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私たちは平和な内戦の中で、どう生き残ればいいか その2の2

杉並区西荻窪で、入れ歯修理を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。

私たちは平和な内戦の中で、どう生き残ればいいか その2の1
https://ireba-ito.com/2025/01/29/ito-208/

の続きです。

確かに今から思い起こすと師匠先生のおっしゃる通りでした。
勉強して経験を積んだ歯科衛生士のほうが余程うまいに決まっています。
私のその「できると思っていたこと」とは歯科医師としては、まったく取るに足らないことだったのです。

乱世の歯科業界を生き抜くには全く不十分でした。

とはいえその後にご縁があって、次に勤務した大手の歯科医院で毎日診療後に3時間の技工作業をして入れ歯修理の技術を身に付けました。

その歯科医院ではみんなが技工をするわけではなく、みんなが定時で帰るのを横目に私だけが技工室にこもっていました。
なぜ私だけが技工を教わることが出来たのかはわかりません。

「キミはいったい何ができるの?」

今そう聞かれたら

「ワイヤークラスプ両翼鉤を屈曲できます」
「どんなに壊れた入れ歯でも一時間で修理できます」

と瞬時に言い返せます。

入れ歯を歯に引っかけるバネ(クラスプ)を作る技術のことです。

「修理するには入れ歯を一週間預からないとできない」
「この入れ歯を再び使えるようにすることはできない」
「大金をかけた自費治療の他に治す手段はない」

そんな非情な宣告を歯科医からされた入れ歯を、この修理の技術でいくつも復活させてきました。

このように乗り越えるきっかけを作ってくださった理事長先生、師匠先生には感謝しなければならないのかも知れません。
「感謝しています」と言い切れないあたりに自分の心の未熟さを感じます。だって人間だもの。

総入れ歯を作る費用は保険治療3割負担の方で総額約2万円

それからさらに20年の時が経って当院での話です。

ある患者さんが企業検診で、たまたま私が昔に勤めていた都心のデンタルクリニックを受診したと言います。
その患者さんは私が修理した入れ歯を使っていました。

企業検診で治療の不備を見つけたらそのデンタルクリニックで再治療します。

「○○院長から言われたんだけどさあ」
患者さんは昔なつかしい院長先生の名を挙げて言います。

「これだけのことができるなら、かかりつけの先生にお任せしたほうがいいってさ」

院長先生は、まさか入れ歯修理したのが私だとは思わなかったようですが、まったく入れ歯に手をつけていませんでした。
なんだか20年ごしにリベンジを果たした気分です。

「どんなに壊れた入れ歯でも一時間で修理できます」

ようやく

・人から必要とされる
・人を助けることができる
・人に大切にしてもらえる

そんな技術を身につけることができたと確信する出来事でした。

人がマネできない唯一無二の技術があって生き残っている会社は例を挙げ始めたら枚挙にいとまがありません。
アメリカのGoogle、Apple、Microsoft、Facebook、Amazonなど世界的な企業は他の企業がマネできない技術の積み重ねです。

自分が学生の時代にはパソコンがまだほとんど存在しませんでした。
自分の学生時代には想像もできなかった、未来を見せてくれる技術には「えっ、マジですか?」と言うしかありません。

そしてそんな「えっ、マジですか?」の技術が世界を、歴史を変えていく。

ちなみに子育てとは
「えっ、マヂですか!」
の連続とわかりました。

強調するためにあえてチに点々にしています。

私の子どもは一輪車が得意です。
後ろに漕ぐ、その場でバランスを取るアイドリング、ペダルでなくタイヤを足で操って進むタイヤ漕ぎなど多彩なテクニックを誇ります。

手すりにつかまって座ることさえできない私には「えっ、マヂですか!」という技術の持ち主です。
乗り回していると見物の人だかりができるのも納得です。

またトランプのマジックが得意です。
ランダムなカードを私が1枚引いて適当に山の中に戻す。
子どもが何やら呪文を唱えてトランプの山を広げると何故か私の選んだカードだけが裏返っている。

まるでテレビのマジシャンのような手つきには「えっ、マヂですか!」と驚くしかありません。

他には子ども向けの教育雑誌にイラストやネタを投稿するのが好きです。

「えっ、マヂですか!」
という内容が採用されたりします。

今の世の中は何がウケるか分かりません。
全国誌に子どもの名が載るというのは親も誇らしいものです。

部分入れ歯の金属バネが折れても保険治療で修理できます

「ママの○○! ○○○! ○○○○!」

ここに書けないような言葉でケンカすることがあります。
そんなしょうもない理由で「えっ、マヂですか!」と驚くこともありますが少なくとも私の小学生時代よりずっとたくましく見えます。

親バカですが自分の子に、戦国時代でも生き残れる萌芽のようなものを感じました。

群雄割拠の世の中で物を言うのは、三国志の天才軍師、諸葛孔明のような知力や裸一貫から皇帝に上りつめた劉備のような人徳も大事ですが結局は「武力」です。

実際に古今東西の歴史を見ても最終的には武力で決着をつけています。

「キミは何ができるの?」

そんな失礼かつ的確な攻撃に対して瞬時に一刀両断する技術は闘う力になります。
西荻窪駅前50軒の中に埋もれずに輝くことができます。

物やお金は失ってしまいますが身につけた技術は失われない。
この「身につけた技術は失われない」という言葉には原典があります。

それは私が20年以上習っている太極拳の総本山、台湾の師範がおっしゃっていた言葉です。

「武器ヲ持ッテモ飛行機デハ取リ上ゲラレテシマウケド、身ニツケタ技術ヲ取リ上ゲルコトハデキナイカラ、ミンナタクサン練習シテクダサーイ」

カタコトの日本語を懸命に使って話される師の言葉は今でも自分の支えとなっています。

歯科医師という肩書きがあればみんな分かってくれる、それはもはや幻想です。
昭和の時代までは歯科医院の看板さえ出せば患者さんがたくさん来てくれました。
しかし今どきは看板だけ出しても西荻窪駅前50軒の山に埋もれてしまうだけです。

実は「自分は歯科医師です」と自己紹介で名乗るのに少し恥ずかしさを感じます。

「もしかして偏差値30未満?」
「コンビニより多くて大変ね」
「医療界の負け組乙」

とかネガティブに思われているように感じるからです。
今どき歯科医師を名乗ったくらいでは誰も尊敬してくれないことくらい私にもわかります。

近年は歯科医師に限らず
「えっ、マヂですか!」
のハードルがどんどん上がっています。

ずっと昔はサラリーマン=エリートでした。
大学生=末は博士か大臣かと言われていました。

今は誰もただのサラリーマン、大学生に「えっ、マヂですか!」とは言いません。

業種を問わずそんな時に物を言うのが
「えっ、マヂですか!」
の技術です。

私の子どものように自分も小さな事から始めました。

「えっ、マヂですか!」と言われるような骨太なプラスアルファの技術を身につけて世界へ堂々と討って出れば日本の未来はまだまだ明るい。

もっとも勉強、努力をやめてしまったら、せっかくの技術も「ふ~ん」と軽く流されてしまうでしょう。

「えっ、マヂですか!」と言ってもらえるような入れ歯修理の技術をこれからも磨いていきます。

【関連記事】→いとう歯科医院の歴史