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・入れ歯の咬み合わせを修理して、咬み切れるようにする治療を行ないました

西荻窪、保険の入れ歯治療を数多く手がける、いとう歯科医院、伊藤高史です。

オルタナティブブログに記事を載せました。
入れ歯の咬み合わせを修理して、咬み切れるようにする治療を行ないました↓

https://blogs.itmedia.co.jp/ito_takafumi/2025/01/post_189.html

ホームページ掲載 すみ


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・私たちは平和な内戦の中で、どう生き残ればいいか? その2の1

杉並区西荻窪で入れ歯治療を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。

「家族を守る」

そんな言葉を耳にします。
とくに震災や凶悪事件などの後に耳にする機会が増えるように感じます。

もっとも戦争しているような国なら現実味がありますが、日本は治安が良く技術が発達し食べ物など余っているくらいです。

それなのに震災や事件に関係ないみんなも必死に働いて家族を守らなければならないのは何故なのでしょうか。

20代の時に都心のオフィスビル内で勤務医をしました。

そこは同じ場所で開業したかった別の歯科医から、手続きの不備を告発されて長年争っていました。
結局は管轄省庁の指導が入り撤退することになりました。

そのオフィスビルも周りじゅうに歯科医院があって良い立地とは私は思えなかったのですが熾烈な生存競争が繰り広げられています。

その当時の院長も別に拡大経営の野心があるわけじゃなく家族を守れればいいだけなのに、このように互いに競争し疲れ果て攻撃的になっていました。

どうしてそんなに苦しむ必要があるのか。
なぜ疲れ果てるほど競争し必死に家族を守らなければならないのか。

それなりに厳しい状況の歯科の世界に身を置いて自分なりに導きだした答えは

「なぜなら日本はちっとも平和じゃないから」

というものでした。

保険治療で、痛い入れ歯も調整できます

インターネットで「西荻窪 スレ」と検索すると街BBSというものが出てきます。
西荻窪について語ろうというページです。

西荻窪に限らず他の街BBSでも同じ話題を目にします。
それは「歯医者多すぎ」というもの。

他に多すぎる職業はコンビニなどたくさんあります。
逆に稀少価値な職業など駅前にはないかも知れません。

こんなに沢山あってどうするの? 
そう言いたくなるほど様々な職業で同業者どうしが隣り合わせ、向かい合わせに林立して戦っています。

「イヤ俺は隣近所と仲良くやってるよ」

と言うあまのじゃくな歯科医もいるかも知れませんが、それは建前です。
本音では隣の歯科医院など目ざわりに決まっています。

インターネットのヤフーで検索すると私が開業している西荻窪駅前には50軒以上の歯科医院があります。
休日は快速電車が通過するほどのマイナーな駅前で50軒がしのぎを削っている。

同様にヤフー検索すると吉祥寺では100軒、銀座では250軒と出ます。
わずか半径1キロ圏内で250もの国が争っている…

調べてみると西暦250年ごろの三国志時代、戦乱の時代といわれた中国でさえ、いくらなんでもそこまでの群雄割拠ではありませんでした。

今の日本は三国志の英雄、曹操もビックリの戦国時代と言えます。

本物の血が流れないだけで「平和な内戦状態」なのです。

痛い入れ歯の調整の費用は保険治療3割負担の方で約1,000円~2,000円

同じように考えているのは私だけではありません。

「キングダムで学ぶ乱世のリーダーシップ」(長尾一洋著、集英社)
で著者は述べています。

「今現在の日本や世界はどうか。乱世です。」
「ほとんどの業界で国内マーケットが縮小し始め、業界内での過当競争、合従連衡が起こっています」

まさにその通り。
そんな歯科業界を平和に治めることなど中国を統一した秦の始皇帝でも不可能でしょう。

近所や自分の知人、勤務医時代の歯科医院も閉院した話をチラホラ聞きます。
決して珍しい話ではありません。

家族を守らないとあっという間につぶされる過酷な状況は、歯科だけでなく他の業種でも似たようなもの、あるいはもっと厳しいものです。

日本は企業数が多すぎるという具体的な数値があります。

世界最大の株式市場ニューヨーク證券
取引所の時価総額は20兆ドル、東京證券取引所は5兆ドル、4分の1の規模です。

それなのにその中に上場している企業の数はアメリカは2300社で日本は3700社。

上場しているほどの大きな会社ですら日本では激しい競争にさらされています。

医療も飲食も流通も服飾も学習塾も美容院も自動車も不動産も、多くの業種が泥沼の内戦状態にあります。

歯科医師が過剰なのはデータからも明らかです。

「昭和 40 年代から 50 年代にかけて歯科医師不足が叫ばれ、田中内閣の1県 1 医大構想とも相俟って一気に歯学部・歯科大学は4倍近くも新設されることとなった。

人口10万人に対して歯科医師数をおよそ50名にというのが新設の根拠となったのだが、50名を超えるのに10年を要することもなく結果的には過剰な新設計画となった。

昭和62年に当時の文部省が閣議決定を受けて削減計画を策定したが、その効果は少なく歯科医師数は増え続け今では人口10万対80名を超える状況となっている。」

(参考文献:歯科医師需給問題の経緯と今後への見解 平成 26 年 10 月
公益社団法人 日本歯科医師会https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000071236.pdf)

そして戦争はもっとも国の発展を妨げるものです。

三国志についてインターネットのウィキペディアで調べたところ、後漢末の桓帝の永寿3年(157年)には人口5648万でした。

それが100年ほど後の三国時代には818万人の半ば。

およそ7分の1になるまでの減少であるとありました。

日本も平和な内戦が各地で繰り広げられている間は人口減少が続くのかも知れません。

保険治療で入れ歯のヒビを修理

それではそんな生き馬の目を抜くような群雄割拠の中で生き残るには、どうすればいいのでしょうか。

私は身につけた技術で生き抜くつもりです。

20代の勤務医時代に、自分の方向性に悩んで歯科医をやめようと本気で考えた時期がありました。
そんな悩みを当時の院長先生に吐露したところ信じられないことを言われます。

それは…

「ふうん、そうなんだ。で、キミはいったい何ができるの?」。

やめようと考えている人間に○○ができる! と胸を張って言えることなどありません。
院長なりに元気づけてくれようとしていたらしいのですが、沈黙している私のあまりのマイナスぶりに

「何もできないんじゃなあ…」

とため息をついて院長先生も黙ってしまいました。

そもそも「キミは何ができるの?」などと面と向かって聞くこと自体、かなり失礼な話です。
ただ私のような目に合うことはあります。

それから1年後くらいのことです。
別の先生からまた同じ質問をされました。

当時の勤め先の先輩が、あまりに悩んで前へ進めないでいる私を見かねて先輩の師匠格の先生に会わせてくださったときのことです。
とにかくできないなりに何か身につけようと歯科の本を読んでいた時期でした。

とはいえインプラントとか外科手術とかは本だけで身につけることはできません。
だから患者さんへの歯みがき指導の本をたくさん読み、日々の診療でも歯みがき指導を熱心に行なっていました。

何も言えずうつむいていた時代からは一歩だけ進歩したつもりです。

しかし師匠先生はそっぽを向いたまま答えました。

「ふーん…」

そして続けます。

「それなら歯科衛生士に頼んだほうがいいよなあ」

*長文になってしまったので次に続きます。
【関連記事】→いとう歯科医院の歴史


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・揺れている歯を抜いてプラスチック製の人工歯を継ぎ足す増歯修理をして総入れ歯になったら、噛む力が上がった症例

杉並区西荻窪で、入れ歯治療を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。

「痛くて噛めないのよ」

そうおっしゃるのは80代女性のRさん。
上アゴは歯が一本もない総入れ歯、下アゴは歯が2本残して後は入れ歯です。

歯が折れたり抜けたりしては入れ歯にプラスチックの人工歯を継ぎ足す増歯修理を何十年にも渡って繰り返してきました。

歯周治療などで歯を保てないことに対する批判等はあるのでしょうが、そのようなやむを得ない状況の患者さんはいます。

今回はその最後の2本が揺れていて口を閉じるだけで痛みを訴えていました。
そこでまた抜歯して増歯修理をすることに。

もう慣れっこのRさんは
「あ、いつものね~」
と治療方針の説明も簡単ですし患者さんの受け入れもスムーズです。

もっとも歯が一本でも「ある」のと一本も「ない」のとでは入れ歯の使い勝手に天と地の差があります。
それまでは何事もなかった方が急に入れ歯のあちこちが痛くなることも。
増歯修理してからが本当の勝負です。

とはいえRさんは幸運なことに総入れ歯になっても特別に大変なことにはなりませんでした。

「かえってよく噛めるような気がするわ」
とのRさんの感想。

良い感想をくださるのは私たち歯科医師もうれしいですし励みになります。

従来は
「あ、良かったですね」
で終わりだったのが今は違います。

具体的にどれほど噛めるようになったかを治療前と後で、数値で比較できるようになっているのです。

保険治療で入れ歯と口の機能検査できます。隠れた不調がわかります

このようなことができるようになったのはここ5年ほどの話です。

「歯医者も削る、詰める、入れ歯ばっかりじゃダメですよ。
検査して口の機能を数値化してください。
その数値を元に科学的根拠に基づいた口の機能のリハビリテーションやトレーニングをして口の健康に寄与しましょう」

大ざっぱに言うと、そのような理由から「口腔機能検査」で割り出した数値を元に「口腔機能管理」を行なう治療が保険で導入されました。

当院でも積極的に行なっています。

Rさんも歯がある時代に検査をしていました。
特殊な検査用のグミキャンディを噛み砕くことで、入れ歯でどのくらい噛めるのかを数値で表す「咀嚼能力検査」です。

数値が高いほど咀嚼する力が強くて100未満だと口の機能が不十分な「口腔機能低下症」と診断されます。

歯がある時代に行なった検査ではグミキャンディを噛むのも辛そうで明らかに揺れている歯を避けて噛んでいました。

算出された数値も30台。
明らかに口の機能が低下している数値です。

口の機能が低下すると十分に食事できず身体が弱る原因となります。

しかし残っている歯が0の総入れ歯になってからの検査では
「これはよく噛み砕けるわ」
と言う余裕もあるくらいバリバリと咀嚼されて、算出された数値も100を超えていました。

今回行なったRさんの入れ歯修理して口腔機能管理を行なう治療は、保険治療1割負担で総額約2,000円でした(症状によって金額は異なります)。

「保険治療で入れ歯と口の機能検査できます。隠れた不調がわかります」

増歯修理を繰り返した入れ歯は壊れやすかったり不安定だったりするので、慎重に調整したり新しく作ることも考慮します。

とはいえスムーズに総入れ歯に移行できたRさんならば今後の治療もさほど苦労することはないでしょう。

定期的な検査と調整、入れ歯をより良く使うための口と舌の機能を保つリハビリテーションをご案内して、今回は治療終了となりました。

「口腔機能低下症、明日の臨床から取り組むためのヒント」

高齢社会といわれるように日本は社会の高齢化が進んでいます。

食事も会話も支障なくでき健康で長生きするために口腔機能の維持・向上の重要性は年々高まっています。

医科との連携を図ることを歯科保険治療においても求められるようになりました。

その口腔機能の維持・向上、医科との連携のカギを握るのが口腔機能検査、検査に基づく病名としての口腔機能低下症、検査、病態に対する解決策、治療として口腔機能管理です。

しかしこの口腔機能低下症に取り組んでいる歯科医院の数はまだまだ多くなく、導入に難しさを感じている先生が多いようです。

口腔機能低下症の現在

口腔機能低下症の検査と管理が保険収載されて数年が経過しましたが、十分に浸透してきたかというと、まだまだと言わざるを得ない状況ではないでしょうか。

ハードルが高く思えて取り組めてはおらず、きっかけをつかめない歯科医師は多いようです。

口腔機能低下症についてどのように捉え、臨床に取り入れていけばいいのでしようか。

「口腔機能低下症の概要について」

従来の歯科における口腔機能については「健康な状態」と「障害のある状態」の二極化した捉え方しかありませんでした。

たとえば
唾液の分泌が悪い→口腔乾燥、
発音に問題がある→発音障害や構音障害、
食べられない→咀嚼障害

といったように口腔機能を構成するものをひとつずつ別々に診断していました。

それぞれについて治療をしていたわけです。

しかしそれぞれの事は独立して別個に病気を引き起こしているわけではありません。

また今のところガマンすれば何とかなる、みたいなことでも何もせず時間が経過すると病気につながる。
そんなことも起こります。

そこで、話す、食べるといった患者さんの口腔機能を総合的に評価し、健康と障害の中間的なところに位置するものとして、口腔機能低下症という概念が誕生しました。

2016年に日本老年歯科医学会がその定義と診断基準を作成し、2018年4月に口腔機能低下症の検査と管理が保険収載されました。

7項目の検査を行い、そのうち3つ以上が基準を下回ると、口腔機能が低下しているとみなし、口腔機能低下症と診断します。

口腔機能低下症の舌圧検査について

口腔機能低下症は、高齢者を中心に見られる口腔内の機能が低下する状態です。

とくに嚥下(飲み込み)や咀嚼(かみ砕くこと)の能力が落ちることで生活の質(QOL)や健康に大きな影響を及ぼします。

その中でも舌圧検査は口腔機能の評価において重要な役割を果たします。

舌圧検査とは何か?

舌圧検査は、舌の筋力や運動機能を評価するために行なわれます。

具体的には、舌が上顎や口蓋に押しつける力(舌圧)を測定します。

通常、舌圧は舌圧計という専用の機器を使って測定されます。
この装置は、舌を上アゴに押し付けて舌圧計の小さな風船を押すことによって圧力を感知し、その数値を表示するものです。

日本では舌圧の基準値として、成人男性では約30kPa(キロパスカル)、成人女性では約25kPaが一般的とされています。

なぜ舌圧検査が重要なのか?

嚥下障害の予防と評価:
舌圧が低下すると、食物をうまく嚥下できず、誤嚥(食べ物や唾液が気管に入ること)や肺炎のリスクが高まります。

早期に舌圧の低下を検知することで、適切なリハビリテーションや食事指導を行うことが可能になります。

栄養状態の改善:
適切な舌圧は、食事を楽しむだけでなく、十分な栄養を摂取するために不可欠です。

舌圧が低下すると、食事が苦痛になり、結果として栄養不良に陥りやすくなります。

生活の質(QOL)の向上:
口腔機能の低下は、話す、味わう、笑うといった日常生活の基本的な行動に影響を与えます。
舌圧検査を通じて口腔機能を評価し、改善策を講じることは、QOLの向上に直結します。

舌圧検査の実施方法

準備:まず、被験者は自然な姿勢で座り、口腔内が乾燥していないことを確認します。
測定:舌圧計の小さな風船のようなセンサーを口の中に置いて患者さんに舌を上げるよう指示します。

通常、最大力で3回測定し、その平均値を採用します。

結果の解釈:得られた数値をもとに、口腔機能の状態や介入の必要性を判断します。

結論

口腔機能低下症の管理において、舌圧検査は非常に有効な手段です。

早期発見と適切な介入によって多くの高齢者の生活を豊かにし健康寿命を延ばすことが期待できます。

しかし舌圧だけでは口腔機能の全てを評価することはできないため、他の評価方法と組み合わせることが重要です。

参考文献:How to 口腔機能低下症
明日の臨床から取り組むためのヒント
Vol. 080
https://www.gc.dental

【関連記事】→歯を抜くことについて「Q.歯が抜けた部分がありますが入れ歯を使っていません。そのままで大丈夫でしょうか?」


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・部分入れ歯の金属バネ(クラスプ)が2つだと入れ歯がゆるいので、クラスプ3つの入れ歯に作り直した症例

杉並区西荻窪で、入れ歯治療を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。

「部分入れ歯がゆるくなりまして」

半年ごとくらいに定期的にいらっしゃるのは50代女性のTさんです。

4年前に前歯5本分の部分入れ歯を作ってから調子よく使っていました。

ただ定期的にゆるくなって、残っている奥歯に入れ歯を引っかけて入れ歯を口の中に維持する金属バネ(クラスプ)を調整したり、歯科専用の入れ歯安定剤のような材料ティッシュコンディショナーを貼ったりしていました。

もちろん本当は調整しなくても使える方が良いに決まっているのですが、Tさんの入れ歯に関しては、そうもいかない事情がありました。
その理由とは、クラスプの数です。

左右に1個ずつの2つのクラスプで入れ歯を維持しています。
しかしクラスプ2つの入れ歯には欠点があります。

それは左右のクラスプを結んだ線を中心に入れ歯が回転してしまうことです。
これは単純な物理の法則です。

クラスプ2つを線で結んだ写真

だから不安定になって調整が必要になるのは仕方ないことです。

そんな部分入れ歯を安定させる方法があります。

それはクラスプを3つ以上にすること。

入れ歯の回転を防げるので格段に安定します。

それではなぜ4年前に不安定と分かっていながら、そのような設計にしたのか、なのですが…

Tさんは当時、入れ歯を作るのが初めてだったからです。

入れ歯のクラスプを増やすと入れ歯は当然ですが大きくなります。

入れ歯治療における最大の失敗。
それは「違和感すごくて入れ歯を入れておけない」こと。

クラスプ3つにして安定するのは良いものの入れ歯を入れるのが当時初めてのTさんは入れ歯をそもそも使えるのか、という問題がありました。

Tさんだけにそのような問題があるわけではありません。

入れ歯を初めて入れる患者さんはみんな

「そもそも入れられないかも知れない」

という懸念は常に頭に入れておかなくてはなりません。

そのような理由でクラスプ2つにして入れ歯の大きさを最小限度に設計した次第です。

結局は違和感については数日で慣れて何事もなく使えるようになって今に至ります。

そこで今回の治療方針としては、調整修理は繰り返してきたので、もう限界です。
入れ歯を新しく作ることにしました。

入れ歯の設計について4年前との違いは明確です。

クラスプ2つ→3つにすることです。

すでに入れ歯には慣れています。
その程度なら大きくしても大丈夫。

4回ほどの来院で完成した入れ歯を入れたTさんは

「あっ、今までよりもずっと安定感ありますね~」

違いはすぐにわかります。

ずっと安定した入れ歯は定期的に様子を見るだけで調整はほとんどせずに使えるようになりました。

今回行なったTさんの入れ歯を新しく作る治療は、保険治療3割負担で総額約1万円でした(治療費は症状により個人差があります)。

理想的な入れ歯の設計というものはあります。
もちろんクラスプ2つより3つの方が安定することは物理の法則です。

参考文献:「部分床義歯の設計と咬合」丹羽克味著、学建書院より

以下引用

部分入れ歯に求められる要件

1.咀嚼機能が、最大限に回復されること

咀嚼機能の回復を評価するには正しい咬合の基準と、それを基にした咀嚼機能の評価法が確立している必要があります。

それらが未解決な現状では、この評価は、患者さんの主観に頼るしかないのです。

もし患者さんから「痛みが取れない」「噛みにくい」「歯がぐらついてきた」などという訴えがあれば、その主な原因は義歯設計の誤りであることが多いのです。

2.義歯の咬合が長期間にわたって安定していること

この項はとくに部分床義歯にとって重要な要件になります。
義歯を装着したあと、残存歯が抜去に至るような疾患に罹患せず、また、義歯床や支台装置に破損がなく、義歯が何年安定して使用できるか、つまり、「義歯の咬合が何年安定しているか」ということです。
装着直後は、どんなに快適に咀嚼ができた義歯であっても、その後、数年もしないうちに支台紙が抜去になる、また支台装置が破損に至ることがあります。

これはまさに義歯設計の誤りが原因です。
さらに、患者さんが定期検診日を忘れてしばらく来院しなくても、義歯や残存歯に障害が発生しないことが大切な要件です。
この2つは部分床義歯の要件として、最も重要なものです。

部分床義歯の要件として、上記以外に、次のことが挙げられます。
・審美性に優れていること、
・快適であること
しかし部分床義歯の設計において大切なことは、この優先順位を混同しないことです。
優先順位を無視して、審美性を第一にした義歯などは近い将来必ずトラブルに見舞われることになります。
部分床義歯の要件に関して、著者は、次のように言うことができます。
ある欠損部に対して立てられた義歯設計をみれば、義歯を作製し使用してみなくても、要件をみたす義歯であるかどうかがわかります。

引用ここまで

医療のかかり方 治療法選択の主役 歯科医師から患者へ

しかしそもそも使えるか使えないかは結局は物理学だけでは分かりません。

やはり患者さんの主観も大事な一因だからです。

このような医療ならではの難しさと取り組む姿勢について良い新聞記事を目にしました。

こちらにシェアさせていただきます。

以下引用
____________

科学の観点
いちばん重要なのは、サイエンスの観点だと思います。

医療行為に絶対的な正解はないということです。手術がいいと判断しても、やって失敗することがあります。多くの人に効く薬でも、その人には効かないばかりか、重い副作用が出ることもあります。うまくいくかどうかは不確実なのです。

人体はわからないことが多く、現代医学も正しいとは限りません。そして患者には個人差があります。持って生まれた遺伝子や体質も、その時の身体や精神の状態も、周囲の環境も、生活のしかたも、それぞれに違います。それらの情報から、なるべく良い結果になりそうな方法を選ぶとしても、すべての要素・条件を調べ上げて結果を完璧に予測することは、原理的に不可能です(数学的には、カオスと呼ばれます)。

つまり、医療の結果予測は、あくまでも確率的(統計的)なものであり、どの方法がよいかについては、ほとんどの場合、選択の余地があるということです。
__________
引用ここまで

参考文献:医療のかかり方(14)治療法選択の主役 医師から患者へ | ヨミドクター(読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/yomidr/article/20140711-OYTEW54535/

部分入れ歯のクラスプについて

部分入れ歯のクラスプとは、入れ歯を固定するために使用される金属や樹脂製のフックです。
おもに残っている歯に引っかけて入れ歯が外れないように維持します。

クラスプには見た目の自然さを重視した樹脂製のものや、強度と耐久性に優れた金属製のものがあります。
金属製のクラスプは金属の色が口の中で目だってしまう欠点があります。

最近では審美性に考慮した薄くて目立ちにくいデザインや素材も開発されています。

もっとも保険治療で選択できるのは金属バネがほとんどです。
他の素材は選択肢が少ないです。

ここに書き出すと長くなってしまうので割愛させていただきますが
それは様々な欠点があるからです。

またクラスプの形状や位置によって咀嚼効率や装着感が変わります。
入れ歯の設計については歯科医師とよく相談することが重要です。

【関連記事】→入れ歯がゆるい「Q.入れ歯を新しく作ってもゆるいです。なんとかなりますか?」


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・口腔機能の検査をしたところ口腔機能低下症とわかったので、口腔機能管理とご指導を行なっている症例

杉並区西荻窪で入れ歯治療を数多く手がける
いとう歯科医院の伊藤高史です。

「そういえば、昔からよく食べるとムセるんですよ」

ハタと思い出したようにおっしゃるのは50代男性のKさん。
口の中に関しては上下とも大きめの部分入れ歯を使っています。

残っている歯も不安定な状況です。
揺れている歯もありムシ歯のためにかぶせものを作製した所も何本もあります。
いつ歯が抜けたり折れたりするか警戒しているところです。

もっともそのような事態に備えて、あらかじめ入れ歯を作っておいたので歯を失ったら、抜けた部分は入れ歯にプラスチック製の人工歯を継ぎ足す増歯修理ができます。

そういった意味では大丈夫なものの、歯を失う速度を少しでも遅らせたい。

比較的若くて体格はいいし全身的な病気も一切ありません。
なぜ口の中だけ好ましくない状況になっているのでしょうか。

ムシ歯になったら削って詰める、かぶせる。
歯が抜けたら入れ歯に継ぎ足す。

もちろんこれらは歯科医師の役割りです。
しかし口の中の悪化に対して後手後手にまわっている印象は否めません。

たとえば全身を診る内科などは病気にならないうちに血液検査やレントゲンなどで数値や画像を通じて症状が具体的に悪化して現れる前に予防と早期治療に努めています。
私も毎年の区民健診と2年ごとの胃と大腸の内視鏡検査を受けています。

歯科でも同じようなことができないものでしょうか。

実は最近できるようになりました。
歯科でも内科のように患者さんの状態をより深く調べて治療に導く方法があります。
それが口腔機能検査です。

保険治療で、痛い入れ歯も調整できます

こんな症状はありませんか?

以前に比べて…

● 食べ物が口に残るようになった
● 硬いものが食べにくくなった
● 食事の時間が長くなった
● 食事の時にむせるようになった
● 薬を飲み込みにくくなった
● 口の中が乾くようになった
● 食べこぼしをするようになった
● 滑舌が悪くなった
● 口の中、とくに舌が褐色~黒く汚れている

「口腔機能低下」の状態とは加齢によって口腔内の「感覚」「咀嚼」「嚥下」「唾液分泌」等の機能が少しずつ低下してくる症状です。
「口腔機能低下」を早いうちに自覚することで生涯にわたり、食べることを楽しみ、会話に花を咲かせ、笑顔が続く健康長寿を支えます。

「口腔機能低下症」は、患者さんの「口腔機能低下」に「専門的な介入をするキーワード」です。
地域のかかりつけ歯科医師として、「口腔機能低下症」を診断しましょう。

「口腔機能低下症」を診断しましょう

歯科医師が「口腔機能低下症」を知り口腔衛生管理および口腔機能管理に積極的に介入することで、高齢者の豊かな食生活と健康維持を実現していきます。

その口腔機能を知るために行なうのが口腔機能検査です。

口腔乾燥による症状
 口の中が乾くのが気になる

口腔衛生状態不良(口腔不潔)による症状
 口の中、とくに舌が汚れている

咀嚼機能低下による症状
 硬いものが食べにくい

嚥下機能低下、舌口唇運動機能低下、低舌圧による症状
 滑舌が悪くなった
 食べこぼすようになった
 食べ物が口に残る
 薬を飲み込みにくい
 食事の時にむせる

咬合力低下
 口の中に残っている歯の本数が少ない

このような症状に心当たりがある方に行なうのが口腔機能検査です。

ゆるい入れ歯には保険治療で歯科専用の入れ歯安定剤を貼りましょう

口腔機能検査は以下のように行ないます。

口腔機能低下症は7つの評価項目[①口腔衛生状態不良(口腔不潔)、②口腔乾燥、③咬合力低下、④舌口唇運動機能低下、⑤低舌圧、⑥咀嚼機能低下、⑦嚥下機能低下]を用いて診断します。
7項目中3項目以上で低下が認められた場合に口腔機能低下症と診断されます。
7つの下位項目と各項目から読み取れる口腔機能の問題点について解説します。

1.口腔衛生状態不良(口腔不潔)
口腔の衛生状態は舌苔の付着程度を評価します。
舌表面を9分割し、それぞれのエリアに対して舌苔の付着程度を3段階(スコア012)で評価。
合計スコアが9点以上(TCIが50%以上)で口腔不潔と評価します。

2.口腔乾燥
口腔水分計(ムーカス®)を用いて評価します。
舌尖から10mm後方の舌背中央部における口腔粘膜湿潤度を計測。
測定器の先端に設置してあるセンサー部分を舌背部に押し当てることで測定します。
27.0未満を口腔乾燥とします。

3.咬合力低下
残存歯数を用いる方法は20歯未満の場合に咬合力低下と判定します。
咬合力の低下は咀嚼能力と相関が高く、残存歯数や咬合支持と関連が強いが筋力の低下にも影響を受けます。

4.舌口唇運動機能低下
オーラルディアドコキネシスの計測で検査を行ないます。
「パ」「タ」「カ」の音を5秒間計測して1秒間当たりの回数を算出します。
「パ」は口唇の動き「タ」は舌前方の動き「カ」は舌後方の動きを評価します。
いずれか1つでも6回/秒未満の場合に舌口唇運動機能低下と判定します。
舌口唇運動機能低下は口腔周囲の運動速度や巧緻性が低下した状態の指標となり、会話や食事に影響し生活機能やQOLの低下にも影響を及ぼす可能性があります。

5.低舌圧
舌圧は、JMS舌圧測定器(株式会社ジェイ・エム・エス)を用いて測定することが可能です。

JMS舌圧測定器は、舌圧プローブ、デジタル舌圧計、連結チューブから構成されています。
測定時は、硬質リング部を上下顎前歯で軽く挟むようにして、唇を閉じ、プローブ先端部のバルーンを舌と口蓋で押しつぶします。
日常生活において義歯を使用している場合は、義歯を装着した状態で測定。
最大舌圧が30kPa未満で低舌圧と判定する。

低舌圧の原因は、脳血管障害やパーキンソン病などの疾患、舌がん術後などの直接的な原因と廃用症候群、低栄養等の相互作用的な影響が考えられます。
舌は口腔周囲器官と協調して咀嚼、嚥下、構音に関わる非常に重要な器官です。
また、舌は筋肉の塊であるため、低舌圧は舌の筋力低下を意味します。
舌圧が低下して20kPa未満となると摂食嚥下障害に相当すると考えられます。
舌圧と食事形態の関係について調査した研究では、舌圧が30kPa以上ある人は全員常食を摂取しているのに対して、20kPa未満の半数以上が調整食を摂取していたことを報告していました。
よって、常食を摂取するためにはある一定以上の舌圧が必要であるといえます。

6.咀嚼機能低下
咀嚼機能低下の検査は、咀嚼能力検査(グルコース含有グミゼリー、グルコセンサーGS-ⅡN、GC-Ⅱセンサーチップ、株式会社ジーシー)で計測します。
グミゼリーを咀嚼した後に水を含嗽(がんそう)して吐き出させて、吐出水中に溶出したグルコース濃度を測定。
グルコース濃度が100mg/dL未満を咀嚼機能低下と判定します。

7.嚥下機能低下
EAT-10は信頼性と妥当性が検証された摂食嚥下障害のスクリーニングテストです。
方法は、嚥下スクリーニング質問用紙を用います。

10項目の質問で構成され、それぞれ5段階で回答し、合計点が3点以上であれば問題ありと判定し、専門医療機関での精査が必要となります。
EAT-10は主観的な評価ですが、個々の質問項目に注目すると患者のQOLを評価する項目があるため、介入効果の判定にも有効とされます。

聖隷式嚥下質問用紙を用いた場合は、より頻繁に起こる、または、重症を疑わせる解答項目(Aの項目)が1つ以上の場合を嚥下機能低下と判定します。

総入れ歯を作る費用は保険治療3割負担の方で総額約2万円

今回のKさんは咬合力低下、低舌圧、嚥下機能低下がありました。
これらは検査により具体的な数値として表せます。

とくに嚥下機能が低下していました。
嚥下機能検査とは、飲み込む機能についてアンケート調査のようの書式に三択形式で答えていただくものです。

その検査の項目を見て

「そういえば」

とKさんは食事中にムセることを思い出した次第です。

そのような事で今回の治療としては飲み込む機能を担う舌や口の周りの筋肉を鍛えて強くするリハビリテーション、口腔機能訓練を行ないました。

鍛えるというと筋トレみたいな厳しいイメージですが、そんなことはありません。
食事前後に舌やクチビルを1~2分動かす程度の簡単なものです。
それでも動かさないよりはずっと効果があります。

定期的な口腔機能訓練と歯周治療、入れ歯の手入れの甲斐があって、それから2年近く経って歯を抜いたりすることなく順調に経過しています。

今回行なったKさんの口腔機能管理する治療の費用は、1回の治療につき保険適用3割負担で約2,000円でした(治療費は症状により個人差があります)。

参考文献:日本老年歯科医学会 https://www.gerodontology.jp/
公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp/net/topics/tokushu/orarufureiruyobo-taberuchikara-ikiruchikara/orarufureiru-kokukinoteikasho-shindan.html

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