧検査を通じて口腔機能を評価し、改善策を講じることは、QOLの向上に直結します。
舌圧検査の実施方法
準備:まず、被験者は自然な姿勢で座り、口腔内が乾燥していないことを確認します。
測定:舌圧計の小さな風船のようなセンサーを口の中に置いて患者さんに舌を上げるよう指示します。
通常、最大力で3回測定し、その平均値を採用します。
結果の解釈:得られた数値をもとに、口腔機能の状態や介入の必要性を判断します。
結論
口腔機能低下症の管理において、舌圧検査は非常に有効な手段です。
早期発見と適切な介入によって多くの高齢者の生活を豊かにし健康寿命を延ばすことが期待できます。
しかし舌圧だけでは口腔機能の全てを評価することはできないため、他の評価方法と組み合わせることが重要です。
参考文献:How to 口腔機能低下症
明日の臨床から取り組むためのヒント
Vol. 080
https://www.gc.dental
【関連記事】→歯を抜くことについて「Q.歯が抜けた部分がありますが入れ歯を使っていません。そのままで大丈夫でしょうか?」