治療困難な症例の実例その2

13.食事もできるし痛みや違和感はないが、上の入れ歯の前歯が後ろに引っ込んでいるため、笑っても上の前歯が見えないという見た目が気になる。歯並びを前に出してほしいという要望だったが、使える義歯が出来なかった

簡単そうに見えますが大変難しい治療です。施術としては以下の3つが考えられます。

  1. 今、使っている入れ歯の歯並びを前に出して並べ替える
  2. 歯を前に出した形の入れ歯を新しく作る
  3. 奥歯の咬み合わせを高くして前歯を並べやすくしておいてから、前歯を出して並べる

残念ながら、いずれも上手くいかないことが多いです。

1の場合は今ならんでいる歯を削り落として新しい歯を前に出して並べることになりますが、事はそう単純にはいかないことがあります。歯を並べるスペースが狭い場合、削ったり盛り足したりすることで強度が下がってしまいます。補強の金属線を入れたり工夫してもすぐに壊れることがあります。

また、スペースが狭すぎて様々な加工ができないことがあります。その場合は3の方法でスペースを広げることを考えるのですがその難しさは3に書いていきます。なんとか並べることができたとしても、上唇が妙に膨らんだ感じになって違和感が大きくて入れていられなくなってしまうことが実は多いです。今までは入れて使うことができたのに、歯科医が手をつけたために使えなくなってしまう。そのような可能性があるので当院ではやりません。

2は作ってみることは技術的にはできます。ですが1と同じ違和感が起こって使えないことが多いです。使えない物を作ってお金をもらうのは、私たちも気が引けますしトラブルの元になります。上手くいく保証は全くできませんが、保険治療で作製して最小限度の金額をお支払いいただくことに
納得していただけるなら作製してみます。上手く使えればラッキーくらいに思っていただきたいと思います。しかし、あまり私たちも気が進みませんし、他の歯科医院で自信をもって出来る先生がいればそちらにお任せする方がいいと思います。

3は出来るケースと出来ないケースがあります。出来るケースは、もともと入れ歯の高さが低すぎて入れ歯を使うことに不自由がある場合です。具体的な症状としては

  • 食事がしにくい
  • 食いしばる癖がある
  • ご自分で咬み合わせの低さを感じる

咬み合わせの低さが良くない症状を起こしている場合、咬み合わせの高さを上げることでこれらの症状を取り除くことができます。その上で前歯を適正な場所に並べられればとても良い治療ができます。

逆に出来ないケースとは、入れ歯を使うのに症状が何もなく普通に食事もできる入れ歯で咬み合わせを高くして大丈夫か?ということです。結論としては上手くいきません。違和感だけが大きくなってしまいます。症状のない使える入れ歯は手をつけない方が安全です。

そのため、2の方針を採るのが今ある入れ歯に手をつけず行なえるので安全ですが前述した理由でおすすめしません。さらに情報収集をしていただいて、他の歯科医院で自信をもって出来ると言う先生がいらっしゃればそちらで施術を受けられるようお願いします。

14.自費の高額治療で作製された10本にもわたるブリッジが外れた。ブリッジがかかっている歯は汚れが多く揺れと虫歯がある。再接着できるか聞かれたので、なるべく早くブリッジを作製、装着した先生に相談してもらうように説明した。もっともブリッジを着けないと日常生活に影響するので、仮止めの接着剤を用いて形を回復するとともに次に診療した歯科医が外そうと思えばすぐに外せるようにした

歯がない部分を両隣の歯でつないで補うブリッジは難しい技術です。咬み合わせのバランス、歯と歯ぐきの状態を保つのが大変で、定期的にメンテナンスしても様々なトラブルが起こります。

私はあまりやらない技術で自分が作製したブリッジは最大で6本分です。10本にもわたるブリッジは作製した経験もありません。また、そのようなブリッジは保険治療の適応ではない設計で作製されていることもあります。ブリッジをどの歯で支えるのが望ましいかの設計は計算式で求めることができますが、10本分ともなると計算が複雑でその条件に合わせるのは難しいです。

大きなブリッジの設計をカルテのコンピューターに入力すると「保険治療の適応外です」と警告が出ることが多いです。つまり物理的、医学的に問題があるのに無理やり入れられているブリッジが多いということです。今まで使えてきたのは「運が良かったですね」としか言えません。

このような大変難しい物ですから、作製者ではない私がむやみに咬み合わせを削ったり土台の歯を削ったりすると何が起こるのか全く予想できません。元の状態に戻したくても戻せなくなることもあります。するとブリッジを作製、装着した先生も扱えなくなってしまい、かえって悪化してしまうことすらあります。

そのためいとう歯科医院では、責任を負いかねるような大きなブリッジや自費治療のトラブルは対処できないことがあることをご了承ください。ただし日々の生活はしなくてはいけないので、仮止めの接着剤で付けてしばらくは日常生活は送れるように工夫します。

仮止めされている間、だいたい1週間以内になるべく早くブリッジを作製、装着した先生に相談することをおすすめします。もっとも患者さんによっては前の先生とご縁が切れてしまった方もいらっしゃいます。ブリッジを再接着して咬み合わせの調整や清掃を綿密に行って8年以上も良い状態を保っている例もあります。必ず治せるとは言えませんが出来るだけ努力いたします。

16.他の歯科医院に通院中で、インプラントや自費のブリッジ等をやる予定。仮の入れ歯が壊れたので治してほしいと当院に来られたが「現在かかっている歯科医に相談してください」とお断りした

他の歯科医院で治療されている間は全ての事柄をそちらに相談してください。他院の先生の性格、性質によっては「余計なことするな」などと怒り出すことがあるからです。

当院が余計なことをしたばかりにあなたとその先生の関係に影響を及ぼすことを私は恐れています。そのような理由で歯、かぶせものを削る、入れ歯に手を加えるなど一切の施術はできませんのでご了承ください。

ただし、治療法などが合わないのでもうそちらの歯科医院には通わず転院される意志で当院に来られるのでしたらお引き受けできます。急に歯が痛くなったので緊急で痛みを取り除く必要があるなど、緊急の場合のみ保険治療で出来る範囲で対応いたします。

17.現在使っている入れ歯が壊れたら困るので予備の入れ歯を新しく作りたいとのご依頼。現在の入れ歯で困っていることがなく、入れ歯にも治療すべき点が見つからなかった。

保険制度は様々な解釈があるので、私の考えが100%正しいとは言うつもりはありませんが、予備の入れ歯を作るのは保険治療の適応外と考えています。一般的な保険治療の流れの私なりの解釈は次の通りです。

痛い、ゆるい、食事ができない、壊れたなど、困っていることを患者さん自身の言葉で言ったものを「主訴」と言います。主訴をお聞きしてから診査診断して「病名」をつけます。その病名に基づいて「治療」を行ないます。保険では病名から治療の流れが決まっているので、それに沿って行ないます。

この件に関しては、現在の入れ歯で困っていることがないとのことでした。長年使っていて壊れたときに備えて予備を作りたいとの依頼です。困っていることがないということで以下のように考えました。

困っていることがないということは「主訴」がない。主訴がないと「病名」がつけられない。病名がないのに「治療」はできない。病名、治療がないことを保険ではできない。だから予備の入れ歯を作ることは保険治療と認められない。つまり保険治療で新しい入れ歯を作ることはできない。病名も大義もなく高額の自費治療で入れ歯を作るのは当院のポリシーではない。それで治療行為を一切行ないませんでした。

保険制度としては前回入れ歯を作って6ヶ月以上経過すれば作製可能との内容はあります。でもそれは「主訴→病名→治療」の流れの中で必要に応じて行なうことです。無条件に作れるわけではありません。

また、現在使っている入れ歯があるのに新しい入れ歯を作っても「前の入れ歯の方がよかった」ということになって、新しい入れ歯は使えないことが多いという印象を私は持っています。そのような理由で当院では予備の入れ歯は作っていません。そのかわり、もし入れ歯が壊れたら短期間で修理できることを当院の最大の特長としています。

それが不安でしたら他院で「私は予備の入れ歯を積極的に作っている」「私ならば新しい入れ歯は必ず現在の物より良く作れる」という先生がいらっしゃるかもしれません。それが間違っているとは私は思いませんのでもう一度よく調べられることをおすすめします。

18.「部分入れ歯を1日で新しく作ってほしい」とのご依頼だったが、不可能なのでお断りした

保険治療では、入れ歯を新しく作る際に流れが決まっています。1回の来院で1日で入れ歯を作製することは、保険のルールで認められていないと私は解釈しています。だからそのような施術は行なっていません。

小さな入れ歯なら2回の来院で作れることはありますが、入れ歯の大きさや範囲、残っている歯の状態など口の中を拝見してからでないと分かりません。だから2回の来院で必ず作れるとも言い切れないものがあります。

また、作った後に調整が必要で後日に来院が必要なこともあります。保険治療で、なるべく少ない回数や日数で治療できるよう最大限の努力をするのが当院の方針ですが、そのような理由で

「○回で仕上げてほしい」
「○日で仕上げてほしい」

というご希望には沿えませんのでご了承ください。

19.マグネットが入った入れ歯が一部分が壊れた。マグネットは効いていてよくアゴと吸い着いていた。マグネットと全く関係ない部分が壊れていたので修理したら、なぜかマグネットが効かなくなってしまった

マグネットを用いた義歯をしばしば見かけるようになりました。マグネットは大変微妙なバランスでくっついています。ちょっとしたことでマグネットが効かなくなってしまう難しい治療です。当院で治療できる例とできない例があります。治療できるのは以下のような例の場合です。

  • マグネットのある歯がグラグラ揺れていて義歯が合っていない
  • マグネットが効いていなくて義歯が合っていない

このようにマグネットがあってもなくても関係ない義歯になっているなら、調整したり、張り替えたり、修理したり出来ます。

治療、修理をお断りするかもしれないのは「マグネットが効いていてそれで義歯が支えられている」場合です。このような義歯の場合、マグネットと関係ない入れ歯の一部分が欠けて修理しても、なぜかマグネットが効かなくなってしまったことがありました。

入れ歯は、本当は歯ぐき全体で支えるべきものなのに、マグネット義歯はマグネットだけに依存して入れ歯を口の中に保っています。そのため、マグネットが効かなくなってしまうと入れ歯自体が使えなくなってしまいます。想像もしないことが原因でマグネットが効かなくなった時に、どう対処すればいいのか、いとう歯科医院では心得がありません。

他の歯科医院で「マグネット義歯が得意です!」と宣伝しているホームページは数多くあります。そのような先生に治療をお任せする方が安心です。

20.歯科治療が原因、引き金と思われる不定愁訴(めまい、頭痛、頭が重い、腰痛、鬱、不眠などの全身症状、顎関節の症状、通常の歯科治療をしても治らない歯痛など)がある方

咬合治療と称して歯を削られたり、歯科矯正を施されたり、4本以上の大きなブリッジなどの被せものを入れられたり、マウスピースの装着を長年続けていたりする方はそのような症状を訴えられることがあります。そのような方に対して歯を削ったり被せもの、詰め物を装着したりすることで
不定愁訴が増悪することがあります。そうなった場合に治療前の状態に戻すことは出来ません。

入れ歯の治療だと、咬み合わせを削ったり、逆に盛り足して高くしたりすることが比較的、大胆に出来ることが多いです。しかし、生えている歯に対しては細心の注意を必要とします。1mm以下の切削(歯を削ること)でも不定愁訴が出ることがあります。

もっとも入れ歯でも同じことが起こる可能性はあります。注意が必要なのは言うまでもありません。特に以前にそのような症状が出たことがある。
今もそのような症状がある方の「歯を削る」「盛り足す」を行なうと不定愁訴が出る可能性が高いです。状況によりますが、当院では治療できないことがあることをご了承願います。

21.初めて来院される方で「歯石を取りたい」「歯をクリーニングしたい」という方

当院は歯石を取ったり、歯のクリーニングをしたりなど、歯周病や歯槽膿漏の治療は普通に行なっています。ただし、歯周病の治療を行なっているのは入れ歯の治療などで回数を重ね、患者さんと歯科医師で気心が知れている方だけです。

特に初めての来院の方とトラブルになる話として

「思ったよりも歯石が取り切れていなかった」
「もっとピカピカツルツルになると思っていた」

などと言われたことがありました。美容歯科、審美歯科のつもりでいたものと思われます。

いとう歯科医院は専門分野ではありませんので、そのようなピカピカツルツルにする器材があまりそろっていないこともありますため、美容歯科、審美歯科、歯周病専門医などに行かれることをおすすめします。気合を入れすぎて歯石を取ってしまったら「今まで何ともなかったのに歯がしみるようになった」というトラブルも経験しました。

そのような理由で初めて来院される方の「歯石を取りたい」、「歯のクリーニングをしたい」というお申し出は、トラブルの原因になるのでお断りすることをご了承願います。

22.「早く治したい」「○回で治したい」「短時間で治したい」と言う方

歯科治療は内科など医科の治療と違い、思いもしない回数、時間がかかる場合があります。歯は自然治癒しない部分が多いからです。大きな虫歯は自然には復活しませんし、永久歯がなくなった部分はもう生えてきません。入れ歯の不具合が長く続いていると自然には治りません。

内科などは来院して、正しい診断を受けて薬を飲んで治れば1回の来院だけで済むことがあります。ところが大きな虫歯は2~3回かけて歯の代わりになるかぶせものや詰め物を作製する場合があります。また、歯がない部分に入れ歯を作るのも2~3回以上はかかります。

歯科医師はこのように物を作るのが1つの特徴です。そして「作って終わり」ではありません。かぶせものや詰め物、入れ歯を入れてから痛みが出たりとか、そうならないように最善を尽くしていても予想しにくいことが起こることがあります。結局、調整などで回数かかります。それに対して「早く治らなかった」と言われてしまうと歯科医師も困ってしまいます。

以前、私は真珠腫性中耳炎のために医科大学で全身麻酔の手術を受けたことがあります。担当の医師から「手術は6カ月後にしましょう。1週間の入院です」と提案されました。

「歯科医院の都合や家族旅行があるので早く治したいんです。来月に手術したいです。2日で退院したいです」

って医師に言えますでしょうか?物理的に不可能だと思いますし、医師に対して失礼な話です。そのような理由で「早く治してほしい」、「早く治したい」、「3回の来院で治したい、終わりにしたい」などのことは出来ません。言われると非常に困りますしトラブルの原因にもなるので、治療をお断りする場合があることをご了承ください。

23.他の歯科医院と歯科治療に関して、弁護士などを介して裁判とか係争中の方

大変難しい問題に発展する恐れがあります。当院で手を付けてしまって余計にこじれてしまう可能性があります。一切の施術をせず大学病院を紹介いたしますのでご了承ください。

24.小児の方

当院でも小児の方の虫歯治療などは行なっています。ただし、それは現在受診されている患者さんのお孫さんとかに限っています。

小児の乳歯の治療は特別な知識、診断、治療が必要です。専門医は乳歯から永久歯に生え変わってからの歯並びまで、長い年数を見越した最良の治療を行なってくださいます。いとう歯科医院ではそこまでの心得がありません。

「日本小児歯科学会専門医」という資格をお持ちの先生を受診されることをおすすめします。

25.補う歯が1~2本の極端に小さい入れ歯

補う歯が1~2本だけの小さな入れ歯は実は難しい場合があります。
たとえば入れ歯に痛みなどが出た際には痛みの原因となっている部分を削れば治ることがほとんどです。
ところが小さい義歯は大きさが極端に小さいです。

だから入れ歯を直径数ミリの範囲削ることすら著しく困難な場合があります。
ティッシュコンディショナーという安定剤のような物を薄く貼って安定させる治療も、総入れ歯など大きい入れ歯ならよく効きます。
ですが小さい義歯の場合はあまりに面が小さいためキチンと接着せず効果が見られない場合があります。

他にも咬み合わせの調整を行なったり出来るだけの対応を心がけますが、補う歯が1本分の場合は入れ歯ではなく両隣の歯を削って被せるブリッジや、歯グキの骨に金属の棒を埋め込むインプラントなどの治療法が向いているのかも知れません。

しかし歯も骨も削らずリスクの少ない入れ歯でさえも出来ない人の口の中に、ブリッジやインプラントを施術して上手くいくのか私には分かりません。
もっとハッキリ言ってしまうと私はブリッジやインプラントを入れ歯以上に上手くできる自信などありません。
また治療前に、入れ歯とブリッジとインプラントのどれか最適かを診断(予言)することは不可能です。

入れ歯以外の治療法にも様々なリスクがあります。
ですから入れ歯を調整しても痛みや違和感などが改善せず小さい義歯が上手く使えない場合は、当院ではそれ以上の治療が出来ないことをご了承いただきたいと思います。

以上の理由で、補う歯が1~2本の場合は入れ歯が上手くできることもありますが不向きなこともあります。
他の治療法が適していることもあります。
ブリッジなどなら補綴専門医という資格を持つ先生が得意とされているでしょうし、インプラントは情報がたくさん出回っています。

いま一度パソコンなどで情報を集めたり他の歯科医師の話を聞いたりして納得のいく治療を受けられるようお願い申し上げます。

26.入れ歯に不備がないのに、入れ歯に違和感があって使えないと訴えられる症例

入れ歯が明らかに大きすぎる、
入れ歯と歯グキが合っていない、
咬み合わせが合っていない、
部分入れ歯のバネが合っていない、

など入れ歯が不適合のせいで違和感がある症例は数多く見られます。
それらは治療によって解決できます。

しかし入れ歯の大きさは適正、入れ歯と歯グキは合っている、咬み合わせも合っている、歯グキに傷もない、部分入れ歯のバネも合っている。
入れ歯に悪い点が見あたらないにも関わらず

「違和感がある」
「気になって舌でいつも触っている」
「外出時や食事時以外はすぐに外してしまう」

といって入れ歯が使えない症例が散見されます。
違和感に対して「痛い」と表現されることもあります。

違和感のある入れ歯を調整したり設計を変えて新しく作ったりして改善できることはあります。
ただ悪くもない入れ歯をいじると、かえって悪化させてしまう可能性もあります。
また「違和感がある」ような入れ歯は設計もギリギリで、新しく作ろうとしても変える余地がなかったりします。

咬み合わせが極端に低くて入れ歯を入れるスペースがほとんどないとか、歯グキの状態が著しく悪いとか困難を抱えていることが多いように個人的には感じています。

さらに危惧するのは違和感の原因と思われる部分を改善したら別の違和感を訴えはじめた、というものです。
歯並びを1ミリに満たない範囲で気にしはじめたり、客観的に到底感知できないほどの微細な凹凸を気にしはじめたり、別の歯の違和感を訴えはじめたりして、大変苦労した経験がありました。

そのような症例こそお金をかけて自費治療を行なうのは、ひとつの考え方です。
「入れ歯に違和感がある→インプラントにする」などは直線的な解決法です。
これはたとえば「鼻の高さに違和感がある→美容整形する」と同じ発想です。

しかし入れ歯とは自分の歯ではなく人工物なので「違和感」があるのは当然です。
これは杖や義手、車イスなどと同じです。
違和感を受け入れる、乗りこえて使えるように努力をすることが必要です。

違和感があるから車イスのタイヤをひとつ削りました、などということをしたら別のリスクが発生することは明らかです。
入れ歯も同じです。
違和感をなくすために悪くもない入れ歯を削ったりすると別のことが起こるリスクがあります。
だから手を加えることができない場合があることをご了承願います。

個人的な話で恐縮ですが、私はモテないし美男子でもないし女性を魅惑するオーラなど発することができません。
30歳すぎまで女性と付き合ったことがありませんでした。
そのままでいたら、おそらく結婚できないままだったでしょう。

そこで結婚するためにどうしたかというと美容整形をするのではなく「努力」しました。
コミュニケーションの本を読む、銀座の元ナンバーワンホステスの人から女性とのつきあい方、立ち居振舞い、ファッションを教わる、結婚相談所で見合いを重ねるなどです。

ただ、だからといって患者さんに面と向かって「努力しろ」そう言うのは気が引けます。
言っても何も変えることはできず医療としての効果がないことはわかりきっているからです。
精神科医療などでは認知行動療法などの手法で思考と行動の変化を促す治療法がありますが、私を含め一般的な歯科医師にはそのような治療の心得はないはずです。

違和感については、たとえば咬み合わせに病的な違和感を訴える「咬み合わせ違和感症候群」という言葉があります。
正式な医学的な病名ではなく「そういう症状を訴える患者さん、いらっしゃるよね」そんな状態を表現しているものです。
私も勉強しましたし該当する患者さんはすぐわかるようになりました。

咬み合わせ違和感症候群に対しての治療は上記の認知行動療法を採り入れたり、歯科医師では扱えないような薬を医科と協同して処方したりします。
大学病院での対処が必要な難しい症例です。

ただ咬み合わせ違和感症候群と入れ歯の微細な違和感は違うように思います。
今のところそのような入れ歯の違和感をなくす治療法は私が調べたり勉強したりした範囲では存在しません。

ですから入れ歯に不備がないのに違和感がある、に対しては「努力する」か「金で解決する」かになります。
努力しない人を努力するように変容させる心得は私にはありません。
ですから治療できない場合があることをご了承願います。

また手っとり早く金で解決する、すなわち自費治療には多大なリスクがあります。
だから当院では一切行ないません。
インプラントも美容整形も、そのような情報はネットで調べるとたくさん出てきます。

もし自費治療を受けられるつもりでしたら当院以外の情報を今一度よく調べられることをお勧めいたします。

>>症例の実例その1はこちらから

治療困難な症例の実例その1