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・高額なシリコン入れ歯を捨て、保険治療で快適な毎日に。その驚きの理由とは?

杉並区西荻窪で入れ歯治療を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。

「自費治療の金属床入れ歯の方が調整しやすいんです」
「自費治療の金属床入れ歯の方が修理が簡単なんです」
「自費治療のノンクラスプ入れ歯の方が歯とよく合います」

歯医者からそう力説された60代女性のNさん。

そーかなー?
と素人ながら疑問を持ったと言います。

もっとも歯医者じゃないあなたでも、そのような「イヤな予感」「勘」「なんとなく見えるヘンなオーラ」みたいなものは大切にしてください。
だいたい当たります。

「でも言い返せないですからねえ…」

渋々ながら30万円で作製された自費治療の下の部分入れ歯。
フレームに金属を多用して、歯に引っかけて入れ歯を維持する金属バネの代わりにシリコンの構造物を引っかけるというもの。

完成したものの、ひだり下の歯グキが痛くてしょうがない。入れ歯を入れて食事ができません。

またシリコンの構造物と歯が合ってなくて食事中に入れ歯が簡単に外れて食べものが入れ歯と歯グキの間に挟まってしまう。
これも痛くてツラい。

しかし当の歯医者は
「この入れ歯はこれ以上は調整できません」
の一点張り。

・調整しやすい
・修理が簡単
・歯とよく合う

の話はどこへ行ってしまったの?
それで困ったNさんは当院へいらっしゃいました。

定期的な入れ歯調整メンテナンス。費用は保険治療3割負担の方で総額約2,000~3,000円

まずは痛みを取り除くことから。

ひだり下の歯グキには直径5ミリほどの大きな傷ができていました。
これは入れ歯の余計な角や出っ張りが歯グキを傷つけて起こす症状です。
治療法としては歯グキを傷つけている入れ歯の余計な角や出っ張りを削って歯グキに当たらないようにすること。

単純明快です。
しかし今回のNさんの入れ歯は安易にそのような治療を許さない事情がありました。

それはシリコンの構造物です。

歯グキに当たっていたのがシリコンの構造物だったのです。
下手に削ると構造物が壊れてしまいます。

だからノンクラスプ入れ歯はお勧めできないと当院では力説しています。
後から何かが起こった時に、その構造がいちいち足を引っ張るからです。

そのような説明をしながらシリコンの構造物を細心の注意を払って最低限度の削合をして、傷口の入れ歯が当たらないようにしました。

「あらっ、痛くない!」
Nさんは笑顔で答えてくださいました。

1週間後に様子をうかがうと痛くなくなったおかげで、ゆっくりながら食事できるようになったとのことです。

ゆっくりながら、は何故かというと入れ歯がユルいからです。
ユルい原因はシリコンの構造物です。
歯とシリコンの構造物が全く合っていません。

Nさんが舌を動かすと、それだけで入れ歯はパカッと外れてしまいます。
こればかりは、どうしようもありません。

ノンクラスプ入れ歯のシリコンの構造物の致命的な欠点です。
後から調整は一切できない。

金属バネならば、ゆるくなったらプライヤーでギュッと締めれば維持力は復活します。
ゆるい部分入れ歯のもっとも簡単な調整の一つです。
そして効果は絶大です。

しかしその効果絶大な治療を封じられてしまっては、どうしようもありません。

ノンクラスプ入れ歯、シリコン入れ歯、商品名もたくさんありますが、宣伝で言うほどは合わないものです。

結局は入れ歯のウラ、歯グキと接する面に歯科専用の入れ歯安定材ティッシュコンディショナーを貼ることにしました。
歯で維持することができないので、せめて歯グキと入れ歯を合わせようという策です。

根本的な解決にはならないものの、やらないよりはマシ。

ただティッシュコンディショナーを貼るのに、今度は金属床が足を引っ張ります。
ティッシュコンディショナーはプラスチックとは接着しますが金属やシリコンとはくっつかないからです。

以前にシリコンを全面に貼られた入れ歯にティッシュコンディショナーを貼るのを試したこともありますが、なんと一日も持たずにハガれてしまいました。

そのようなことを説明しつつ、少ないプラスチック面に接着して効果を発揮すればとの思いで貼ってみます。

やらないよりは、ずっと良い。
というNさんの感想。

とはいうものの相変わらず入れ歯は維持してくれません。
舌を動かすと入れ歯がフワッと浮いてしまいます。
ただ歯グキとの適合が良くなることで使い良くなることがあります。

そこで再び様子を見ていただくことに。

後日に様子をうかがうと
「まあ、外れやすさはあるんですけど」
と言いつつも、よく合って使いやすい、食事も快適にできるようになったとのこと。

入れ歯を新しく作る型取り、模型作製まで行なって備えていたのですが、結局は作らずに、修理した金属床入れ歯をそのまま使ってみることになりました。

保険治療で入れ歯の金属バネが折れたのを修理

仮に新しく作る入れ歯が金属床入れ歯やシリコン入れ歯などの自費治療の作品だったら、多くの歯科医院だったら有無を言わさず新しい入れ歯を作っていたはずです。
なぜなら作ることで大金が歯医者の手に入るからです。
逆に作らなかったら儲けはゼロ。

歯科治療とは医療です。
歯科でない医療の世界では「利ザヤが大きいから」というふざけた理由で手術する医師などは、ほぼいません。
「利ザヤが大きいから」というふざけた理由で高額な入れ歯を作ったりインプラント入れたりするのは歯科ならではの光景です。

修理した入れ歯がよく合っているならば無理やり新しく入れ歯を作るのはリスク、害でしかありません。
しかし私でも自費治療入れ歯で仮に百万円入るかゼロか、と言われたらリスク、害とわかっていても大金の誘惑に勝てる気がしません。

だって人間だもの。

でも仮に新しく入れ歯を作るとしても保険治療ならば総額1~2万円程度のものです。
お金に目がくらむことなく新しく作る、作らないの判断ができます。

それからずっと様子を見ていますが結局は半年に一度ほどの調整だけで過ごしています。

あとは残っている歯が大事です。

歯が抜けた時に、抜けた部分を入れ歯にプラスチック製人工歯を継ぎ足す「増歯修理」が保険治療のプラスチック製入れ歯なら簡単にできるのですが自費治療のシリコン入れ歯では一切できません。

そんな致命的な欠点もあるので半年に一度、歯石除去とブラッシング指導を続けています。
比較的若い方なので今すぐ歯が抜けることはありません。

歯が抜けた時に入れ歯を作り直すのは必要となりますが、定期的な歯周治療と入れ歯の経過観察で長期的に変化させないことを主な目的として治療を続けているところです。

もう一つNさんは気にしていることがありました。

それは上の部分入れ歯です。

ひだり上の前から1から3番目の前歯が、キレイなセラミックのかぶせものが装着されています。
いっぽう、みぎ上の1から3番目までは入れ歯です。

その入れ歯の前歯が明らかに3ミリほども短くて、笑ったときにひだり上は歯の先端2~3ミリほどがキレイに見えるのですが、みぎ上はくちびるがかぶってしまって歯が見えません。
ちょっとアンバランスな歯並びです。

このような症例こそ、保険治療で入れ歯修理の出番。

上の入れ歯は一般的な保険治療で作製されたプラスチック製です。
人工歯もプラスチック製なので修理は可能。

ところで前歯3本分の修理というとバカ正直に3本全部やりがちではあります。

しかし実は今回は一番前の歯、一本だけ修理しました。
セラミックでできたひだり上1番と入れ歯のみぎ上1番との高さの差が見た目の違和感の原因だからです。

だからまず入れ歯のみぎ上1番だけに歯科用プラスチックを盛り足して、ひだり上1番と歯の高さを合わせました。
横の2番3番は短いことは確かなのですが見た目の影響は少ないです。

もっとも見た目とは患者さんの主観ではあります。
患者さんの意見が大事なのは言うまでもないことです。

鏡で新しい歯並びを見たNさんは
「あっ、これなら良さそうですね」

と笑顔で答えてくださいました。

もっとも後から修理した歯は変色しやすかったり壊れやすかったりします。
だからいつまで使えるか長持ちするかと言われると、そうは言えません。
新しく上の入れ歯を作るときも同じようにひだり側と歯の高さを合わせた入れ歯を作れば良いとわかりました。

いきなり新しく作ろうとすると、どのような設計にすれば良いのか分からないまま作ることになります。
入れ歯を修理調整を繰り返すことで、その入れ歯のクセや患者さんの趣向を把握できます。
そうすることによって入れ歯を新しく作るときに、より成功の確率が上がります。

「痛いのを何とかしてほしい」
「入れ歯がゆるいのを何とかしてほしい」
「見た目の違和感を何とかしてほしい」

そんな困ったことへの対応は迅速である必要があります。

もっとも今後どうするか、という話については年月経って状況も変わってきたりします。
情報や治療経験が不足したまま突き進むのは失敗の元。
だからあまり性急な変化は避けて、じっくり取り組むことが必要です。

【関連記事】→保険?自費?入れ歯にかかるお金について「Q.高い素材の高額な入れ歯を勧められるのではないかと心配です。大丈夫でしょうか?」


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・「まるで別人」2年前の面影を失ったNさんを救った入れ歯治療とは オルタナティブブログ

杉並区、西荻窪で、保険の入れ歯治療を数多く手がける歯医者、いとう歯科医院の伊藤高史です。

オルタナティブブログに記事を載せました。
「まるで別人」2年前の面影を失ったNさんを救った入れ歯治療とは↓

https://blogs.itmedia.co.jp/ito_takafumi/2025/08/content_9.html

ホームページ掲載 すみ


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・その歯の痛み、気のせいじゃないかも。3年間続く歯の痛み、入れ歯の痛みの正体とは?

杉並区西荻窪で入れ歯治療を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。

「ずっと困ってまして」

入っていらしたのは50代女性のMさん。
3年ぶりの来院です。

困っているのはひだり下の歯の痛み。

3年前にも同じ痛みを訴えていらしたのですが当時も2回ほど診察しただけだったので他の治療を優先して、ひだり下の歯については様子を見ていただくことにしていました。

それから3年。
今も痛みは続いていると言います。

口の中を見ると、ひだり下は歯が抜かれていました。

アゴ骨などは通常の形です。

経過をお聞きすると、ひだり下の歯の痛みが治まらず某歯科大学病院で歯の根の治療を受けたものの痛みは治まらず、仕方なく抜歯されました。

しかし…それでも同じ部位の痛みは治まらなかったのです。

痛みの形から私は「非定型歯痛」と診断しました。

非定型歯痛(ひていけいしつう)とは、歯科的な原因がないにも関わらず、痛み止めもほとんど効かず長期間続く歯の痛みのことを指します。

脳の神経ネットワークの異常が原因と考えられており、歯や歯茎に異常がないにもかかわらず痛みが続くのが特徴です。

非定型歯痛の特徴を挙げていきます。

・原因不明なこと。
歯科治療や検査で異常が認められません。

ムシ歯や歯周病がないのに今回のMさんのように痛みだけが続きます。

・長期間、痛みが続く
今回のように数週間、数ヶ月、数年と長く続くことが多いです。自然治癒した例は私は見たことがありません。

・鈍い痛みです
じんじん、じわじわとした鈍痛として表現されることが多いです。Mさんも痛みのせいで不眠を訴えられていました。

・痛み止めの効きが悪いです
ロキソニンやカロナールなど痛み止めを飲んでもほとんど効果がないことが多いです。

・食事に支障がない
食事は普通にできます。

むしろ食事中は痛みが和らぐ人もいるくらいです。

似たような痛みを起こす病気で巨細胞性動脈炎というものがあります。
ただこちらは食事などでアゴを動かす咀嚼運動で痛みが出る顎跛行(がくはこう)という特徴的な症状が多く出るので鑑別診断に用います。

・痛みが移動する
痛む部位が移動することがあります。

たとえば、ひだり下を治療したら今度はみぎ下が、みぎ下を治療したら今度は入れ歯が痛くなった、などのことが起こります。
それで次々と歯を削る、抜くなどの施術がなされて、それにも関わらず痛い、という経過の患者さんをお見かけします。

・心身両面からの治療が必要です
心理的な要因も影響する可能性があるため、精神科や心療内科への連携が必要となる場合があります。

大学病院ではそのように治療している診療科があります。

非定型歯痛の原因

非定型歯痛の原因はまだ完全には解明されていません。

脳の神経ネットワークの異常が考えられています。

具体的にはセロトニン系の機能不全や、痛みの信号を伝える神経回路の異常などが原因として指摘されています。

一般的には、たとえばどこかに何らかの刺激があると神経を通して刺激が脳に伝えられて脳で「痛い」と認知されて、また神経を通って刺激を加えられた部位に「痛い」
という信号を送る。

これが大ざっぱではありますが痛みを起こす正常のシステムです。

ところが脳の機能が異常になってMさんの場合はひだり下に「痛い痛い痛い」
という信号だけを送ってしまっている状態。

正確とは言えないかもしれませんが私は患者さんに、そのように説明しています。

非定型歯痛の治療について

非定型歯痛の治療は造影剤を入れて脳の血流をMRI撮影するなど、原因の特定が難しいので、原因究明は置いといて症状に対する治療が中心となります。

・抗うつ薬
痛みの伝達を抑制する効果があるため、抗うつ薬が用いられることがあります。

・鎮痛薬
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンなどの鎮痛薬が用いられることもありますが効果は限定的です。

・心理療法
精神的なストレスが痛みを悪化させる可能性があるため、心理療法やカウンセリングも有効な場合があります。

とはいえ私が大学病院に紹介して、その後の経過をお聞きできた範囲では心理療法の話は出てきませんでした。

・ブロック注射
神経ブロック注射で痛みを和らげることもあります。

・その他
漢方薬や代替医療も試されることがあります。

非定型歯痛の診断方法について

非定型歯痛の診断は、歯科的な異常がないことを除外診断で確認し、症状や病歴などを総合的に判断します。

非定型歯痛に悩んでいる場合の対処法

・歯科医師に相談しましょう
痛み止めが効かない場合や、原因が不明な場合は、歯科医師に相談しましょう。

ゆるい入れ歯には保険治療で歯科専用の入れ歯安定剤ティッシュコンディショナーを貼ると安定します

ただ非定型歯痛は、それを知っていないと予測もつきません。

私が歯科学生だった30年前は、この病名はなかったと思います。
だから高齢で不勉強な先生などはこの病気の存在自体を知らなかったりします。

「伊藤クン、伊藤クン、チミが言ってるのは、気のせい気のせい(笑)」
と言い放たれたことがありました。

そういう先生もいらっしゃいます。
だから患者さんの立場でも、あまりに治まらない痛みに、このような病気の可能性があることは頭に入れておいて損はないです。

・心療内科や精神科を受診する
心理的な要因も影響している可能性がある場合は、心療内科や精神科を受診するのも良いでしょう。

ただ口腔分野にどれだけ知識と治療経験があるかはわかりません。

・ストレスを軽減する
ストレスは痛みを悪化させる可能性があるため、適度な休息やリラックス法を取り入れましょう。

もっとも、それで治るくらいなら、そもそも病気になりません。

非定型歯痛は、原因不明で長引くため、患者さんの苦痛も大きくなります。
原因が特定されなくても、症状をコントロールするための治療法もいくつかあります。
専門家と連携しながら、適切な治療を進めていきましょう。

当院では、大学病院でそのような症状の患者さんを専門に診療している診療科をご紹介しています。
ただその診療科は、医師や歯医者の紹介状がないと診察できないので、具体的な診療科の名前を挙げるのはここでは控えさせていただきます。

痛みの他にも
「咬み合わせがおかしくて気になって眠れない」
「入れ歯の違和感がなくならない」
「入れ歯が原因の歯グキの傷などないのに入れ歯痛い」

のような「違和感」を訴えられることがあります。
このような症状も「非定型歯痛」のバリエーションの一つです。
「咬合違和感症候群」などと呼ばれる症状です。

このような症状に対して絶対にやってはいけないことがあります。

それは「歯や入れ歯を削ること」。

削るとその場では「良くなりました」と患者さんは言ってくれます。
しかし次の日にはもう「今度はここが…」と次の症状を訴えられます。
削る、抜くではその症状は治りません。

当院では一年に数例は大学病院に紹介しています。

以前は私もこの「非定型歯痛」「咬合違和感症候群」がわからず、1年以上も入れ歯を削ったり盛ったりを繰り返したことがありました。

今でも診断に至るまで数回かかることがあります。
「非定型」というだけあって症状、状況が千差万別で難しいものです。

ただ今回のMさんについては口の中を見る前に予想をつけることができました。

今回のMさんについては「幻歯痛」という症状も非定型歯痛の一つのバリエーションかもしれません。
幻歯痛(げんしつう)とは、歯が存在しない部位や、神経が切断されている部位に痛みを感じる症状です。
抜歯後や神経治療後に、痛みを感じることがあることがあり、神経障害性疼痛の一つとして考えられています。

確定診断としては脳に造影剤を入れて脳の血流を見る、などのことをするそうですが、歯科の保険適用ではないため「高額な自費治療」にならざるを得ないこともあり、なかなかそこまでできないと聞きました。

だから症状や兆候から判断し、歯科では処方できない薬を医科と対診しながら服用して効果を確認する、という流れになるようです。それでも十数万円くらいはお支払いいただくことにはなります。
私もその非定型歯痛の治療の現場を見たことがないのですが、紹介した患者さんから話をお聞きして知るに至りました。

非定型歯痛、幻歯痛とともに当院でたまにお見かけするのが

「入れ歯に『違和感』がある」

との症状です。

入れ歯の咬み合わせに違和感がある
入れ歯の形に違和感がある
歯並びに違和感がある

原因が見当たらないにも関わらずそのような訴えをお持ちの方の場合、非定型歯痛や幻歯痛と同じ理由で症状が出ていると推測されます。

このような症状を「咬合違和感症候群」といいます。
これは病名ではなく患者さんの状態を示しているものです。
このような患者さんも紹介の対象となります。

紹介状をお送りすると大学病院ではとても丁寧に、時には2~3時間もかけて診察してくださいます。
無駄に削る、抜くなどせず早めに専門医に紹介することが最も大事なことなのです。

【関連記事】→歯・口腔に関する悩み「Q.歯ぐきが痛い。どうすれば良いですか?」


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・歯医者が「歯」と向き合うアレクサンドロス流戦略論 〜入れ歯修理に宿る不屈の精神〜

杉並区西荻窪で入れ歯治療を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。

アレクサンドロス3世、通称アレクサンドロス大王は、古代ギリシャのアルゲアス朝マケドニア王国のバシレウス(王)(在位:紀元前336年 – 紀元前323年)です。
その治世の多くをアジアや北アフリカにおける類を見ない戦役(東方遠征)に費やし、30歳までにギリシャからインド北西にまたがる大帝国を建設しました。
戦えば決して負けることがなく、確かな戦略で領域を急速に拡大し、異民族統治においては独創的な方針をとりました。

このアレキサンダー大王の小説で私はすっかりファンになってしまいました。
見習う点が数多くあり、少しでもその高みにたどり着きたいと診療の励みとしています。

アレクサンドロスの歴史は戦いの歴史ですが、ただやみくもに突っこむだけの猪武者ではありませんでした。

海のないマケドニアから来たアレクサンドロスは海での戦い方を知りません。
地中海の海港都市国家ティロスと初めての海戦では互いに新手の策を次々と繰り出すチェスの攻防のような戦役になりました。
ティロス軍くり出す小舟でのゲリラ戦法に対してアレクサンドロスは近隣諸国から召集した大型のガレー船二百隻でティロスの船を港に封鎖する。
七ヵ月かけて包囲網を築き上げてからアレクサンドロスは自ら上陸用舟艇を駆り精鋭部隊「ヒパスピスタイ」とともに市街に上陸し占領する。

いとう歯科でも、たとえば総入れ歯を作製するときは回数をかけてじっくりと臨みます。
これまで使っていた入れ歯から新しい入れ歯にするときに気を付けるのは「咬み合わせを変えない」ことです。

咬み合わせが変わると、どんな最新の検査機器を使っても最先端の素材を使っても、その新しい入れ歯は使えません。
新しく入れ歯を作る過程で、これまで使っていた入れ歯と新しい入れ歯の咬み合わせが同じであることを3回確認します。

一般的な入れ歯の作り方より余分に2回来院が多くなります。
早く入れ歯を作りたい患者さんの気持ちは分かるつもりですが、そこは我慢と忍耐が必要です。
でもそれから完成させると、後は微調整だけで使えるようになります。

じっくり取り組むことで後から良い結果がついてきます。

アレクサンドロスは13歳のときにギリシャ最強の重装歩兵と言われた都市国家スパルタにて軍事訓練を受けました。
通常は10年かかるところをスパルタ王レオニダス直々の指導、文字どおり「スパルタ教育」によってわずか3年で技術を身に付けました。
同時にギリシャの哲学者アリストテレスの弟子となり文学、哲学、政治、自然科学、医学まで広く学びました。

数多くの情報に対して偏見なく冷静に受け止める姿勢の確立と、自分の頭で考えて自分の意思で冷徹に判断して実行する能力を鍛えぬいたといいます。

アレクサンドロスは未知の事態に陥っても勉強して彼自身が進歩し、不利を有利に変えて主導権を握ってきました。
ティロスとの海戦では船での闘い方を勉強し、海港都市を堂々と海軍で破ります。

東征の仕上げのインドでは、現代の重戦車にあたる戦闘用に訓練された象が二百頭という前代未聞の大部隊を相手に勝利を修めました。

まず陽動作戦で象を孤立させます。
それから、これまでギリシャ軍伝統だった大型の盾と鎧に身を固め7メートルの長槍を集団で突きつけながらゆっくり前進し制圧するスタイルだったのを変えました。
盾と装備はより軽く武器は片手で扱いやすい槍に変えて軽装歩兵にして象軍団の上の兵を狙い撃ちしました。

アレクサンドロスはもちろん真っ先に突撃し標的はインド王ポロス唯一人。
傷ついて意識を失った王ポロスに気づいた象が前足を曲げて停止し勝負あり。

ペルシャやインド軍が用いた象や馬に曳かせる戦車は、歩兵をあっという間になぎ倒す当時の最新鋭の大型の武器です。
しかし大がかり故の欠点も多く、使い方を誤ると全く無力になってしまいます。

アレクサンドロスは遠征していたので大型の兵器を持っていけなかったという事情はありますがオーソドックスな歩兵を主戦力に、ティロスの海戦、ペルシャの会戦、攻城戦、ゲリラ戦、インドの渡河作戦を闘い抜きました。

壊れた入れ歯も保険治療で修理できます

歯科においてもインプラントや最新鋭の機器を駆使した大がかりな治療が流行っています。
ですがそのような治療法には象や戦車軍団のような欠点が必ずあります。

逆にどの歯科医院にもあるオーソドックスな機器での保険治療でも治せる範囲が数多くあります。

上手く咬んでいないインプラントに保険治療の義歯を装着して機能させることも、よくあります。
たとえば入れ歯はプラスチックだけで作製した方がプラチナなどの貴金属を用いるよりも、後でメンテナンスや修理が簡単で小回りが利きます。

応用自在な軽装歩兵のような使い勝手です。

いとう歯科医院では使う機器の数は、他の歯科医院に比べて少ない方だと思います。
それでも他の歯科医院で治らなかったのを上手く治めた症例が数多くありました。

ただ当院がアレクサンドロスと違うのは連戦連勝ばかりではないことです。
これからもアレクサンドロスに負けずに勉強し技術を進歩させるつもりです。

現在は炎で軟化した歯科用パラフィンワックスを咬んでもらう簡単な手技で正しい咬み合わせの位置を導く治療法を勉強中です。

大がかりな道具がなくてもパラフィンワックスなら祖父の時代から余るほどあります。
それを用いて新たな治療法を身に付けられるのは、これまで敵わなかった新たな敵に対して、こちらもレベルアップした新たな武器で立ち向かうようなワクワク感があります。

勇敢、豪快にして繊細で粘り強い、自己中心的だが占領した国での公平無私な政策で傭兵からも慕われる。

ペルシャ帝国を占領した後にマケドニア以外のギリシャ兵を帰国させようとしたがアレクサンドロスを敬愛していた兵は誰一人帰りませんでした。
逆に傭兵が次々と集まり、それを基にインドまでの遠征を加速させる。

イラン、イラク、アフガニスタンを含む中央アジア全部を支配下に置く偉業を成し遂げたのは現在に至るまでアレクサンドロスただ一人です。
地中海を制覇したローマ帝国も、世界中に植民地を作った近代イギリス、アメリカ、ソ連も中央アジアに侵攻したものの撤退しています。

そんなアレキサンダー大王と自分など比べるのもおこがましいのですが、これからもたゆまず勉強して少しでも共感、共通するところを見つけて近づきたい存在です。

入れ歯に歯科専用の入れ歯安定剤を貼る治療の費用は保険治療3割負担の方で総額約2,000~4,000円

完全無欠に見えるアレクサンドロスでしたが長い遠征に嫌気した兵が反乱を起こしたことがあります。
アレクサンドロスは兵たちの中に単身で乗り込みました。

遠征を借金して始めたアレクサンドロスは各国を制覇する中で逆に莫大な収益を挙げます。
とはいえアレクサンドロス自身は贅沢に興味を持たず、収益は全て兵や占領した街や市民に還元し、自身は兵たちと同じ食事、同じ寝所で過ごしました。

「最前線で闘った私の身体の、剣で槍で矢で投石で傷ついた跡。これが山を越え砂漠を踏破し川を渡ることで得た、わたしの勲章だ!
長年一緒に過ごしてきたのに、そんな自分の気持ちが分からないなら勝手にどこへとも去れ!」

胸の想いをぶちまけたアレクサンドロスに対して兵たちは心から反省し反乱は穏やかに終結しました。

駅前のおしゃれなファッションビルのテナントで、窓枠のサッシまでピカピカに磨きあげられイタリア製の家具で調度された最新鋭の歯科医院に比べると80年超えて使っている当院の内装は傷だらけです。

院内の脇でワックスやプラスチック、人工歯、金属ワイヤーの作業をしたり入れ歯を削ったりします。
するとどうしても汚れてくるのです。

とくに私の祖父は総入れ歯まで自分で作っていました。
作製に使う金属フラスコの封が不十分で、フタが天井まで弾け飛ぶことがあったと聞いたことがあります。
天井の凹みはそのせい。

父は金属のかぶせものを自分で作っていました。
金属をガスバーナーで溶かし遠心力で一気に注入する。
技工室の壁の黒い焦げはバーナーの炎が暴れたせい。

私はワックスを溶かして入れ歯の歯並びを自分で全て並べています。
溶かしたワックスをしばしば床にこぼすので赤い跡が床に点々と付いています。

歯科治療の最前線で80年闘ってきた傷だらけの院内は、いとう歯科医院の勲章、誇りなのです。

参考文献:・ギリシャ人の物語Ⅲ新しき力 塩野七生 新潮社(諸説あり)
・Wikipediaアレキサンドロス3世
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AD%E3%82%B93%E4%B8%96


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・「あれ、歯の色が違う…?」 入れ歯修理で起きた、まさかの”色問題”と、入れ歯修理できる歯医者ならではの解決策

杉並区、西荻窪で、保険の入れ歯治療を数多く手がける歯医者、いとう歯科医院の伊藤高史です。

オルタナティブブログに記事を載せました。
「あれ、歯の色が違う…?」 入れ歯修理で起きた、まさかの”色問題”と、入れ歯修理できる歯医者ならではの解決策↓

https://blogs.itmedia.co.jp/ito_takafumi/2025/08/post_198.html

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