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・「もう歯がない…」と肩を落とす50代男性。4万5千円で、歯を見せて笑える顔を取り戻した「逆転の治療計画」とは?


「歯がないのですが、何とかなりますか?」

不安げな様子で背中を丸めて入っていらしたのは50代男性のZさん。

歯自体は残っています。

ただ上の前歯5本分が歯の根だけの状態です。
奥歯も多くが歯の根だけ。

歯の根の状態は良好。

このような良好な状態ならば、根の中に最新鋭のファイバーでできた土台を埋め込んで、かぶせものを作れば前歯の形を回復できます。

ただし作れれば…の話です。

単純に前歯を作れば良いわけではない事情がありました。

その事情とは、カチッと噛んでもらうと下の前歯が上の歯の根と完全に噛みこんでしまっていること。

つまり「物理的に」前歯のかぶせものを作るスペースがないわけです。

よく目にするトラブルで
「かぶせものが簡単に壊れた、外れた」
というものがあります。

それは今回のZさんのようにスペースがない所に無理やりかぶせものを、それも高額な自費治療でセラミックなどを入れてしまう。

そうすると自らの噛む力でかぶせものを壊してしまいます。

かぶせものなら、また作り直せばいいのですが、歯自体がグラグラ揺れてきたとか、歯の根が割れたとかが起こったら、もう歯を抜く以外の方法がなくなってしまいます。

そうならないためには、いきなり前歯を治すのではない、ひと工夫が必要です。

そのひと工夫とは奥歯です。

奥歯も失っている部分、歯の根だけの部分があります。

その奥歯を先に形を復活させることです。

そこで今回はまず、ひだり下の奥歯を失っている部分に小さな入れ歯を入れることにしました。

まず入れ歯を作るところがポイントです。

前歯のかぶせものを作るスペースを作るための入れ歯だからです。

なぜ、ひだり下奥歯部分に入れ歯を作ることにしたかというと、ひだり上の奥歯が健全だから。

ムシ歯も歯周病もない。

だから健全なひだり上の奥歯と、ひだり下奥歯の入れ歯で噛ませて咬み合わせを高くすることにしたわけです。

ところで咬み合わせを高くするのは、かなり大きな治療です。

保険治療で、痛い入れ歯も調整できます

今回のような症例は歯科の世界では、いわゆる難症例とされています。

どのくらい高くすれば良いか?
どのくらい高くできるのか?

何ミリ高くしていい、何ミリ高くできる、といったことを客観的に測る方法がないからです。

咬み合わせを変えると、とくにアゴの関節に影響を及ぼします。

人によっては顎関節症の症状が出てアゴが痛くなったり口が開かなくなったり、極端な症例では手足の痺れ、めまいなど全身に影響する不定愁訴(ふていしゅうそ)と呼ばれる症状を起こす可能性も否定できません。

だからこそ、まず「入れ歯」なのです。

入れ歯だったら咬み合わせを高くする、低くする、の調整が簡単にできます。

症状が出るなら入れ歯ですから外してしまえば症状は止まります。

そのようなことから、まず入れ歯を作って合わせました。

ひだり側奥歯だけですが咬み合わせが高くなったおかげで、奥歯でカチッと噛むと前歯は3~4ミリほどのスキマができました。

ギリギリなスキマですが、これならかぶせものを作ることができます。

もっとも、まず咬み合わせを作ったのは、ひだり側だけ。

患者さんには状況をよく説明して1週間使っていただきました。

1週間後に話をうかがうと、やっぱり最初の2~3日は違和感あったそうです。

しかしそれ以降は慣れて、ひだり側で食事もできるようになりました。

咬み合わせが決まれば後は簡単。

みぎ奥歯に金属のかぶせものを作って、みぎ側奥歯でも噛めるようにしました。

みぎ側奥歯もムシ歯が大きかったのですが、入れ歯によってスペースができたのでかぶせものを作ることができました。

とはいえみぎ奥歯のスペースもギリギリではあります。

銀歯になってしまいますが保険治療で金属のかぶせものを作りました。

・強度がある
・調整しやすい

ギリギリの状況で作るものなので長持ちするかどうかは分かりません。

だからこそ保険治療で行なう方が後から融通がききます。

奥歯のかぶせものが長持ちしない可能性は否定できません。

しかし長持ちしなかったら、かぶせものをあきらめて新たに入れ歯を作ることは簡単にできます。

これが仮に自費治療50万円のセラミックのかぶせものを入れて長持ちしなかったら、とてつもないトラブルになるはずです。

50万円のかぶせものを入れるなら10年使えて当然だからです。

しかし難症例の場合、そんな見通しは立たないに決まっています。

だから見た目は仕方ないのですが「あえて」金属冠にしました。

患者さんも納得してくださって着けた金属冠でしたが、大変調子よく両側奥歯でよく噛めるようになったと笑顔でおっしゃってくださいました。

歯が抜けても保険治療で入れ歯に増歯修理

これでようやく前歯の作製に取りかかります。

ここからはあまり説明することはありません。

一般的な白い歯の色の前歯を保険治療で作製。

ここでも保険治療を行なうことを強くお勧めします。

やはりスペースがギリギリだから。

歯の根に保険治療で出来る最新鋭のファイバーコアを用いて歯の根から伸びる土台を作りました。

かぶせものを作れるまで土台を作ると実は下の前歯と当たってしまいます。

そこで下の前歯の先端を2ミリ削って何とかかぶせものを作れるスペースを作った次第。

こんなギリギリの症例でセラミックや貴金属の作品など作ったら、これまで書いてきたようなトラブルになることは確実。

そんなギリギリな症例には、後から修理調整しやすいようにハードレジンジャケット冠(HJC)という強化プラスチックのかぶせものを使います。

色も遜色ないものができます。

「おおっ、やっぱり歯があるのはいいですね~」

とZさんはきれいな歯を見せて笑顔でおっしゃってくださいました。

今回に関連する話で、自費治療専門歯科医院に勤めていた知人から聞いた内容に背筋が寒くなる思いをしました。

それは、今回のと同じような状況で奥歯が必要であることを知人は患者さんに説明したそうです。

しかし自費治療専門なので奥歯を作るのも高額な自費治療。

すると前歯だけ作るのと比べて、奥歯と前歯を作ると金額が倍になってしまいます。

結局100万円か200万円か、という話になってしまったそう。

それで患者さんは
「いくら何でも200万円は…」
とのことで100万円で前歯だけ作ったものの、案の定あっという間に壊れてしまった。

それはそれは、とてつもないトラブルになったと言っていました。

自費治療とは何でも治る魔法の治療法なんかじゃありません。

大いに矛盾のある危険な施術と思ってください。

とくに巷の歯医者のホームページにおいてよく見られる主張で
「保険治療は安いだけ」
みたいな内容があります。

だからちゃんとした治療は保険ではなく自費治療で、という論調です。

しかしこれは近視眼的な暴論です。

なぜなら歯科以外の医科においては、ほとんどが保険治療で行なってくれるからです。

子どもがカゼ引いて近所の内科に行って

「保険の薬なんかダメです。百万円の薬にしなさい」

そんなこと言われないはずです。

保険治療は安いだけ

そんなことを医科の先生に言ったらコラーと怒られます。

とくに歯医者も削る、抜く、詰めるだけでなく、悪化しないように「管理」する概念が近ごろの保険治療において盛んに盛り込まれるようになりました。

この5年くらいの話です。

医科でも健診の重要性が増しているので歯科でも口腔機能検査、口腔機能管理という名前で保険治療で用いられています。

このように安心できる価格の最新の保険治療で当院は患者さんに貢献しています。

今回行なったZさんの歯を作る治療は14回の通院でした。費用は保険治療3割負担で総額約4万5千円でした(費用は部位や本数、症状などにより変わります)。

【関連記事】→歯を抜くことについて「Q.歯が抜けた部分がありますが入れ歯を使っていません。そのままで大丈夫でしょうか?」


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・「たった3ミリ」で劇的変化! 総入れ歯の「痛くはないけど、気持ち悪い」耐え難いくちびるの違和感が消えた理由

顔が下がる感じ
発音しにくい
くちびるが引っぱられる

微妙な表現をされるのは50代女性のNさん。

痛い、とかならば痛みを起こしている原因を探って取り除けばいい。

多くの場合は痛みを起こしている部分は直径2~3ミリほどの赤い潰瘍になっています。

だから目で見てわかるわけです。

ところが先ほどの訴えは目で見てわかる病変ではありません。

上下とも歯が一本もない総入れ歯です。
他院で作製されたものですが、あまり悪い出来には見えず、作り手の努力がうかがわれます。

本当に悪い出来ならば、そもそも口の中に入れていられません。

実際に患者さんはいつも口の中に入れて食事もできています。
でも使いにくい、違和感がぬぐえない。

正直に申し上げると、これは苦戦が予想されました。

というのは総入れ歯になった経緯です。

元々は7本の歯を金属冠でつなげた大きなブリッジが入っていました。

前歯はそれで何とか格好がついていたのですが、ある時から支えの歯が揺れ出して、あえなく抜歯に。

するとそれまで入れ歯を全く使ったこともなかったのが、いきなり歯14本分の総入れ歯となってしまいます。

当院に長く通っている方は比較的早くから着脱可能な入れ歯を入れることをおすすめしています。

たとえば歯が2本抜けた時点で2本分の小さな入れ歯を入れる。

年月が経って他の歯が抜けたら、抜けた部分は入れ歯にプラスチック製人工歯を継ぎ足す増歯修理を行ないます。

これまで入れ歯を使っているならば増歯修理して多少は入れ歯が大きくなって、2本分だったのが3本分の入れ歯になったとしても違和感を生じることなく、すぐに適応できるものです。

こうして少しづつ入れ歯が大きくなって、4本5本6本分となって最終的には歯が一本もない左右14本分の総入れ歯になる。

もちろん総入れ歯になるまで何十年もかかるわけです。

このような経緯で総入れ歯になったのならば問題を起こすことは少ないです。

もちろん歯が抜けたりしないように努めるのが歯医者の役割であることは百も承知です。

ですが何十年か経過して総入れ歯になる患者さんはそれなりにいます。

ですから患者さんと信頼関係を築いて時間もかけていくことで、歯がないことを患者さんが受け入れていく。

そのような方向性を決めて患者さんにも徐々に納得して受け入れていただけるよう努力しています。

患者さんの心の受け入れと総入れ歯使用については研究はされているものの、具体的な心の受け入れを数値化して総入れ歯の成功率をパーセントで示した論文などは、私が探した限りでは見つけることができませんでした。

たとえば「入れ歯を受け入れる心チェッカー」みたいなマシンがあってアゴに機械を押し当ててピピピッと測り、10以上なら総入れ歯できる。10未満だとできない、みたいな。

そんな便利な機械は残念ながら存在しません。

ですからなるべくトラブルにならないように穏やかに、歯がない状況にソフトランディングさせるのも必要な技術です。

それには時間もかかります。

それが入れ歯ナシから、いきなり総入れ歯。
これがどんな状況かというと…

保険治療で、痛い入れ歯も調整できます

あなたが明日突然、手足がなくなって車イスと義手になったと想像してください。

そもそも
「何でこうなった」
とパニックするところから始まるでしょう。

いきなり車イスと義手など使いこなせるはずがないことは想像できるかと思います。

これがたとえば難病などで何十年か経つ間に少しづつ手足の自由が効かなくなる。

こちらはこちらでもちろん大変な状況ではありますが、少なくとも時間はある程度あります。

明日からいきなり手足が動かなくなる難病というのは、あまりないでしょう。

それならば対策も考えつきそうですし少しづつですが覚悟感みたいなものもできて受け入れると思います。

このようなことと同じ状況と私は思いました。

総入れ歯になったことに対して、いわばパニック状態にあるわけです。

それゆえの難しさ。
時間が経つのを待つしかない。
そのようなことも考えられます。

そんな中でも一所懸命に口の中に入れて使ってくださっているのですから素晴らしいことです。

入れ歯を作った歯医者の先生は良い腕前なのでしょう。
それだけに問題を解決したい。

とはいうものの症状を起こす原因がハッキリしないのです。

このような時は、とにかく話を聞くこと。

先ほどの訴えの中で一つヒントがありました。

それは
「くちびるが引っぱられる」
というもの。

これは入れ歯の前歯の歯並びが前に出過ぎているときに起こる症状です。

とはいえ上下の入れ歯でカチッと噛んだり歯ぎしりしたりした時の歯並びは全く悪くありません。

一箇所で安定して噛めますし歯ぎしりも前後左右に不自由なくできます。

この歯並びを変えるのは相当な勇気が必要です。

たとえば噛んだときの垂直的な高さを変えてはいけません。

垂直的な高さとは、カチッと噛んでもらった状態で鼻の下からアゴの下までの高さをノギスで計測します。

まずはそれを変えないように気をつけます。

入れ歯を新しく作ると往々にしてその高さが変わってしまうことがあります。

また咬み合わせの高さがとくに低くなると下アゴが前に出てしまいます。

そのまま入れ歯を作って無理やり前に出たアゴの位置で使い続けると顎関節症になったり、よく噛めなかったりといったことにつながります。

すると違和感が大きくて使えない入れ歯になってしまう。

とくに今回のNさんのような違和感を強く訴える方は、そうなる可能性が大きい。

気軽に入れ歯を作り替えるなどのことはしない方が無難です。

自動車やスマホなどは新しい物の方が絶対に性能が上です。

なぜならそのように作っているからです。

ですが入れ歯はそういった「物」とは違う概念で成り立っていると考えてください。

新しく作っても上手くいかないことがある。
むやみやたらと新しく作ることが逆にトラブルの元となる。

他にたとえる物がないので表現が難しいのですが、新しく作るタイミングなどは患者さんと歯医者とでよく相談して
「これはもう作り替える以外に治療法がない」
そんなタイミングが作り替える時です。

だから定期的に長年通って信頼関係を築き上げることが何より大切です。

当院では祖父の代から何十年も通っている方も大勢おられます。

それはトラブルの少ない、なおかつ効果の高い治療法を選んでいるからと思っています。

ですから今回は咬み合わせの本質は変えずに前歯の出過ぎていることだけを変えます。

具体的には前歯の後ろ側に歯科用プラスチックを盛って出過ぎている部分を削ります。

ちなみになぜプラスチックを盛るかというと、後ろ側にプラスチックを盛らずに歯の前側を削ると歯がなくなってしまうからです。

前歯の後ろ側に歯科用プラスチックを盛って出過ぎている部分を削ります

粉と液を混ぜると硬化するプラスチックを盛って、硬化するまで5分ほど待ってから前歯の前側を削ると、歯並びが一本分ほど後ろ側に下がりました。

「あっ!_くちびるの引っぱられる感じがなくなりましたよ!」

Nさんは驚いた顔をして笑顔で答えてくださいました。

変化としては3ミリほどです。

多少は歯が前に出ていても不自由なく使っている人は大勢います。

ですから歯医者がこの3ミリの違いに気がつくのは、なかなか難しいものです。

ただ当院では同じように前歯を後ろに引っこめる治療をいくつも手がけていたので、気がつくことができたのだと思います。

まずは下の総入れ歯で前歯の位置を後ろに引っ込めました。

同じことを上の総入れ歯でも行ないました。

実はこれでキレイさっぱり全ての症状、違和感を解決…というわけにはいきませんでした。

とはいえ、これ以上歯並びをいじるのは無理でした。なぜならこれ以上も削ると入れ歯に穴が開いてしまうところまで入れ歯が薄くなっていたからです。

入れ歯の厚みをゼロというわけにはいきません。

ただ、これまでと比べれば格段に使い良くなったとのこと。

後は3か月~半年ごとに微調整しながらNさんも使う努力をしてくださっています。

今回行なったNさんの入れ歯を調整修理する治療は5回の通院。費用は保険治療で3割負担で総額約1万円でした(症状や治療部位などにより費用は変わります)。

【関連記事】→入れ歯の違和感「Q.違和感のない入れ歯がほしい。そんな希望は叶いますか?」


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・10年以上愛用!「身体の一部」になった入れ歯を捨てない理由:「カチカチ」と噛める保険治療の修理術(費用1,000円)

「3か月経ったので定期的な調整で」

とのことで来院されたのは80代男性のTさん。
律儀に3か月ごとにいらっしゃいます。

10年以上前まで記録を遡っても作製した記録がありませんでした。
もっと前に当院で作製した入れ歯です。

なぜ分かるかと言うと上の入れ歯の上あご部分に保険治療でできる金属製の補強床が入っているからです。

この補強床とは、私も父から教わって初めて知った材料です。

他の歯科医院の作品でお目にかかることは、まずないと思われます。

高額な自費治療で用いられる、いわゆる金属床入れ歯は見た目はカッコいいのですが長い目で見ると色々と問題を起こす作品です。

たとえば金属部分が歯グキと当たって傷を作ってしまう場合にプラスチックなら遠慮なく削ることができます。

しかし金属を削ると入れ歯が折れてしまう構造になっていることがあります。

すると保険治療の入れ歯なら簡単に治せるのにような治療すらできません。

他にも致命的な欠点がいくつもあります。

金属床など高額な自費治療について、他の歯医者のホームページではあまり出てこない話については、当院のホームページや他のブログでもたくさん書いています。

だからここではこれ以上は割愛させていただきます。

上の入れ歯は、この保険治療の補強床のおかげもあって10年以上も使えているので自費治療に負けない力を備えていると考えて良いのでしょう。

いっぽう下の入れ歯は、元々は残っている歯がある部分入れ歯でした。

歯が抜けると、抜けた部分にブラスチック製人工歯を継ぎ足す「増歯修理」を繰り返して、最終的には残っている歯が一本もない総入れ歯となりました。

多くの場合は部分入れ歯から総入れ歯になると不適合が著しくなって使いにくくなります。

だから新しく総入れ歯を作ることが多いです。

しかしTさんは作り替えずそのまま使っていました。

それはもちろん増歯したツギハギだらけの入れ歯を見れば経緯がよくわかります。

もっとも下が総入れ歯になったのも私が当院で治療をし始める前の話です。

当院では10年分はカルテを保存しています。

10年以上も来院のなかった患者さんのカルテはシュレッダーをかけてしまいます。

しかしTさんの場合は来院が定期的に何十年も続いています。

一冊の本のような分厚いカルテの束になっています。

10年以上前の記録など処分しても良いのですが整理整頓がどうも苦手なので、そのまま積まれてしまうという。

それで20年分くらいは記録を遡れるものの下の入れ歯に増歯修理した記録も探してみたものの見つけることができませんでした。

そのような経緯で上下とも総入れ歯です。

保険治療で、痛い入れ歯も調整できます

ちなみにこの5年ほどの話ですが、歯科治療も
「入れ歯が合った、合わない」
みたいなフワッとした印象だけで判断するのでは、いかがなものかと言われるようになりました。

そこで検査をして正確な数値を出して、科学的根拠に基づいた治療をしましょうという流れになっています。

具体的には「口腔機能検査」を行ないます。

7項目の検査をして数値を元に治療をします。

さらにこの治療も「削る、詰める」だけの仕事だけでは不十分とされるようになっています。

入れ歯とは杖や車イスと同じ道具です。

道具を使いこなせるようにするために必要なのが「リハビリテーション」です。

だから治療の中にリハビリテーションの概念が導入されました。

入れ歯や口、舌、飲み込みや咀嚼の性能を口腔機能検査で計測し、その結果に基づいてリハビリテーションを継続的に行なっていく。

入れ歯の調整も、たとえるならば杖の長さや車イスの背もたれの角度を調整するようなリハビリテーションを円滑に進める目的で行なわれるわけです。

この口腔機能検査は保険治療でできます。

一つひとつの検査は、保険治療3割負担の方で500円くらいでできるものです。

当院ではこの口腔機能検査と、それに基づいた口腔リハビリテーション治療を積極的に行なっています。

そのようなことでTさんは、入れ歯の修理調整、口腔機能検査が保険治療に導入されてからは検査とリハビリテーションを行なって、ずっと調子の良さを保ってきました。

今回の入れ歯を拝見すると、生活に影響などはないとおっしゃるものの、入れ歯の奥歯がすり減っています。

身体のガッシリしたTさんは噛む力も強いです。

調整、修理してから3か月~半年も経つとプラスチック製人工歯がすり減ってしまいます。

そこで今回は入れ歯のすり減った咬み合わせを修理する治療をご提案しました。

これまでずっと定期的にすり減っては修理しています。

同じ治療をもう何回も行なっています。

そのようなことで治療の提案にすぐにご同意いただきました。

元気な方ですが遠方から介助者と来院されます。

年齢的にも体調的にも新しく作るのは避けた方が安全です。

多くの壊れた入れ歯は保険治療で1時間で修理できます

Tさんが総入れ歯となった経緯を書いてきました。

なぜ書いたのかというと、これほど長年に渡って使い続けている入れ歯を新しく作るのは大変難しいと言いたいからです。

「この入れ歯は、もはや身体の一部ですね」

とTさんはおっしゃいます。

本当にその通りです。

ツギハギだらけではありますし、修理を繰り返している影響で入れ歯の厚さが一般的なものの倍くらいあります。

しかし作り替えはまず上手くいかないです。

仮にTさんが使っているのが
「全然使えない!」
「やたらと壊れる」
「合わせてもすぐに合わなくなる」

こんな入れ歯なら調整修理しながら新しく作ることで良い入れ歯にすることが可能です。

しかし不自由なく使っている、3か月~半年くらいの適切な間隔での定期的な治療、リハビリテーションで快適に使えている。
壊れることもない。

そんな良好な入れ歯を捨てて新しく作るのは蛮勇とも言える行為です。

ぜひ良好な入れ歯を使い続けることをお勧めしますし、この文章を読んでいるあなたもそのような事を理解して対応してくれる歯医者に通われることを願っています。

そのようなことで今回のTさんについては、まずは簡単にできる治療から行なうのが鉄則です。

奥歯がすり減った面に、粉と液を混ぜると硬化する歯科用プラスチックを盛り足して噛んでもらいました。

簡易なものですがリスクが少なく簡単に咬み合わせを回復できます。

すり減った部分を補うだけなのでとくに技巧を要することはありません。

プラスチックが硬化するのを10分ほど待って、それから余計な部分を削って研磨したら完成。

治療としては簡単なものですが、意外と多くの歯医者は選ばない治療である可能性は高いです。

ロクに調整もしないで

「すぐに高額な自費治療の入れ歯を作りましょう!」

と提案されたとの話を患者さんからお聞きすることが多いからです。

でも新しく入れ歯を作るのは大きなリスクでもあることは覚えておいていただきたいと思います。

全部で20分ほどで修理できた入れ歯を入れたTさんは

「あっ、これはまたよく噛めますよ!」

とカチカチ噛んでからおっしゃってくださいました。

歯がすり減ったりして奥歯の咬み合わせが不正になるとカチカチ噛もうとしても音がしません。

グニュグニュといった咬み合わせになります。

それを修理することで奥歯の咬み合わせが良好になると「カチカチ」と澄んだ音が出ます。

気持ちよく噛めることで気持ちよく食事できるようになります。

3か月~半年ごとの入れ歯修理。

もう私の父の代から続けている治療でTさんの入れ歯は常に良好な状態を何十年も保てているのは私も本当にうれしいです。

今回行なったTさんの入れ歯を修理する治療は治療回数1回でできます。
費用は保険治療1割負担で総額約1,000円でした。

【関連記事】→入れ歯で噛めない「Q.奥歯で噛みにくくなった感じがします。入れ歯を作りかえなければいけないのでしょうか?」

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・4年前に予言! 80代患者Kさんの「入れ歯が落ちてきた」をたった1時間で直した保険治療の入れ歯修理

「歯が折れて上の入れ歯が落っこちてきちゃって~」

早口でおっしゃるのは80代女性のKさん。
祖父の代から通っていらっしゃる方です。

口の中を拝見すると左右とも前から4番目の歯が折れて、歯の根だけになっています。

もともと口も歯も小さいので歯の根も貧弱。揺れてもいます。
この根はもう使えません。

また部分入れ歯の金属バネ(クラスプ)のかかっていた歯が折れたので入れ歯を口の中に維持することができなくなっています。

口を開けると簡単に外れてしまいます。

とはいえ、これはもう4年前から
「いつかはそうなりますよ」
と私は患者さんに予言していました。

別に私に未来予知の特殊能力があるわけではありません。

これまでの長年の経過、口と歯の様子を知っていれば、歯医者なら誰だってそう予測できる程度の話です。

実はKさんは歯の欠損が多いにも関わらず、ずっと入れ歯を使っていませんでした。

「とくに不自由がないから~」
とのことだったのですが4年前のある時から話をして入れ歯を使ってもらっています。

・これから歯を失うと、さすがに食事に不自由すること

・もっと歯を失ってからだと、もっと大きく違和感のすごい入れ歯を入れなければいけなくなること

・今のうちに入れ歯を入れておけば、今後歯を失っても処置が簡単になること

を説明して入れ歯を使ってくださっていました。

残っている歯が少ないので入れ歯も本当は上アゴを全て覆うものが望ましい。

歯科の論文や高名な先生はそう主張するに違いない症例です。

しかし当時は上アゴの部分を大きくくり抜いた馬てい型の部分入れ歯を作製しました。

しかも口も歯も小さい上に歯の長さも短いので咬み合わせをジャマしないように作ろうとすると入れ歯の厚さは3ミリが精いっぱい。

一般的な歯医者は入れ歯を作るときに専門の歯科技工所に発注して作ってもらいます。

仮のワックスで入れ歯の赤いボディ(床)を作って人工歯を並べて咬み合わせや歯並びを確認。

それを歯科技工所に出してワックスをプラスチックに置きかえてもらいます。

ところがそのワックスをプラスチックに置きかえる作業の都合上、どうしてもプラスチックの厚みが必要となります。

・ワックス床を石こうに埋める
・熱を加えてワックスを溶かす
・ワックスを溶かしてできた空洞に餅状の柔らかいプラスチックを入れる
・プラスチックが硬化したら石こうを壊して入れ歯を掘り出す

このような工程を経て作られます。

あまりにプラスチックが薄いと、この作業中にプラスチックが折れてしまいます。

だから入れ歯にはある程度の厚さが必要になってくるわけです。

部分入れ歯の金属バネが折れても保険治療で修理できます

しかしそんな立派な厚みを与えたら間違いなくKさんの口には収まりません。

「入れ歯が大きすぎて入れていられない」

入れ歯の悩みとして、よく聞く話です。

原因として実はこのような構造的な欠陥によることがあります。

厚さ2ミリ3ミリの極端に薄い入れ歯を作るのは実は至難の業だったりするのです。

もっとも当院ではそのような至難の業ともいえる、Kさんみたいな入れ歯をよく作ります。

どうやって作るか?

答え:歯医者が自分で作る

です。

歯科専用のプラスチックで即時重合レジン(即重レジン)というものがあります。

入れ歯だけでなく仮のかぶせものを作ったりするのにも使われるので、どこの歯医者でも必ず置いてある材料です。

これは粉と液を混ぜると硬化する簡易なプラスチックです。

石こう模型にこの即重レジンを盛ることで入れ歯を作ることができます。

歯に引っかけるクラスプを当院では歯医者が自分でワイヤーを屈曲して作ってしまいます。

ワイヤーを模型に合わせて即重レジンを盛れば、そのまま使える入れ歯の完成です。

技工所作製のプラスチックの方がより重合がされていて硬さや滑らかさは即重レジンよりも上です。

ですが補強の金属線(補強線)を埋めこむことによって硬さを文字通り補強することができます。

何よりKさんの入れ歯で心がけたのは「修理のしやすさ」です。

構造のほとんどをプラスチックで作ることで、どの歯が抜けても簡単に修理できるようにしました。

実はKさんは他の歯科医院で入れ歯を作った経験があります。

しかしやはり
「違和感がすごい」
「大きすぎる」
「口が閉じられない」
「アゴが痛い」
など上手くいきませんでした。

それで長い間ずっと「不自由ないから」と言いつつ、歯がなくても咀嚼できる柔らかいものばかり食べてきた、というのが実情です。

それで厚さ3ミリの薄い入れ歯を歯医者が自分で作ったところ

「あっ、これなら抵抗なく入れられます~」

とおっしゃって入れ歯を使えるようになって今に至ります。

それからは大きな事件はなく半年ごとにむし歯と歯周病予防を行なってきました。

今回は歯が折れたとはいえ4年間も何事もなく使っています。

・保険治療だからダメ
・高額な材料で作らないとダメ
・偉いセンセの言うことを聞かないとダメ

…そんなことはないという話なわけです。

定期的な入れ歯調整メンテナンス。費用は保険治療3割負担の方で総額約2,000~3,000円

ただいつかは歯が折れる、抜けるなどのことで状況は変わります。

まさに今回みたいなことを想定していたので左右両側の歯が折れるくらいのことは当院にとっては掌の上のできごとです。

「え~っ、1時間で修理できるんですか~」

とおっしゃるKさんに待合室で待っていただく間に修理をします。

入れ歯を口の中に装着しておいて型をとって入れ歯を含んだ石こう模型を作製。

折れた歯の手前の歯が健在なので、そこにクラスプを新たに作製して即重レジンで埋めたら修理完了。

1時間で修理した入れ歯は適合良く口の中にピッタリと収まりました。

一般的な歯医者は、クラスプを自分で作る技術がありません。

だから当然このような壊れかたをした入れ歯は型をとって歯科技工所に発注することになります。

しかし今回の治療で難しいのは先ほども書いたとおり
「咬み合わせが極端に低い」
ことです。

どんなクラスプを作って、どう増歯するか。
これは患者さんごとに違います。

とくに咬み合わせが低くてクラスプを入れるスペースがギリギリ。

そんなギリギリした緊張感あふれる修理を当院では数多く手がけています。

しかし技工所は、そうではありません。

私も20代のころに勤務していた歯科医院で同じような修理を歯科技工所に発注したことがあります。

それで全然口の中に入らないトンチンカンな修理をされてしまったことがありました。

歯科技工所も入れ歯修理をそんなに数多く手がけるわけではありません。

1週間も待った挙句、それでも1週間での修理は技工所からしたら大急ぎの仕事ですから決して悪く言うつもりはないのですが、ぜんぜん合わないなどということもあるわけです。

ですから今回のような壊れかたをするケースは、どの歯科医院でも起こりうる話です。

ですが「歯医者が自分でクラスプを屈曲する入れ歯修理」が歯医者の間で広まる気配は今のところ微塵もありません。

それはさておき

「いや~絶対に1週間は入れ歯を預かるんだと思ってました~」

とおっしゃるKさん。

以前にも同じような修理を何回か行なっているのですが、先入観として

「入れ歯が壊れたら、修理は1週間は帰ってこない」
というのがあるのでしょうね。

そんな固定観念を打ち砕いて、うれしい驚きの患者さんの表情を見るのが私の楽しみです。

当院にはKさんのように長年通っている患者さんがたくさんおられます。

数年後の変化まで想定して、どんなに壊れても、どんな変化があっても想定の範囲内として1時間で対応する。

そんな治療を数多く手がけています。

今回行なったKさんの入れ歯を修理する治療は1回の通院でした。
費用は保険治療1割負担で総額約1,500円でした(症状や治療部位などによって費用は変わります)。

【関連記事】→入れ歯が壊れた「Q.部分入れ歯を支えている歯が折れてしまいました。金属のバネが引っ掛かっていたのですが入れ歯がグラグラです。どうすればいいでしょうか?どのくらいの日数、費用で治りますか?」


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・【警告】その入れ歯、安易に作り直さないで! ボロボロの古い入れ歯こそが「最高の治療」になる理由

「夫が物を食べなくなってしまって…」

奥さまに手を引かれてながら杖にもすがるようにして入っていらしたのは80代男性のTさん。

治療室の扉から治療台まで5メートルですが杖にもつれて転びそうです。

心配で私も一緒に手をお貸しして治療イスに座っていただきました。

食べられない理由は入れ歯です。

前歯だけの入れ歯を入れていたのですが、奥歯も失っていて口の中にはもう一本も歯が残っていない状態でした。

歯があった時代の名残りで金属バネ(クラスプ)が中空に浮いています。

これではクラスプなど、かえってジャマなだけ。

当然ですが入れ歯は口を動かすと簡単にアゴから浮き上がってしまいます。
食事など出来るはずがありません。

とは言うものの入れ歯を入れて噛んでいただくとカチッと一箇所に定まります。

前歯だけでなく残っている奥歯のクラスプでも噛めるからです。

これは大助かり。

入れ歯治療の難しい症例として、噛んでもおうとしても下アゴがフガフガと動いてしまって噛む位置が定まらないことが挙げられます。

アゴの位置が定まらない入れ歯だと

入れ歯を着けると痛い
食事できない
姿勢、歩行に影響する可能性
顎関節が悪化する

など様々なことが起こります。

アゴの位置が定まらないから入れ歯が難しい。
逆に入れ歯が難しいからアゴの位置が定まらない。

どちらにしても難症例になります。

しかし今回は咬み合わせが一箇所に定まっています。

形はともかく「良い入れ歯」「良いアゴ」なわけです。

これを使わない手はありません。

ちなみにせっかく「良い入れ歯」があるのに完全に無視して新しく入れ歯を作り始める歯医者がいたりしますが大変リスキーです。

なんの手がかりもなくゼロから総入れ歯を作るのは、咬み合わせを定めるのが難しいからです。

仮に新しく入れ歯を作るとして、使えるようにするには一つ鉄則があります。

ゆるい入れ歯には保険治療で歯科専用の入れ歯安定剤ティッシュコンディショナーを貼ると安定します

それは
「前に使っていた入れ歯と咬み合わせを変えないこと」
です。

前に使っていた入れ歯と咬み合わせが変わってしまうと、新しい入れ歯はほぼ使えない入れ歯になります。

ゼロから上下の咬み合わせの記録をとる方法はいくつもありますが、ほぼズレます。

それでは現在は歯が一本もない患者さんの下アゴの位置をどうやって決めるかというと「ゴシックアーチ」という機械があります。

機械…とはいっても下アゴの仮の入れ歯に金属の板を置いてマジックで色を塗っておく。
上アゴは仮の入れ歯に針を付けてアゴを動かすと、針がマジックを消すので動きが分かるという。

1920年くらいから行なわれている方法から進歩していません。

たとえば

テッテレー♪
「咬み合わせ測定器ー!」

みたいなハイテクマシンがあって、現在使っている入れ歯の咬み合わせを記録しておく。

新しい咬み合わせを記録する時に正しい咬み合わせになると「ピーピー」と音で知らせてくれる。

そんな便利な物があればいいのですが残念ながら、そこまで便利になるのはたぶん22世紀くらいの話だと思います。

ちなみに歯科でも、入れ歯ではない分野ではドラえもんの道具みたいな便利な機械があります。

たとえばムシ歯が大きくなって歯の根の治療をするとします。

歯の根の内部は目で見ることができません。

そんな時に活躍するのが「根管長測定器」。

リーマーという歯の根を掘る針のような器具に測定器を当てると、見えない歯の根の長さを測ることができます。

歯の根の先端に近づくとピッピッピッと鳴って、先端に到達するとピーピーピーと音が変わって分かるというもの。

これは数値的な根拠があるから機械が作れるわけです。

いっぽう入れ歯の上下の咬み合わせは数値化できるものがありません。

だから音で知らせてくれる測定器は作れないのです。

そのようなことで咬み合わせをゼロから新しく作ろうとすると結局は経験とか勘とかに頼らざるを得ないことになります。

歯科のセミナーや論文などでよく新しく入れ歯を作った症例を見かけます。

もちろん公にするくらいなので成功事例ばかりなのですが、マネして複雑な器械を使って保険治療外の高額な入れ歯など作ってしまうと思わぬトラブルに巻きこまれる可能性があります。

咬み合わせとは非常に繊細な場合があります。

元の入れ歯と咬み合わせが1ミリ変わっただけで使えなくなることは起こりがちです。

だから新しく作るなどのことはしない方が賢明です。

そこで行なうのが入れ歯の修理です。

下の前歯は健在です。
ひだり側の奥歯に相当する部分にクラスプが残っています。

だからまずクラスプに白い歯の色の歯科用プラスチックを巻き付かせることで歯の形を回復させました。

最初の修理で前歯とひだり側奥歯で噛めるように歯の列を回復することができました。

続けてみぎ側の奥歯です。

こちらは元々は4本分が金属のかぶせものでつながったブリッジが入っていたのですが歯周病で4本まとめて抜けてしまったそうです。

そのような経緯から、こちらには入れ歯の構造物は一切ありません。

だからみぎの奥歯は、もう少し手をかけた修理をしました。

下アゴの型をとって石こう模型を作ります。

模型と入れ歯を合わせて、みぎ奥にピンク色のボディから作って元の入れ歯とつなげる修理をしました。

ただしプラスチックでつなぐだけでは強度がありません。

噛む力で簡単に折れてしまいます。

そこで補強の金属線(金属線)を埋めこむことで強度を増しています。

みぎ側の咬み合わせを作るのは簡単でした。

なぜなら前歯とひだり奥歯で咬み合わせが既に定まっているからです。

こうして両側奥歯でしっかりした咬み合わせが復活したTさん。

「あ、これならよく噛めますね」

と笑顔で答えてくださいました。

後日に点検で来院されたTさんは杖をつきながらですがご自分だけで、しっかりとした足どりで診療室に入られました。

やはり食事もとれるようになったとのことで頬もふっくらとしていました。

もちろん入れ歯だけの力ではなくリハビリなど、ご本人の努力と奥さまの介助のおかげです。

ただ入れ歯修理が少しでもその力になれたとしたら私もとてもうれしいです。

今回行なった入れ歯を増歯修理する治療は5回の通院。費用は保険治療3割負担で総額約8,000円でした(費用は症状や治療部位などによって変わります)。

保険治療で入れ歯調整できます

修理を繰り返した入れ歯ですから壊れやすいことはあります。

あれから1年経っています。

クラスプと補強線の金属が埋まっている効果でしょうか。

割れたりすることはなく快適に使い続けています。

もっともアゴは生きている体なので変化します。

とくに今まで使っていなかった奥歯の部分に入れ歯が乗っかって力が加わる影響で、アゴ骨やピンク色の歯肉(粘膜面)がが形が変わりやすいです。

数か月に一度ほど変化したアゴと入れ歯を合わせるために、歯科専用の入れ歯安定材ティッシュコンディショナーを薄く貼ってピッタリさせる治療を続けています。

これは、入れ歯が歯グキと接するピンク色の部分(床)全体に、粉と液を混ぜてペースト状になった材料を薄く貼って口の中に入れます。

すると入れ歯になじんで歯グキとピッタリ合います。

目で見て分かるようなスキマなどなくても、入れ歯が不適合になると歯グキを圧迫して歪みが出てきます。

ティッシュコンディショナーはその歯グキの歪みを取り除くことができます。

薄い膜みたいな厚さでも効果は大きいです。

「あっ、これはピッタリになりましたね!」

患者さんにもすぐに変化がわかります。

現在は何回かこのティッシュコンディショナーを貼り替えて様子を見ているところです。

今のところ新しく入れ歯を作る必要もなく修理した入れ歯を使えるのは、高齢で通院も大変、前に説明したような新しい入れ歯を作るリスクもありません。

治療後はいつも奥さまと一緒に笑顔で帰られます。

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