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・アゴの痛み、音、食事の悩み…顎関節症を咬み合わせ治療で解決! オルタナティブブログ

杉並区、西荻窪で、保険の入れ歯治療を数多く手がける歯医者、いとう歯科医院の伊藤高史です。

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アゴの痛み、音、食事の悩み…顎関節症を咬み合わせ治療で解決!↓

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・長年連れ添った入れ歯こそ最高の芸術品。杉並区西荻窪のいとう歯科医院が大切にする「使える入れ歯」

杉並区西荻窪で入れ歯治療を数多く手がけるいとう歯科医院の伊藤高史です。

先日、70代のSさんが当院を訪れました。30年もお世話になった近所の歯医者さんが引退され、困っていたところ、歯が欠けてしまったことがきっかけでした。

Sさんの欠けた歯は、長年の使用でプラスチックの詰め物が外れただけだったので、簡単な再充填で済みました。しかし、Sさんの特徴は、長年大切に使い込まれてきた入れ歯にありました。

修理と調整を重ねてきた「生きている入れ歯」

Sさんの入れ歯は、歯7本分の比較的大きなものですが、左右ともに**増歯修理(歯が抜けた部分にプラスチック製人工歯を継ぎ足す修理)**の跡がありました。これにより、使い慣れた入れ歯をその日のうちに修理し、使い続けることができていたのです。

また、歯ぐきは年月とともに変化します。Sさんの入れ歯は、その変化に適応するため、歯ぐきと接するピンク色の面に**歯科専用の入れ歯安定材「ティッシュコンディショナー」**が貼られていました。こうしたきめ細やかな処置のおかげで、見た目は古くても、入れ歯はSさんの口に驚くほどよく合っていました。

保険治療で、痛い入れ歯も調整できます。ほんの少しの調整で、長年の悩みを解消

唯一気になっていたのは、入れ歯を口の中に固定する**金属バネ(クラスプ)**が若干緩くなっていたこと。長年の着脱でバネが開いてしまうのは避けられないことです。Sさんは「こんなものかな」と思いつつも気にされていたようで、専用のプライヤーでクラスプの先端を少し内側に曲げたところ、入れ歯は吸い付くように安定。「カチカチと噛んでも歯ぎしりしても動かなくなった」と大変喜んでくださいました。

Sさんの入れ歯は、保険治療で作製できるプラスチック製のもので、もう5年以上も使い続けていらっしゃいます。このような長年修理、調整、お手入れをしながら丁寧に使い込まれた入れ歯こそ、最高の入れ歯であり、まさに芸術品だと私は考えています。

「新品=最良」ではない入れ歯治療

新品の入れ歯が最良の入れ歯ではありません。入れ歯は「道具」です。長年使うことで歯ぐきと馴染み、まるで身体の一部のように感じられるようになります。また、歯の本数や歯ぐき、噛み合わせ、歯、顎関節の形などは、年月とともに変化します。その変化に適応できるよう、修理や調整を重ねている入れ歯こそが、患者さんにとって本当に良い入れ歯なのです。

Sさんのように使い込まれた入れ歯に匹敵する新しい入れ歯を作ることは、ほぼ不可能です。特に近年、保険適用外の高額な自費治療で、金属床入れ歯や流行のシリコン入れ歯などを見る機会が増えました。しかし、これらの入れ歯は、さまざまな理由で修理や調整が著しく難しかったり、まったくできなかったりするものもあります。

保険治療でも、入れ歯はここまで治る。自費治療の落とし穴?調整費用にご注意を

見た目はきれいに見えても、入れ歯は後から調整や修理が必要になることがほとんどです。その際に、「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースを耳にします。さらに、自院で自費治療で作製した入れ歯の場合、その後の調整や修理も保険治療では行えないという保険のルールがあります。

例えば、保険治療で入れ歯を作れば、その後の調整は保険治療(3割負担)で月に1,000円〜2,000円程度で可能です(費用は入れ歯の大きさや口腔内の状況によって異なります)。しかし、自費治療で入れ歯を作製してしまうと、後からの調整や修理も自費治療となり、高額な費用がかかることがあります。

試しにスマートフォンで「自費 入れ歯 調整 費用」と検索してみてください。驚くほど情報が少ないことに気づくでしょう。多くの歯医者のホームページを見ても、「調整1回につき5,500円」と明記されているのを一つ目にしただけでした。一方で「自費 入れ歯 費用」と検索すると、山ほどの情報が出てきます。

「調整してもらいに行ったら1回5,000円と言われた。そんな話は聞いてない」

そんなトラブルの話を耳にします。はっきり言いますが、調整費用1回5,000円という値段設定は、「自費治療の入れ歯を作ったら、もう二度と来ないでね」という歯医者の意思表示だと考えてください。要するに、自費治療の入れ歯で高額な費用を受け取ったら、もうその後のことはやりたくない、という考えが透けて見えるのです。

ブラックジャックに学ぶ、自費治療の重み

そもそも自費治療とは、「保険治療ではできない『神の御業』を見せましょう」というものです。手塚治虫の漫画「ブラックジャック」を例にとりましょう。無免許ながらも、唯一無二の神業ともいえる手術テクニックで世界中に名を馳せる天才外科医ブラック・ジャック。彼が脳溢血で倒れた母親を助けてほしいと願う息子にこう言います。

「治る見込みは少ない、90%命の保証はない」
「だが、もし助かったら3,000万円いただくが…」
「あなたに払えますかね?」

息子は一瞬驚くも、「い、いいですとも!一生かかってもどんなことをしても払います!きっと払いますとも!」と答えます。

ブラックジャックは無免許なので保険治療はできません。無免許の者が医療を行う是非はさておき、自費治療とは、これほど大変なものだと私は言いたいのです。歯医者の自費治療で「自費治療をやったのに、うまくいかなかった」というトラブルの話も聞きます。もしブラックジャックが3,000万円の治療を失敗したらどうなるのか。漫画では描かれていませんが、とてつもないトラブルになることは想像に難くありません。

ブラックジャックの治療費3,000万円と、歯医者の自費治療100万円は、同じ重さを持つと考えるべきです。そう考えると、歯医者はおいそれとは自費治療に手を出せないはずです。しかし、気軽に自費治療を勧めてしまう歯医者の想像力の欠如ぶり、考えのなさは恐ろしいものです。自費治療を行う歯医者には、ぜひブラックジャックを読むことをおすすめしたいです。

保険治療でも、入れ歯はここまで治る

歯医者以外の日本の医療機関では、ほとんどの病気を保険治療で治してくれます。内科の医師からインフルエンザの治療に「保険治療にするか自費治療100万円か」と重い選択を迫られたことはないと思います。歯医者だけが自費治療に血道を上げているとしたら、それは医療の放棄でしかありません。

ただし、他院で作製された自費治療の入れ歯であっても、当院で調整や修理を行うのは、通常通り保険治療で問題なくできます。

今回のSさんは、保険治療の入れ歯を丁寧に調整、修理されている、まさに理想的な医療の形でした。そのため、入れ歯の治療方針としては、前の先生のやり方を踏襲するのが一番だとお伝えしました。Sさんは「あ〜良かった。それなら安心です。百万円とか言われたらどうしようかと思ってました」と、ほっとした笑顔で答えてくださいました。

Sさんは現在、3か月から半年に一度の定期的な歯周治療と、時々簡単な入れ歯の調整だけで順調に経過しています。今回行ったSさんのプラスチックの詰めものと入れ歯の調整は、保険治療1割負担で総額約1,500円でした(症状などによって費用は変わります)。

当院では、患者さんのライフスタイルやご希望を丁寧にお伺いし、最適な入れ歯治療をご提案しています。お困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。

【関連記事】→治療方針「以前に通っていた歯科医院でよく入れ歯のメンテナンスをしてもらっていたが、引っ越しや歯科医院の移転、閉院で通えなくなってしまい、どうしたらいいか困っている」


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・「抜かなくていい歯」を抜こうとする歯医者にご用心!歯を残したまま入れ歯を即日修理できたワケ、オルタナティブブログ

杉並区、西荻窪で、保険の入れ歯治療を数多く手がける歯医者、いとう歯科医院の伊藤高史です。

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「抜かなくていい歯」を抜こうとする歯医者にご用心!歯を残したまま入れ歯を即日修理できたワケ↓

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・“歯がある時より噛める”――80代患者が語った、入れ歯と職人技の真価

「センセ、これはもう入れ歯を作り直すしかないですよね」

診察室に入って開口一番におっしゃるのは80代男性のMさん。

いやいや、口の中を見ないとわからないので。

Mさんが困っているのは歯の揺れ。
ひだり下の歯、3本が前後左右に大きく揺れます。
これは抜くしかない。

Mさんもこの歯は抜くしかないと理解されていました。

それで
歯を抜く→入れ歯を新しく作る
と考えたそうです。

Mさんは他院で作製された金属床の入れ歯を長年使っています。
入れ歯の出来具合は良好で、歯が揺れるまでは何ごともなく使っていました。
せっかく長年順調に使っている入れ歯なので新しく作り直すのはもったいない。

いえ、材料費とか通院回数とかがもったいない等とケチくさいことが言いたいわけではありません。

長年使い続けている入れ歯は、もう患者さんに馴染んでいます。
その長年の積み重ねを越える作品を新しく作るのは至難の業だと言いたいのです。
そんなに夢のように良い入れ歯がパパッと作れるわけではない。

仮にがんばって作ったとしても
「これまで使っていた物のほうがいいよ」
となって新しい入れ歯はケースに入ったまま…
そうなる可能性は高いです。

ではMさんのケースではどうするか?

ゆるい入れ歯には保険治療で歯科専用の入れ歯安定剤ティッシュコンディショナーを貼ると安定します

グラグラの歯、3本を抜いてから入れ歯にプラスチック製人工歯を継ぎ足す増歯修理を行ないます。
Mさんの場合、ひだり下の歯を3本抜くと残りはみぎ下に1本が残るだけになります。
もっとも今回の治療はみぎ下は関係ないので、入れ歯はそのまま使えます。

残っている歯に引っかける金属バネ(クラスプ)の修理などはしなくていいので簡単な修理です。
とはいえ歯を3本抜くのは意外と大きな治療ではあります。
抜いた穴(抜歯窩)から出血が多いので糸で縫い合わせて傷口をふさぐのと念のために化膿止めの抗菌薬を処方します。

抗菌薬とはいわゆる抗生物質のことです。
一般的な歯科で感染予防で使うのは、アレルギーがなければペニシリン系のアモキシシリンです。

参考文献:JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2016 ―歯性感染症―: 日本感染症学会
https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/guideline_JAID-JSC_2016_tooth-infection.pdf

アモキシシリンは一般的に「第1世代」と分類されます。

1972年に開発された古くからある薬です。
私の父もずっと使っていました。

第1世代とは、要するに「古い」ということです。
アモキシシリンはペニシリン系抗菌薬です。
似たものでセフェム系抗菌薬というものがあります。

セフェム系には第1世代~第4世代まであります。
ペニシリン系抗菌薬にはそのような世代はないので厳密には第1世代と言うのはおかしいのですが、ペニシリン系セフェム系と一緒くたに扱うことも多いのでペニシリン系抗菌薬のアモキシシリンも第1世代と通称されるようです。

もう30年くらいの話ですが当時最新だった第3世代経口セフェム薬がもてはやされた時代がありました。
商品名としてはフロモックス、メイアクト、セフゾン、トミロンなどです。
第2世代セフェム系抗菌薬のケフラールを大学病院でも使っていて、その後継薬が出たとのことで私も上司の先生の指示で処方した記憶があります。

しかし最近の研究でこの第3世代経口セフェム薬の薬効に疑義が呈されるようになりました。

経口の第三世代セフェム系抗生物質が「悪者扱い」される主な理由は、消化管からの吸収率が低く、効果が期待できない場合があること、そして耐性菌を生み出しやすいという点が挙げられます。

・吸収率の低さについて
経口の第三世代セフェム系抗生物質は、一般的に消化管からの吸収率が非常に低いとされています。
たとえばアモキシシリンは吸収率90%である一方、フロモックスやメイアクトなどは吸収率が20%程度しかないと指摘されています。

・効果が疑問視されるように
吸収されなかった薬剤は体外に排出されるため、腸管内の細菌感染以外にはほとんど効果がないと指摘されています。

・耐性菌の増加も
経口の第三世代セフェム系抗生物質は広範囲の細菌に効果を示すため、感染症を起こしている細菌だけでなく、腸内細菌などの常在菌も減少させてしまいます。
その結果、耐性菌が定着しやすくなる菌交代現象を引き起こす可能性を指摘されるようになっています。

・低カルニチン血症のリスク
ピボシキル基を持つ経口の第三世代セフェム系抗生物質は、重篤な低カルニチン血症を引き起こす可能性があり、低血糖や痙攣などの症状を引き起こすリスクがあることも指摘されています。

これらの理由から、経口の第三世代セフェム系抗生物質は、乱用や不適切な使用を避けるべきだと考えられています。

参考文献:学会トピック◎第34回日本環境感染学会総会・学術集会
「『だいたいウンコ』な経口第3世代セフェムは病院で採用すべきでない」のか?
「病院で第3世代経口セフェムの採用は必要か」Pros&Cons
2019/04/01
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/hotnews/int/201904/560401.html

定期的な入れ歯調整メンテナンス。費用は保険治療3割負担の方で総額約2,000~3,000円

このようなことから医科では処方することが少なくなっていますし、歯科ではもう第3世代経口セフェム薬を処方する理由は全くありません。

ただし2024年ころに薬の流通の混乱があって極度に抗菌薬が出回らなくなっています。
薬局でさえもアモキシシリンが入荷待ちなんてことがあって、そのような際は在庫がある第3世代経口セフェム薬をやむを得ず、仕方なく処方する場合があります。
ただそんな混乱があったものの2025年には少し回復しているようでアモキシシリン入荷待ちは減ってきています。

そのようなことで抜歯後に歯グキが腫れたり治りが悪くなったり全身に影響が出たりすることを防いでいます。
その日は他の患者さんが待っておられたので、その患者さん方の治療が終わるまでMさんには待合室でガーゼを傷口で噛んで圧迫する止血をしてもらいました。
45分ほど経ってから再び拝見するともう出血はなくなっています。

これならば入れ歯の増歯修理も簡単です。

やはり出血を気にしながらだと入れ歯修理も難しくなりますし、
患者さん→自分→他の患者さん
という感染もこわいので、しっかり止血。
そのために止血の時間を確保するのは大切なことです。

ところでその抜歯した部分へ、入れ歯にプラスチック製人工歯を継ぎ足すことでその日のうちに歯並びを回復させる増歯修理。
金属床入れ歯ならではの困難があります。

それは金属とプラスチックはくっつかない、ということ。
プラスチック製の入れ歯だったらプラスチックで修理するのは簡単です。
しかし金属の部分にプラスチックで修理するのはひと工夫必要です。

ひと工夫、それは金属床に穴を開けること。開けた穴にプラスチックを流しこんで物理的な嵌合力に期待します。
歯を削るエアタービンに金属を削る用のカーバイトバーを付けます。

たとえば金属のかぶせものを削ることはあるので、そういうバーはあるわけです。
とはいえ口の中のかぶせものよりは金属床入れ歯の方が格段に分厚いです。
だから削るのも大変。

穴を一つ開けるごとにカーバイトバーを一本使うので3本使って3つの穴を開けました。
これならば修理した部分は入れ歯にしっかり維持してくれます。
こうしてグラグラの歯、3本を抜いてから入れ歯にプラスチック製人工歯を継ぎ足す増歯修理は、その日のうちに完了できました。

「歯がある時よりも、これならしっかり噛めます」

Mさんは笑顔でおっしゃってくださいました。

ここに書いた内容を説明すると
「これは作り直したりせずに、このまま使った方がいいですね」
と考え直されたようでした。

修理が上手くできると、新しく作り直すよりもずっと短い時間で調子良い入れ歯に修理できます。
それは本当に患者さんのためになることです。

そんなMさんに聞かれたことがあります。
それは

「センセみたいに職人技を持っている歯医者って少ないでしょう?」

たとえば入れ歯を作るのも歯科技工所に丸投げ、歯列矯正も業者に丸投げ、そんな歯医者は増えていると思います。

でも今回のように職人技が活きる場面が入れ歯治療には数多く存在します。

昔に都心で勤務していた時代に
「もうこれからの時代はインプラントがあるから入れ歯なんか廃れてくるよ」
と先輩の歯医者から言われたことがあります。

…あれから30年近く経っていますが、そんな時代は来ていません。

【関連記事】→治療方針「以前に通っていた歯科医院でよく入れ歯のメンテナンスをしてもらっていたが、引っ越しや歯科医院の移転、閉院で通えなくなってしまい、どうしたらいいか困っている」


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・歯医者で「命に関わる心臓の病気」を防ぐ!?〜60代男性Kさんのケース〜

杉並区西荻窪で入れ歯治療を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。

「あ、例の薬は飲んでから来ました」

と言って入ってこられたのは60代男性のKさん。

歯はそろっていて入れ歯もありません。
歯の揺れもありません。

数本の虫歯治療と定期的な歯周病治療を行なう治療計画を立てたのですが、定期的な歯周病治療を行なうために、解決しなければならない問題がありました。

定期的な歯周病治療とは

・超音波の力で歯石を除去する「スケーリング」
・回転するエンジンの力でブラシと特殊なペーストで歯面の汚れを除去する「機械的歯面清掃」
・9000ppmという高濃度のフッ素を歯に塗って虫歯を予防する治療「フッ化物歯面塗布処置」

を行ないます。
普通の場合には問題になることは何もない治療です。

しかしKさんの場合に問題となるのは「スケーリング」。
何も対策を講じなかったらスケーリングが絶対にできない事情がありました。

一般的には歯医者だけでなく歯科衛生士でもできる業務ですが、難しくしているその事情とは…

心臓の病気です。

具体的には心臓弁膜症でした。
・心臓弁膜症(しんぞうべんまくしょう)とは、心臓にある4つの弁のどこかに異常が起こり、弁の働きができなくなる病気です。

弁が固くなったり切れたり癒着したりすることで、血液の流れをコントロールできなくなり、心臓に負担がかかります。
放置すると心不全や突然死を引き起こす可能性があります。

弁膜症には「狭窄」と「閉鎖不全」の2つのタイプがあり、弁の開きが悪くなる「狭窄」と、弁が閉じなくなり血液が逆流する「閉鎖不全」があります。
また、両方が同時に起こることもあります。
とくに「大動脈弁」と「僧帽弁」の異常は頻度が高く、重要です。

高齢化の進行とともに加齢による弁の変性や石灰化が増えており、65歳以上の約10人に1人が罹患すると言われています。

参考文献:https://www.cvi.or.jp/9d/862/

心臓の病気と歯周病との関連が近ごろは注目されるようになりました。

スケーリングを行なうと歯グキから出血します。
歯グキに炎症を起こしている菌を取り除く意味もあるのですが、逆に出血するということは口の中のバイ菌が血管の中に入り込むということでもあります。

するととくに歯周病の原因菌が血管を通って体の中を巡り、心臓にくっついて病気を引き起こすことが分かってきました。
動脈硬化や感染性心内膜炎は命に関わる病気です。

・動脈硬化について

まずは動脈とは何か、そして動脈硬化とはどのような状態なのか、私たちの身体にどのような影響を及ぼすのかを簡単にみていきましょう。

動脈の役割
血管には大きくわけて動脈、静脈、細小動脈、毛細血管の4つがあります。

このうち動脈は、心臓から血液を全身に送り届け、酸素や栄養分を運搬する役割を担っています。

動脈は、内膜、中膜、外膜の3層からなるパイプのような構造で、心臓から送り出された血液は、約20秒で全身に届けられます。

心臓から勢いよく押し出される血液を滞りなく全身に届けるために、動脈は強く、柔軟性があります。

動脈の柔軟性を保つうえで重要な働きをしているのが、動脈の内膜の表面にある血管内皮細胞です。

血管内皮細胞は、血管が収縮したり拡張したりする機能を維持する物質を作り出しています。

動脈硬化とは?

動脈硬化とは、文字どおり動脈が硬くなる状態のことです。

この過程は加齢によるところもありますが、個人差が大きく、とくに血液中のコレステロールが強く影響しています。

なかでもLDL−コレステロール(悪玉コレステロール)が多く、HDL-コレステロール(善玉コレステロール)が少ないと動脈硬化が進みやすいことがわかっています。

動脈硬化になると、血管や心臓に大きな負担がかかって心臓の機能が低下したり、血管が破れて生命にもかかわる大きな病気を発症するリスクが高くなります。

動脈硬化には、粥状動脈硬化(アテローム性動脈硬化)、中膜硬化(メンケベルク型動脈硬化)、細動脈硬化がありますが、一般的に動脈硬化といえば、粥状動脈硬化のことを指します。

生活習慣病や肥満などにより、血液中のコレステロールが増加したり、高血圧や高血糖の状態が続くことで、血管壁に負担がかかります。この状態が長く続くと、血管内にLDL-コレステロールや細胞が蓄積していきます。

これを粥腫(じゅくしゅ)といいます。
粥腫が蓄積することで血管が狭くなったり、粥腫が剥がれたりすることで血液の流れを塞いでしまうことにもなります。

動脈硬化を起こした血管は、ちょうど古い水道管が汚れて詰まったり、さびが剥がれやすくなるのと同じと考えるとわかりやすいでしょう。
血管が狭くなると必要な酸素、栄養が全身に行き渡りにくくなり、さまざまな臓器や組織に影響が及びます。

さらに血管が詰まってしまうと、臓器や組織に血液が流れず、その場所が壊死して狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの心臓や血管の病気を発症しやすくなります。
また、硬くなった血管はもろく、破れやすいため、脳出血やクモ膜下出血の発症リスクが高まります。

参考文献:動脈硬化NET
https://www.domyaku.net/about/

・感染性心内膜炎とは

感染性心内膜炎(Infective endocarditis)は、心臓の内側に細菌が感染し、これによる心臓弁の穿孔等の炎症性破壊と菌血症を起こす疾患です。
起炎菌としては口腔内常在菌である緑色連鎖球菌や黄色ブドウ球菌が多く、弁尖などを破壊することによる心不全がもっとも危険です。

「そんな大げさな」
と思われるかもしれませんね。

歯科治療によって血管にバイ菌が入る「菌血症」の確率は、これまた数字で出ています。

「日常生活や歯科治療における菌血症の発生頻度」によると
抜歯で10~100%
スケーリングで8~79%

となっています。
こんな高い確率ならば予防が絶対に必要です。

参考文献:http://www.kankyokansen.org/journal/full/03405/034050237.pdf

それではどのように対応するか。
このような症例に対しては実は対応方法が決まっています。

入れ歯治療などは口の大きさ、入れ歯の形、適応できる範囲、個人の好みなど個人差があまりに大きいので、それこそ百人の歯医者がいたら対応方法が百通りある、みたいになってしまいがちです。

いっぽうこの心臓に病気を持つ患者さんの、感染性心内膜炎を予防する方法には概ねハッキリした一つの答えがあるのです。
「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」
です。

参考文献:https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_nakatani_h.pdf

保険治療で、入れ歯と口の機能検査ができます。隠れた不調がわかります

歯科で出血するような治療を行なう場合、予防的抗菌薬投与を行なうことが推奨されます。

具体的にはアモキシシリンという古典的ながら今でも歯科では第一に推奨される抗菌薬を2グラム。
スケーリングなどを行なう1時間前に単回投与。
と定められています。

歯科治療で使うアモキシシリンは1錠中に250ミリグラムなので8錠を一気に飲むことになります。

ちなみにこの8錠は、歯医者では処方できません。
私が処方できれば歯の治療前に病院へ行く煩わしさがなくて良いのですが、そうはいきません。

たとえば歯医者が処方せんに
「アモキシシリン8錠、単回投与」
などと書いて薬局に持っていったら、薬局から問い合わせが来てしまいます。

歯医者はそのような薬の処方が保険治療で認められていないからです。

なぜ歯医者が処方してはダメなのか?

なぜならその抗菌薬は感染性心内膜炎の予防のために使うわけですが、感染性心内膜炎を検査、診断し治療できるのは歯医者ではなく医師だからです。

歯医者は感染性心内膜炎の検査、診断、治療はできません。
だから感染性心内膜炎を予防するための抗菌薬8錠は医師に処方してもらう必要があるわけです。

では抗菌薬を処方してもらいたい場合に医師と歯医者との連絡をどうするか?

これもまた保険治療においてルールが決まっています。
それが「診療情報等連携共有」です。

歯医者から医師へ紹介状のような形で文書提供し医師から返事の文書を受け取ることで行なうものです。
当院ではもう決まったひな型があって、必要事項を記入して医療機関に郵送できるようになっています。

Kさんの場合も医療機関と連絡を取り合って、スケーリングの前には医療機関で抗菌薬を処方していただくことになりました。

余談ですが歯医者の求めに応じて医科が文書で対応してくださった場合には医科も保険点数が算定できます。
その項目などを示した案内文書も同封して医科の先生も対応しやすいように工夫というか配慮もしています。

論文をベースとしたガイドラインに則って保険治療の流れで行なうことなので安心して治療が受けられるように体制を整えています。
こうしてKさんは3~6か月ごとに安全に歯周病治療を行なって歯グキを良い状態に保っています。

また心臓の病気を予防することで医療自体にも歯医者が関わっているのです。

【関連記事】→歯・口腔に関する悩み「Q.歯ぐきが腫れている。どうすれば良いですか?」