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・たった5mmの破損が生活を奪う?入れ歯を数多く手がける歯医者が明かす、入れ歯修理の舞台裏

杉並区西荻窪で入れ歯治療を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。

「作ってまだ3か月しか経ってないので修理できないと断られまして…」

おずおずといった感じではいっていらしたのは60代男性Dさん。

はじめに申し上げますと入れ歯を新しく作ってから、すぐでも保険治療で修理できます。

もちろん「全ての入れ歯に対して」作って直後に修理などという無茶な保険点数算定をしていたとしたら査定されるのは当たり前ですが、作ってすぐに何か壊れることはあります。

だから安心していただきたいと思います。

壊れたのは部分入れ歯を歯にひっかけて入れ歯を口の中に維持する金属バネ(クラスプ)。

左右の二つある中の、みぎ側クラスプの頬側(外側)だけが折れています。

長さとしては5ミリくらいのものです。

しかしその5ミリがないだけでもう入れ歯は使えなくなってしまいます。

舌を動かすだけで入れ歯はパカッと外れてしまいますし食事できなくなってしまったと言います。

保険治療の入れ歯には俗に言う「半年ルール」というものがあります。

それは新しい入れ歯を作ったら半年は作ってはいけない、というものです。

これは厳密に色々のケースによって解釈も色々あります。

また場合によっては半年以内でも作り替えが認められることがあります。

細かいケースについては気軽にお尋ねいただければ幸いです。

ともかく修理に関しては半年間も修理してはいけないルールはありません。

もっとも保険制度がどうのこうのと言うよりも考えなければいけないことがあります。

それは「なぜ3か月でクラスプが折れたか」です。

普通はそんなケースは少ないものです。

入れ歯を入れて噛んでもらってすぐに折れた原因が分かりました。

咬み合わせです。

一般的には上下で噛むと上の歯が下の歯を前側あるいは外側に覆うように並んでいます。

それがDさんの場合は一般的なケースと逆で下の歯が前に極端に出ています。

昔のプロレスラー、アントニオ猪木さんみたいな咬み合わせでした。

それでたまたま上の歯が下の入れ歯のクラスプに強くぶつかってクラスプを折ってしまったのでした。

治療方針としてはクラスプの修理です。

入れ歯を口の中に入れておいて型をとって、石こうを流して模型を作ります。

模型上でクラスプを作って入れ歯に埋め込んで修理完了。

金属ワイヤーから単純鈎を一つ屈曲するだけなので作業としては簡単です。

もっともクラスプ屈曲ができる歯医者は少ないので、冒頭のように断ってしまう歯医者はいます。

クラスプ屈曲さえできれば簡単な修理なので他の歯医者もやって欲しいものです。

部分入れ歯を作る費用は保険治療3割負担の方で総額約1~2万円

今回の修理で気をつけた点が2点あります。

まず一点目は型とりです。

クラスプが効いていないので口の中で入れ歯がフラフラ動いてしまいます。

歯医者が指で入れ歯を動かないように押さえながら型をとりました。

二点目はクラスプの位置です。

修理前と同じ場所にクラスプを設置したら、またクラスプが上の歯とぶつかって再び折れてしまいます。

上の歯とぶつからない位置に設置しました。

一般的にクラスプを修理するというと専門の歯科技工所に外注します。

模型を作って発注して作ってもらうと。

歯医者がクラスプを曲げて作れれば1時間でできるところを1週間はかかるので入れ歯修理としては現実的ではありません。

患者さんは1週間も入れ歯ナシというわけにはいかないはずです。

しかも歯科技工所は患者さんの口の中を知りません。

ともすると修理前と同じ場所に設置してしまいがちです。

それが一番簡単で、自然にそのような位置になってしまうからです。

患者さんの口の中がわかっている歯医者だからこそ、多少は屈曲が大変になるものの、口の中の状況に合ったクラスプを作ることが可能です。

そんなことで1時間で修理できた入れ歯は調整する必要なく口の中に収まりました。

「あっ、これならピッタリですね」

舌を動こしても入れ歯は浮きません。

Dさんは笑顔で帰られました。

今回行なったDさんの入れ歯のクラスプを修理する治療は、1回の通院で費用は保険治療3割負担で総額約4,000円でした(費用は治療部位や症状により変わります)。

入れ歯修理の難しさについて

入れ歯は、失われた歯の機能を補い、生活の質を向上させる重要な医療機器です。

しかし毎日のように使われる中で、破損や劣化は避けられず、修理が必要となる場面は少なくありません。

この入れ歯の修理は、一見単純な作業に見えて、実は多岐にわたる専門知識と技術を要する非常に難しい作業です。

その難しさの要因は、主に以下の点にあります。

1. 材料の多様性と特性の理解

入れ歯は、レジン(歯科用プラスチック)、金属、セラミックなど、様々な素材を組み合わせて作られています。

それぞれの素材には、異なる物理的・化学的特性があり、破損の状況や部位によって、最適な修理方法、接着剤、補強材料が異なります。

たとえば保険治療で広く用いられるレジンの破損であればレジンによる修理ができるのですが、金属床の破損であれば溶接やろう付けといった特殊な技術が必要となります。

実際には難しく、当院もろう付けの設備はあるのですが、ほとんど使うことはありません。

また残っている歯が抜けたり折れたりした時に、入れ歯にプラスチックの人工歯を継ぎ足す増歯修理という技術があります。

その増歯修理が保険治療のプラスチック製入れ歯なら簡単にできます。

プラスチック同士なら問題なくくっつくからです。

しかし高額な自費治療の金属床入れ歯だとこの増歯修理が格段に難しくなります。

あるいは出来ないこともあります。

なぜなら金属とプラスチックはくっつかないからです。

金属に無理やり穴を開けてプラスチックを埋め込んだり溝を掘って物理的な嵌合力に期待したり工夫はします。

ただそもそも穴を開ける場所がないくらい細い金属板だったり溝を掘れるほどの厚さがなかったりします。

普通に保険治療のプラスチック入れ歯なら簡単の修理が自費治療の金属床になつているせいで苦労したり修理不可能になってしまったりします。

また近ごろ流行のシリコン入れ歯、ノンクラスプ入れ歯などというものがあります。

商品名としてはコンフォート、スマイルデンチャーなど。

このような入れ歯には最大にして致命的な欠点があります。

それは「修理できない」こと。

壊れたら、あきらめて新しく作るしかない。
痛くなったら、あきらめて新しく作るしかない。
ゆるくなったらあきらめて新しく作るしかない。

「最新鋭、最先端技術のシリコンによって夢のようによく合う!」
みたいに喧伝されるものですが実際には言うほどは合いません。

とはいえ無理にでも削って合わせたり、歯科専用の入れ歯安定材みたいな材料ティッシュコンディショナーを無理やり貼り付けたりすることはあります。

ただあまり改善はできないのが実情です。

これらの材料特性を熟知し、適切な材料を選択する知識が不可欠です。

保険治療で歯が抜けた部分を入れ歯に継ぎ足す増歯修理

2. 精密な適合性の再現
入れ歯は、患者さんの口腔内の形状に正確にフィットすることで、安定した噛み合わせと快適な装着感を提供します。

破損した入れ歯を修理する際、元の適合性を完全に再現することは非常に困難です。

わずかな歪みやずれでも、噛み合わせの不調や粘膜への圧迫、さらには発音の障害を引き起こす可能性があります。

だから先に紹介したように、口の中で動かないように型をとる工夫が必要です。

ただ押さえる場所がないとか難しいケースもあります。

とくに、クラスプ(維持装置)の破損や、床(しょう:歯肉に接する部分)の破折の場合、口腔内の複雑な湾曲や歯列との関係性を考慮した上で、ミクロン単位の精度で修理を行う必要があります。

クラスプ修理は、写真で拡大してもスキマが見えないくらいの精度が必要です。

たとえば歯科技工所でクラスプを作ると、どうしてもそのスキマがないほどの精度ができない場合があります。

だから当院では入れ歯を作る際は歯医者が自分でクラスプを屈曲して発注のときにそのクラスプを技工所に渡して使ってもらうこともあります。

3. 口腔内環境の複雑性
入れ歯は、常に口腔内の湿潤で温度変化のある環境に晒されています。

唾液、咀嚼圧、清掃時の力など、様々な要因が入れ歯に影響を与えます。

修理後にこれらの口腔内環境に耐えうる強度と耐久性を持たせるためには、単に破損部位を接着するだけでなく、応力集中を避けるような設計変更や、適切な補強を施す必要があります。

これも先にご紹介した、クラスプの形の作り方を工夫して上の歯とぶつからないようにした、という話です。

【関連記事】→入れ歯が壊れた「Q.部分入れ歯のバネが折れてしまった。新しい入れ歯を作らないとダメですか?」


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親心と歯の健康:守りたい大切なもの

こんにちは。院長の伊藤です。
早いもので、1年の半分が経ちましたね。
この半年間、 多くの方々にご来院いただき、その分たくさんの笑顔に触れることができました。
本当にありがとうございます。

1年の後半も皆さまの歯の健康を守るため、精いっぱい努めてまいります 。

 

さて普段は、患者様の唯一無二のお口の健康を守り抜く、という責任を自負しながら歯科医師としての仕事に全力を注いでいる私。
しかし白衣やスクラブを身につけていないときは、一介の父親でもあります。
物騒なニュース等を耳にするたび、家族のことが心配でたまりません。
こちらは先日、娘が塾へ行くところのワンシーンです。

娘の背中を玄関先まで追いつつ、「行ってらっしゃい」「気をつけてね」「明るい道を通って帰りなさいよ」と、くどくどと声をかける私。
しまいには「そうよ、最近もニュースで……」と妻まで加わる有り様。
娘はたまらず「もう!そんなの両側から立体音響で聴いてるみたいで、うれしくないワ」と、言いながら外へ出てきました。

まあ親心だと思ってください。親の心配は尽きません。
「ただいまー」と普段どおり元気に帰ってくるとやはりホッとします。
何かあれば少しでも事前に対策をしておかなければと、普段から警視庁のスマホアプリ「デジポリス」で情報収集しています。
特に、女性の皆様! 怖い思いをしたら迷わず110番ですよ!

 

ちなみに5月下旬から6月の上旬まで、春の運動会シーズンでしたね。
お子さん・お孫さんの学校へ、応援に行かれた方も多いのではないでしょうか。

娘は毎年「ダンスが凄くうまく踊れたよ!」「今年は◯位だった、悔しい!」などと感想を聞かせてくれます。
しかし私としては、怪我に注意をしながら自分のベストを尽くしてくれれば結果に関係なく、それで良いと思っています。
これも親心。

 

当院にも子育て中の方や、お孫さんのお話を楽しそうに話してくださる患者様が多くご来院されます。
皆様がお話してくださるお子さん・お孫さんの一人ひとりの健やかな成長を、歯科医師としても一人の父親としても心から願っています。

【医院からのお知らせ】
2025年7月は暦通りの診療です。

 

 

 

いとう歯科医院
〒167-0054
東京都杉並区松庵3-6-3
TEL:03-3333-5389
URL:https://ireba-ito.com/
Googleマップ:https://maps.app.goo.gl/9jrBJZuNm3gP5v3C7


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・20万円のシリコン入れ歯がたった3年で「修理できません」と言われた話

「修理できません」
「たった3年で壊れたのも仕方ありません」
「作り直すしかないので料金は再び20万円(税別)になります」

歯が2本分の小さなシリコン入れ歯にヒビが入ったので、施術した某大学病院を再び訪問した、60代女性のUさんが担当の歯医者から言われた内容です。

「患者自身で接着剤で着けるぅ~?
…論外ですよ」

担当医はまるで憐れむかのような口調だったそう。

じゃあ一体どうしたらいいの?

シリコン入れ歯とは文字通り入れ歯の赤い部分をプラスチックではなくシリコンで作る入れ歯です。

・金属バネが要らない!
・材料が柔らかいから歯グキとよく合う!
・プラスチックより薄く作れる!

そう喧伝されるシリコン入れ歯ですが上記の宣伝文句は全てデメリットになります。

・金属バネじゃないから、入れ歯がユルいとか逆にキツい時に調整が一切できない。
・柔らかいから噛むとたわんでしまい、実際にはよく噛めない。
・薄く作るから壊れる。とくに痛みが出たときに薄すぎて削ることもできない。
・壊れて修理しようにも、プラスチックとシリコンはくっつかないので修理もできない。

結果、冒頭のようなトラブルにつながります。

また私が自費治療をやらない理由は
「10年後の未来など誰も予測できないから」です。

普通に保険治療で総額1万円以内で作れる入れ歯に自費治療として20万円以上もかける。

「それならば最低10年はトラブルなく使えてあたりまえと思っていました」

とUさんは言います。
私も同感です。

それが自費治療に対する一般的な感覚だと思います。

しかし10年後の口の中がどうなるか、誰も予測など不可能です。

ちなみにやむを得ない事情で入れ歯を作り直すのは、保険治療ならば半年経てば可能になります。

つまりこれは言葉を変えると、半年先のことも予測できないような入れ歯、口の中が世の中に多いということです。

口の中に限らず10年後の未来など誰も予測できません。

例を挙げるならウクライナとロシアが2022年から戦争を始めることを2012年に予測できた人は多分いません。

いつか戦争になるだろう、くらいは私でも予測していましたが遠い未来のことと考えていました。

日本も隣りの某大国と戦争を始める日は来るのでしょうが、それは私が死んだ後、50年以上は先の話と勝手に思っています。いや、そう思いたい。

…自分は政治評論家になる資格はなさそうです。

それはさておきUさんの口の中も

・残っている歯にセラミック製かぶせものが多い
・体も小柄で口と歯の大きさが小さい
・顎関節症の症状や歯を削った後に決まって起こる原因不明のめまい、手の痺れ、頭痛の不定愁訴で長期間の通院歴があるなど

難しい要素が満載です。

「Uさんの口の10年後を予測せよ」
そんな問題が出題されたとしたら私は空欄で提出します。

・残っている歯が抜けるかもしれない
・下手に削ると顎関節症や不定愁訴が再発かもしれない
・違和感すごくてムリ、といった訴えで、そもそも入れ歯を入れておけないかもしれない

何が起こるかわからない、そんな予測不可能な口の中と対峙するのに役立つのが保険治療です。

・プラスチックと金属バネでできた保険治療の入れ歯なら調整も修理も自由自在。
・残っている歯を削るのも最小限にできる。
・理不尽でない価格でできる。

もっとも歯1~2本分の小さい入れ歯は、それなりの難しさがあります。

簡単ではない、使えない可能性もあることを、よくよく説明してから作製しました。

結局はすぐに馴染んで何事もなく使えるようになりました。

今回行なったUさんの部分入れ歯を作る治療は、保険治療3割負担で総額約1万2千円でした(症状によって費用は変わります)。

シリコン義歯の長所と欠点

シリコン入れ歯にはいくつかの長所と欠点があります。以下にそれぞれを詳述します。

長所

快適さ:
シリコンは柔軟性があり口の中でのフィット感が良いとされています。

そのため硬いプラスチック製の入れ歯と比べて、違和感や痛みを感じにくいという論調をよく見ます。

全く咬み合わせのない前歯とかならそうかもしれません。

しかしそれは、噛むなどの力が加わると軟らかいため入れ歯そのものが動いてしまうということです。

入れ歯というものは総入れ歯、部分入れ歯を含めて様々な材料や設計がありますが、それらの設計思想はただ一つです。

それは
いかに「動かない」入れ歯にするか。

カチカチ噛んでも、ギリギリ歯ぎしりしても、食事しても、

「動かない」ことを目指して研究されてきました。

入れ歯がフラフラ動かないから快適に噛める、食べられる、使える、わけです。

それを入れ歯自体が柔らかければ当然動いてしまいます。
それ自体おかしなことと思います。

そのようなことからシリコン入れ歯とは何のための入れ歯なのか、私には理解できません。

噛む力の全くかからない歯並び、たとえば上の前歯が極端に出っ張っていて下の歯と全く噛み合わないところに入れるとか、かなり限局した使い方になると思います。

ただそのような難しい歯並びの症例は入れ歯を入れるのも長く使うのも難しいものです。

シリコン入れ歯は自費治療で数十万円とかします。

それならば10年は使えないと患者さんだって納得しないでしょう。

10年使えて当たり前。

金額からすると当然そうなることは歯医者の立場でもわかります。

しかし難しい条件の難しい設計の入れ歯が10年使える根拠など存在しないと考えた方が自然と、個人的には感じます。

入れ歯修理の費用は保険治療3割負担の方で総額約3,000~5,000円

味覚の影響が少ない:
シリコンは味を吸収しにくいため、食べ物の味をより自然に感じることができます…という話も見かけるものです。

これは
「シリコン入れ歯なら食べ物を保険治療の入れ歯よりも自然に感じることができる」
根拠、研究、論文があるなら読みたいです。

自分が「シリコン義歯 味覚」で公的機関限定で検索した範囲では見つけることができませんでした。

シリコン入れ歯と味覚に関しては、憶測や感想、宣伝で言っているだけと個人的には思いました。

耐久性:
高品質のシリコンは耐久性があり、適切にメンテナンスすれば長持ちします。

これもよく見かける論調です。

しかしそもそも軟らかいため変形してしまい、残っている歯との適合が全くないユルユルのシリコン入れ歯によく遭遇します。

それで全然噛めないし使えないと。

そうなったシリコン入れ歯は調整が一切できません。

シリコンの材料の物理的性質だけを見れば良い材料なのでしょうが、入れ歯として使うとなると全く別問題が生じます。

アレルギーのリスクが低い:
金属やアクリルに比べてアレルギー反応を起こしにくいです。

それはそうですが、アレルギーが起こりにくいというのは使われる頻度が極端に少ないから、というのもあります。

チタンもアレルギーを起こさないと持て囃された時代がありましたが2006年ころからチタンアレルギーの症例を見かけるようになったという論文がありました。

参考文献:チタンアレルギーの疫学的検討
Tokushima University Institutional Repository
https://repo.lib.tokushima-u.ac.jp

ですからいずれシリコンでもアレルギーが出てくる可能性はあります。

歯茎への圧力が軽減:
柔軟性があるため、歯茎に対する圧力が少なく、歯茎の健康にも良いです。

これも軟らかいから良いという論調ですが軟らかい故の欠点は、これまで書いてきたとおりです。

シリコン入れ歯の欠点

コストが高い:
一般的に、シリコン入れ歯はアクリルや金属製のものに比べて製造コストが高いです。

とはいえ製造コストは数が増えれば下がってきます。

製造コストが高いのは単に数が少ないから、ということもありえます。

数が少ないのはなぜか?

保険治療ではないからです。

ではなぜ、保険治療にならないのか?

色々な欠点があるから

と考えるのが自然と個人的には思います。

形状保持が難しい:
長期間使用すると、シリコンは徐々に変形することがあり、定期的なメンテナンスや調整が必要になります。

これは軟らかい故の欠点です。

「定期的なメンテナンスや調整が必要」とありますが、そのメンテナンスや調整が一切できないことがシリコン入れ歯の最大の欠点です。

だから当院ではシリコン入れ歯は作りません。

汚れが付きやすい:
シリコンは表面が滑らかでないため、汚れや細菌が付着しやすいです。適切な清掃が求められます。

その欠点はプラスチック製の入れ歯でも同じです。

シリコンもプラスチックも顕微鏡レベルで見れば穴だらけです。

その穴に汚れや細菌とその代謝物の固まり、プラークなどが入り込みます。

これはもう歯ブラシや入れ歯洗浄剤でも落ちません。

とはいえプラスチックならば削って新鮮な面を出した上で研磨すればまたキレイになります。

また目に余る汚れになってしまっても保険治療の範囲ならば作製してから半年以上経てばまた新しく作れる「半年ルール」がありますし低コストです。

いっぽうシリコン入れ歯は新しく作ろうとすると再び数十万円とかかかります。

半年ごとに数十万円使える大富豪でしたら、当院ではない歯医者にてご自由にどうぞ、としか私には言えません。

もっとも入れ歯の汚れだけを理由に入れ歯を新しく作ることはお勧めしません。

耐久性の限界:
非常に硬い食べ物や過度の力が加わると、シリコンが破損する可能性があります。

保険適用外の場合が多い:
日本では、シリコン入れ歯が保険適用外であることが多く、自己負担が増える場合があります。

シリコン入れ歯を選択する際には、自分の口腔環境や生活スタイル、経済的な面も考慮する必要があります。

歯医者と相談して、最適な選択をすることが重要です。

【関連記事】→保険?自費?入れ歯にかかるお金について「Q.保険の入れ歯か、自費の入れ歯を作るのが良いか悩んでいます。種類は選択できますか?」


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・部分入れ歯の金属バネ(クラスプ)が折れたので、歯科医師が新しく作製した症例、オルタナティブブログ

杉並区、西荻窪で、保険の入れ歯治療を数多く手がける歯医者、いとう歯科医院の伊藤高史です。

オルタナティブブログに記事を載せました。
部分入れ歯の金属バネ(クラスプ)が折れたので、歯科医師が新しく作製した症例↓

https://blogs.itmedia.co.jp/ito_takafumi/2025/06/content_8.html

ホームページ掲載 すみ


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・グラグラ揺れている歯を抜いて入れ歯にプラスチック製人工歯を継ぎ足す増歯と、残っている歯に歯医者が新たに金属バネ(クラスプ)を作る修理を行なった症例

杉並区西荻窪で入れ歯治療を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。

「歯がグラグラで入れ歯がつかえなくなったんです」

3年ぶりに来院されたのは60代女性のGさん。

みぎ上の前から3番目の歯が抜けそうなくらい大きく揺れています。

いっそのこと自然に抜けてくれたら患者さんも歯医者もラクです。

麻酔の注射をしなくて済みますから。

しかしそう簡単には自然に歯が抜けることはありません。

そこで今回は、みぎ上3番を歯を抜くことにしました。

Gさんは部分入れ歯を使っています。

これまでずっと、グラグラしている歯を抜いたら、その抜いた部分はプラスチック製人工歯を部分入れ歯に継ぎ足す増歯修理を繰り返してきました。

最後に治療してから3年間ずっと調子よく使っていたそうです。

今回も修理の内容としては同じです。

みぎ上3番を抜歯していた部分はプラスチック製人工歯を部分入れ歯に継ぎ足す増歯修理。

これまでずっと、みぎ上3番の歯に金属バネ(クラスプ)を引っかけて入れ歯を口の中に維持してきました。

今回抜歯するとクラスプが効かなくなってしまいます。

他に1つクラスプが奥にあります。

しかしクラスプが2→1つになると入れ歯は簡単に外れてしまって使えなくなります。

そこで手前のみぎ上2番は健全な歯でしたので、そこに新たにクラスプを作る修理を行なうことにしました。

口の中の型をとって石こう模型を作ります。

模型に入れ歯を合わせておいて模型上で歯医者が自分でワイヤーを屈曲してクラスプを作る。

歯科用プラスチックでクラスプを入れ歯に埋め込んで出来上がり。

見出し1壊れた入れ歯も保険治療で修理できます

工程としては単純なものの、ひとつ問題がありました。

それは入れ歯の適合が悪いこと。

口の中でもあまり合っていなかったとはいえ模型と入れ歯も合いません。

やはり3年間ずっと調子よかったとはいえ放置していたのでアゴの形が変わってしまっています。

そのようなことで定期的に歯医者に通うことの重要性はご説明させていただきました。

それはともかく、そんな中でも修理は必要です。

なんとか模型と入れ歯が合う場所を見つけました。

また前から2番目の歯は一般的に細長いです。

だから型に石こうを注いで模型を作る時もひと工夫が必要です。

それは細い金属線を埋めこむこと。

こうすることで折れにくくなります。

しかし努力の甲斐なく石こう模型はボッキリ折れてしまいました。

とはいえ石こう模型が折れてから実は金属線が威力を発揮します。

石こうだけだと砕けてしまったら元のように再現できなくなってしまいます。

それが金属線のおかげで折れ口がピッタリと合うのです。

ピッタリと合わせておいて歯科技工用の瞬間接着剤を流して模型の修理は完了。

さっそく修理し始めます。

模型上でクラスプを屈曲して合わせます。

このように合っているか分からない入れ歯を修理する際は、クラスプはピッタリ合わせすぎずルーズに合わせます。

歯とクラスプにスキマが見えるくらいです。

なぜなら入れ歯が口の中で合わない、模型と口の中とで誤差が生じる可能性があるからです。

模型上でピッタリすぎると、模型と口の中とで誤差があった場合には、口の中で合わない、装着できなくなります。

しかしルーズにしておけばスキマはあるものの入れ歯が口の中に収まります。

歯とクラスプのスキマはワイヤーを少しずつ屈曲して合わせることが可能です。

このような修理はワイヤー屈曲だからこそできる芸当です。

近ごろは歯科技工士でさえもこのワイヤー屈曲ができなくなっています。

昔は入れ歯を作る技工士ならば誰でも当たり前のように屈曲できました。

私もある勤務先の大きな歯医者で院内に技工所を備えていました。
そこの技工士さんからクラスプの屈曲を習いました。

別に卓越した技術の持ち主だったわけではなく保険治療の技工物を作製する並の腕前の技工士さんです。

しかし最近ある大学病院の歯科技工所はもうワイヤー屈曲できる技工士がいないという話を聞いたことがあります。

それではどうやってクラスプを作るか?

見出し2保険治療で入れ歯の修理

模型上でワックスでクラスプの形を作ります。

それを耐熱性の石こう、埋没材に埋めて熱を加えます。

そうするとワックスが溶けて空洞ができます。

その空洞に熱して溶かした金属を流しこむ「鋳造(ちゅうぞう)」という方法でクラスプを作ります。

鋳造クラスプは強度があって歯に引っかかる力が強い。

だから入れ歯を口の中に維持できます。

ただ欠点もあります。

維持力が強すぎて逆に歯を抜く力がかかってしまうことです。

後は入れ歯を着脱する際にクラスプに力が加わります。

そのせいでワイヤーと比べるとしなやかさ、柔軟性(展延性)に劣る鋳造クラスプは金属疲労を起こして、ある日突然ボッキリ折れます。

また今回のような、そもそも適合が不確実な症例では絶対に合わせることはできません。

後は工程が多いです。
・石こう模型を作る
・ワックスで形を作る
・埋没材に埋めて硬化するのを待つ
・熱してワックスが溶けるのを待つ
・金属を溶かして流しこむ
・金属が固まるのを待つ
・埋没材を壊してクラスプを掘り出す
・研磨する
・完成したクラスプを入れ歯に埋めこむ修理をする

とてもじゃありませんが鋳造クラスプを作っていたら1時間で入れ歯修理するのは不可能です。

その点、ワイヤークラスプならば
・石こう模型を作る
・ワイヤーを10分くらいで屈曲
・完成したクラスプを入れ歯に埋めこむ

これで出来上がり。

クラスプを曲げる技術さえあれば、入れ歯修理はもう鋳造クラスプでは勝負にならないと思います。

修理した入れ歯は意外にも口の中にピッタリと合いました。

入れ歯と模型は、合わないなりに合わせる方法はあります。

入れ歯を上アゴの口蓋部分にピッタリと合わせて修理しました。

口蓋部分は年月が経っても比較的変形が少ないといわれています。

今回はそのような知識が功を奏しました。

「あっ、これなら外れないですねー」
Gさんは笑顔で答えてくださいました。

見出し3保険治療で入れ歯の調整

もちろん長年診ていなくて入れ歯は不適合が大きいし歯、歯グキの状態も悪いです。

とはいえ使える入れ歯さえあれば後はゆっくり治療を行なって改善していきます。

・他にグラグラしている歯があるので、そんな歯を抜く。
・クラスプが引っかかっている歯はムシ歯があるので治療する。
・歯グキの状態が悪く歯と歯グキの境目の深さが5ミリ程度もあるので歯石除去やブラッシング指導を通じて改善していく。

もし入れ歯修理ができなかったら、どのような治療方針になりますでしょうか?

おそらく新しく入れ歯を作るしかないでしょう。

しかしその治療方針では上手くいかない可能性が大きいです。

だから入れ歯を修理しました。

なぜなら入れ歯を新しく作るには、他の歯、歯グキの状況が悪いからです。

そちらの治療から始めていたら、それだけで1か月はかかります。

それから入れ歯を作り始めるわけですが、やはりプラス1か月かかります。

2か月以上も入れ歯を使えないので歯がないまま過ごしていただかなければならないことになります。

治療に進展がないまま2か月も過ごす。

私が患者の立場だったとしても、そんな根気は保てません。

もう歯がないままでいいや…
ことになります。

そしてますます入れ歯が入らなくなってしまう。

そんな不幸な患者さんを増やしてしまいます。

それに引き換え完璧とは言い難いものの、とにかく入れ歯修理さえできれば、初回でもう入れ歯があって歯並びを回復できています。

後のことは患者さんは、ゆっくり構えていれば大丈夫。

患者さんも歯医者も落ち着いて治療していきましょう。

Gさんは仕事をしている方です。
入れ歯修理さえできれば時間の融通が効きます。

仕事の都合に応じて週1回~2週に1回くらいのゆったりペースで通っていただいて順調に経過しています。

【関連記事】→歯を抜くことについて「Q.歯が何本か抜けていますが、今のところそのまま放置してあります。前歯ではないので見た目は気になりません。食事も普通にできます。それでも抜けた部分をかぶせる、入れ歯を入れるなど治したほうがいいでしょうか?」