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■カネで治めるか、光で治めるか その1 歯科ブログ


時は紀元前。
当時の中国では国が分裂し争っていました。
その一国の秦では、新しい国王の政(せい)と、王座奪回を目論む丞相の呂不韋(りょふい)の間で、互いの軍勢が激しい戦闘を繰り広げていました。
一方、宮殿の中では政と呂不韋が真正面に向き合って対峙し、どちらが秦を治めるにふさわしいか、激論が交わされていた。

商人から出世した呂不韋は商人らしく「カネ」の力で中国を支配すると主張し、有り余るほどの金で物があふれかえり飢えと無縁な飽食の国、人生を楽しみ謳歌する国を作り、他国にも富みを分け与え戦争をなくそうという考えです。

それに対し政は武力による中国統一を主張。
「暴力による支配は暴力の連鎖を産むだけだ」しょせん戦争はなくならないと否定する呂不韋に対し「人間とは光だ」と切り返した。

政は幼少の頃に母子ともに他国で虐げられ、暴力を振るわれ、命がけで助けてくれた商人の娘の手によって秦に戻った辛い過去を持っています。

人には二面性がある。
戦争を起こす凶暴性、醜悪さも人間の持つ闇の側面だが、一方、赤の他人のために命を捨ててまで人を助ける者もいる。

政が商人の娘に見たのは人の優しさと強さ。
そして強烈な「光」だった。
光を放っているのは商人の娘だけではありません。

戦(いくさ)に敗れて散っていった武将や、名もなき兵士まで、必死で生きる者はみな強烈な光を放っています。
その光を次の者が引き継ぎ広めていくことでさらに力強い光を放つようになる。
人は光でつながり、よりよい方向へ前進する。

こうして中華を分け隔てなく、上も下もなく、ひとつにして次の世代には戦争をなくす。
呂不韋は「王は大きゅうなられましたな」と目頭を押さえ、政の壮大な思想を認めました。

読みながら私は涙が止まりませんでした。
なぜなら私たち歯科医師も毎日光を生み出していることを思い出したからです。
私だけではなく、歯科医師ならだれもが歯科治療によって光を生み出しています。

しかめっ面の患者さんが治療で笑顔になったときや、不安な表情の患者さんが治療方針を説明したらホッと一息ついたとき、入れ歯が上手に入って納得の表情でうなづいたときなど、私たち歯科医師はいつも患者さんの中に光を見ることができます。

もちろん光を生み出すのは歯科医師だけではありません。
専業主婦もスポーツ選手も会社勤めの人も子どもも。
だれだってできます。
あなたにも身に覚えがあるはずです。