杉並区、西荻窪で、入れ歯治療を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。
「僕、どうなっちゃうんでしょう?」
本当に心配そうな表情なのは50代男性のRさん。
心配のタネは歯4本分が金属のかぶせものでつながったブリッジです。
そのブリッジがグラグラ揺れてきた。
一度揺れはじめたブリッジの揺れを止めるのは不可能と思ってください。
他に歯はありません。
あとは全て入れ歯です。
最後の歯4本が一気に抜けてしまったらどうなるのか、というのがRさんの心配ごとでした。
結論から言うと全く心配無用です。
ブリッジを抜いてそれを直接入れ歯に継ぎ足す「増歯修理」ができるからです。
部分入れ歯は、残っている歯に金属バネ(クラスプ)を引っかけて口の中に維持しています。
元々ブリッジと入れ歯は合っているわけです。
だからブリッジを抜いて入れ歯に直接継ぎ出せば、よく適合します。
またブリッジと入れ歯のスキマを歯科用プラスチックで埋めるだけで修理できるので簡単です。
後は咬み合わせも元々のブリッジは咬み合わせも合っていたわけですから、その調整も簡単です。
増歯修理はプラスチックの人工歯を継ぎ足すことが多いです。
ただ今回のように既存のブリッジを利用すれば、もっと簡単に早く、よく合った修理ができます。
実際に30分ほどで修理できた入れ歯を入れたRさんは
「いやー早く治って良かった良かった」
と笑顔で帰られました。
ゆるい入れ歯には保険治療で歯科専用の入れ歯安定剤を貼りましょう
とはいえ部分入れ歯から増歯修理して歯が一本もない総入れ歯になりました。
その後の調整は必要です。
また多くの場合は新しく総入れ歯を作ることになります。
通う回数が多くなりますので、よろしくお願いします。
Rさんもやはり抜いた部分の歯グキの変化に合わせて入れ歯を削る調整をしました。
とくに
「食事すると痛い」
というのは入れ歯の直径数ミリほどが歯グキに食いこんで歯グキに傷を作っているのが痛みの原因です。
入れ歯のその数ミリをちょっと削るだけで治ることがほとんどです。
後は入れ歯を合わせながら歯グキの状態を整える歯科専用の入れ歯安定材みたいな材料、ティッシュコンディショナーを貼ったりして歯グキを良好な状態にしていきました。
多くの場合にこのような経緯で総入れ歯になると新しく作ることが多いです。
とはいえ修理とティッシュコンディショナーで合わせたら上手に使えるので、このまま使えることもあります。
ただ修理した入れ歯は長年使うと壊れるようになります。
またティッシュコンディショナーが上手く付かなくなることもあります。
もっとも一番尊重するのは
「このまま使い続けるのがいい」
「新しく作りたい」
という
「患者さんの意思」
です。
入れ歯を使うのは患者さんなので患者さんが「こうしたい」との意思を受け入れて歯科医師はその意に沿うように治療を進めるのが結局は上手くいきます。
遠慮なく歯科医師を手足として使いこなして頂きたく思います。
また咬み合わせもブリッジと入れ歯では大きく変化します。
咬み合わせの調整も必要です。
抜歯した部分が治癒するのに時間かかります。
いきなり新しく総入れ歯を作るのではなく、抜歯後の治癒を待つ間にこのような入れ歯治療を行なって、新しい入れ歯を作る環境を整えることも大切です。
一つひとつ説明しながら治療を進めてRさんも一緒にがんばってくださいました。
おかげでよく合った総入れ歯を作ることができました。
今回行なったRさんのブリッジを抜いて入れ歯に増歯修理する治療の費用は、保険治療3割負担で総額約5,000円でした(症状によって費用は変わります)。
ブリッジ治療の利点と欠点
ブリッジ治療は、歯を失った場合にその隙間を埋めるための一般的な歯科治療法の一つです。
失った歯の両隣りの歯を削って失った部分を含む連結したかぶせものを入れる治療です。
以下にその利点と欠点を説明します。
利点
審美性の向上:
ブリッジは天然歯に似せて作ることができるため見た目が自然で美しい仕上がりになります。
とくに前歯の欠損部に使用すると笑顔が自然に保たれるでしょう。
機能の回復:
咀嚼機能が回復し食事が楽になります。
ブリッジによって歯列が補完されることで食べ物をしっかりと噛むことができるようになります。
発音の改善:
歯が欠けていると発音に影響を与える場合がありますがブリッジによってこれが改善されます。
既存の歯の保護:
失った歯の隣の歯が移動するのを防ぎ歯並びを維持します。
これにより長期的に見て、他の歯への負担を軽減します。
たとえば下の歯を失うと上の歯が落ちてくる(伸びてくる、挺出ていしゅつ)ことがありますが下の歯をブリッジで補って上の歯と噛むようにすることで挺出するのを防げる場合があります。
比較的早期の治療が可能:
インプラントと比べると手術が不要で治療期間が短いことが多いです。保険治療でも出来るので比較的安価で治療可能です。
欠点
隣接歯への負担:
ブリッジを作るためには健康な両隣りの歯を削る必要があります。
これにより健康な歯にダメージを与える可能性があります。
咬み合わせによる負担が両隣りの歯に、どのようにかかるか等、だれも予測できません。
とくに自費の高額治療でブリッジを入れると30万円~100万円など、より高額になりがちです。
それでほんの数年しか保てなかったりすると大きなトラブルになります。
そのようなことから当院ではブリッジの治療はほとんど行なっていません。
メンテナンスと耐久性:
ブリッジは時間とともに摩耗したり破損することがあります。
摩耗、破損すると金属がむき出しになって見た目が悪くなります。
そうなった場合の修理は大変難しい、あるいは不可能です。
定期的なチェックとメンテナンスが必要です。
通常、ブリッジの寿命は10年程度とされていますが個人差があります。
痛い入れ歯の調整の費用は保険治療3割負担の方で約1,000円~2,000円
口腔衛生の難しさ:
ブリッジの下や周囲は清掃が難しくプラークが溜まりやすいです。
ムシ歯や歯周病のリスクが高まります。
それもブリッジの寿命を縮める原因となります。
特別なブラッシング技術やデンタルフロス、洗口液の使用が推奨されます。
とは言うものの実際に
「ブリッジのための特別なブラッシングや器具を指導している」
という歯科医院の話は聞いたことがありません。
またそういう指導を受けて実践してブリッジを長持ちさせている患者さんに会ったこともありません。
特別なブラッシング技術やデンタルフロス、洗口液の使用によってブリッジが長持ちする論文は探したのですが見つけることができませんでした。
ご存知でしたら教えていただけるとうれしいです。
費用:
初期費用は比較的安価かもしれませんが、長期的に見るとメンテナンスや再治療の必要性から全体のコストが高くなる可能性があります。
骨密度の減少:
失われた歯の部分の骨は刺激を受けることが少なくなり、骨密度が減少する可能性があります。
これは特にインプラントを将来考えている場合に問題となることがあります。
「失われた歯の部分、ブリッジになっていた部分の骨が骨密度が低い」
これも論文を見つけられませんでした。
こちらもご存知でしたら教えていただけるとうれしいです。
とはいえ、たとえば自費の高額治療のブリッジで100万円とか支払って、その後またインプラントで100万円を支払うとか、考えるだけで寒気がします。
保険治療の入れ歯をお勧めします。
可逆性の低さ:
一度ブリッジを装着すると、両隣りの歯を削ってしまったため容易に元に戻すことはできません。
これは治療の選択肢を制限します。
とくに当院では4本分のブリッジが抜けた所に入れ歯を継ぎ足す増歯修理で、その日のうちに歯並びを回復できます。
10本分のブリッジくらいなら同様の修理が可能です。
しかし入れ歯がなかったら、ある日突然4本~10本の歯が一気に無くなります。
食事もままならなくなります。
また当院のような修理を他の歯科医院でもできるとは限りません。
抜いたら抜きっ放しということもあります。
10年後の未来など誰にも分かりません。
そのような後からのことを考えると増歯修理が簡単にできる入れ歯をお勧めします。
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